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編集後記 フリーアクセス
著者: 河瀬斌
所属機関:
ページ範囲:P.322 - P.322
文献購入ページに移動それから25年経った今,MRIは日本の病院にくまなく導入された.しかし驚くことに今でもMRIを利用した新しい技術が続々と登場しており,本号の中にも4つの画像に関する論文が掲載されている.その1つは森谷聡男先生の拡散強調画像である.この画像は細胞性浮腫の有無を鑑別することができるため,脳梗塞の急性期に他に先がけて異常が検出される方法として注目されている.一方3.0ステラの高磁場MRIが色々な施設に導入されつつあり,増々精細な画像を提供している.T2を利用したMRI立体画像や脳槽内視鏡画像は佐藤 透先生や大石 誠先生の論文に紹介されているが,その精度は脳神経や細い血管をも顕微鏡手術で実際に観察した光景と同じく抽出できることは驚嘆に値する.また神経の走行を表現可能なtractographyなど解剖学的な画像のみならず,脳の活動部位を知ることのできるfMRI(機能画像)は高次脳機能の活動部位を知る臨床研究の場を提供している.NMRはMRを画像化する以前の代謝を知る研究機器であったが,それを利用して行うMRIスペクトロスコピーは代謝物質の相違から脳腫瘍の悪性度,他疾患との鑑別など画像を越えた物質の性格にまで診断が及んでいる.近い将来には「脳の立体機能画像」や「virtual operation画像」を前にして,患者に手術の説明を行う日も近いと思われる.しかしこのような先端画像の作成には,通常のMRIとは異なった費用と努力が必要である.折角進歩する技術を衰退させないためにも,医療制度がこのようなメリットに引換えられる費用と努力を正当に評価する時期が早く訪れることを望む.
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