文献詳細
文献概要
研究
くも膜下出血の急性期ストレスが心機能と血液容量に及ぼす影響―連続心拍出量測定装置(PiCCO)を用いた検討
著者: 武藤達士1 数又研1 安喰稔1 横山由佳1 櫻井寿郎1 浅岡克行1 牛越聡1 寺坂俊介1
所属機関: 1手稲渓仁会病院脳神経外科
ページ範囲:P.163 - P.168
文献購入ページに移動くも膜下出血による侵襲は,時に交感神経系の過緊張状態(catecholamine surge)を誘発する.特に重症例では,神経原性肺水腫やたこつぼ型心筋症をはじめとした循環呼吸動態の顕著な変動を来す症例1,4,8)もあり,十分な全身管理が難しく,一般に予後不良とされている.しかしながら,くも膜下出血のストレス反応と血行動態の関連性については不明な点が多く残されており,いまだ定まった管理法が確立されているとは言い難い.特に,脳血管攣縮のような脳循環に顕著な変動を来す時期における不完全な病態の把握は,患者の予後を左右する致命傷ともなり得る.
最近われわれの施設では,くも膜下出血患者を対象として,術直後から脳血管攣縮期にかけて,肺経由動脈熱希釈法(single indicator transpulmonary thermodilution)による連続心拍出量モニタリング装置(PiCCO TM plus;Pulsion Medical Systems社製)を用いた循環管理法を導入している1).これまで循環血液量の評価として,観血的動脈圧および圧波形,中心静脈圧(central venous pressure;CVP),肺動脈楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure;PCWP)などの圧指標や胸部X線写真などの画像所見,呼吸状態,水分出納表,体重,血圧などを用いて評価してきた.しかし容量-圧関係は必ずしも直線的ではないため,正確な容量評価には圧変化よりは直接容量の変化を捉えるほうが好ましいと考えられる.PiCCOは,冷却水を用いた肺経由熱希釈法(transpulmonary thermodilution)で心拍出量を測定し,これを基に動脈圧波形解析法(arterial pulse contour analysis)から心拍ごとの拍出量を連続測定できる機能を有する.さらに,熱希釈法のみから心拍出量のみならず,血管内容量に関する様々なパラメータを測定することが可能であり2,9),くも膜下出血の脳血管攣縮期における心機能および水分管理に適した装置といえる.今回,重症くも膜下出血患者を中心として,同モニタリング装置により得られた心機能・血液容量ならびにストレスに関する血液データに基づき,くも膜下出血による急性期ストレスについて解析を行ったので,その中間結果を報告する.
参考文献
掲載誌情報