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文献概要
コラム:医事法の扉
第11回 「診療録記載義務」
著者: 福永篤志1 河瀬斌1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.289 - P.289
文献購入ページに移動 「カルテはきちんと書くように」ということは,医師であれば誰でも必ず一度は注意されたことがあるのではないでしょうか.カルテが診療上,大変重要であることはいうまでもありませんが,法律上も,医師法24条1項に,「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない.」と規定され,「診療録記載義務」が明文化されています(医師法施行規則23条では,診療録の記載事項として,一 診療を受けた者の住所,氏名,性別および年齢,二 病名及び主要症状,三 治療方法(処方および処置),四 診療の年月日が規定されています).しかも,この義務に違反した場合には,「50万円以下の罰金」(33条の2)という罰則まで科せられてしまいます.
しかしながら,われわれ脳神経外科医は,忙しい日々の臨床において,診療内容のすべてをカルテに記録することは実際には不可能です.たしかに24条1項の条文をよく読むと,「診療に関する事項」と書いてありますが,「診療に関するす・べ・て・の・事項」とは書いてありません.このように,法は抽象的に規定することによって,医師に注意を喚起し法律上の義務を履行させようとするのが「ねらい」なのです.
しかしながら,われわれ脳神経外科医は,忙しい日々の臨床において,診療内容のすべてをカルテに記録することは実際には不可能です.たしかに24条1項の条文をよく読むと,「診療に関する事項」と書いてありますが,「診療に関するす・べ・て・の・事項」とは書いてありません.このように,法は抽象的に規定することによって,医師に注意を喚起し法律上の義務を履行させようとするのが「ねらい」なのです.
参考文献
1)前田順司:医療裁判における診療録の役割.外科67:295-301, 2005
2)判時1848号119頁(甲府地裁平成16年1月20日判決)
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