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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科35巻4号

2007年04月発行

雑誌目次

走馬燈

著者: 園部眞

ページ範囲:P.325 - P.326

 脳神経外科医を目指して35年になる.『脳神経外科』誌に掲載された論文で勉強し,また数編は掲載された.その「扉」を書く栄誉を与えていただいたのを機会に,これまでの道を振り返ってみたい.

 我々東北大学医学部昭和47年(1972年)卒業予定者の中には,脳神経外科医(以下,脳外科医)をめざす学生が1人もなかった.私も内心,基礎医学の生化学を勉強しようと思っていた.卒業前の12月頃だったろうか,クラスの中でだれか脳外科医になってほしいという意見がでてきた.意思表示をしていなかった私にみんなの注目が注がれることになり,親友たちからの進言が回を重ねた.自分の親が脳卒中で他界していたことも拍車をかけることになり,「脳外科医をめざしてやれるだけはやってみよう」ということにした.そこで,故鈴木二郎教授が主催していた東北大学長町分院脳疾患研究施設脳腫瘍部門(広南病院長町番外地といわれていた)の医局にいるテニス部の先輩を訪ねた.2年間,岩手県立中央病院で研修しながら,脳外科の実際を経験してみるのがよいだろうとの進言を受け,それに従った.外科,内科,産婦人科,病理などの研修をしながら,毎晩のように病院に寝泊りし,脳神経外科急患の診療を手伝わせてもらった.同時に,東北大学の医局から派遣されて来ていた先生方にも公私にわたって教えていただく機会に恵まれた.2年目からは,ほぼ脳外科の研修医のようなかたちにしてもらい,本格的に脳外科医をめざすことになった.脳外科部長の原田範夫先生は,当時から眼科用の手術用顕微鏡を用いて,Sylvius裂経由で動脈瘤のクリッピングをされていた.抄読会でYasargil先生の手術に関する論文が発表された時,ここでは世界的な脳外科医と同じ方法で手術が行われていることを知り大いに感動した.また,くも膜下出血の患者も多く,年間100例近いクリッピングが行われていた.クリッピングが上手く行き,術後経過も順調で,そろそろ抜糸して退院へと考えている矢先,朝元気だった患者が夕方には半身不随で話もできなくなっている.血管撮影をすると,脳血管が糸のような攣縮を起こしている.多くの治療も効なく,寝たきり状態で退院してゆく.将来は,脳血管攣縮が起こらない方法を,または起こっても治す方法を研究しようと思うのは自然だったような気がする.手術室で閉頭しながら,看護師と「開頭せずに動脈瘤を治療できるようになるといいね」とか,放射線科の技師と「針を刺さないで,血管が見えるようになるといいね」などと話していたものである.

総説

画像誘導治療

著者: 松前光紀 ,   厚見秀樹

ページ範囲:P.329 - P.342

Ⅰ.はじめに

 1993年BostonのBrigham and Women's Hospitalに初めての術中magnetic resonance imaging(MRI)装置が導入されて以来,脳神経外科領域における画像誘導治療は飛躍的に進歩した.われわれ脳神経外科医は,stereotaxic frame,術中computed tomography(CT),術中angiography,ナビゲーションシステムなど,数々の先駆的技術を手術の現場に導入してきた.しかし術中MRIの導入は,単にbrain shiftに対応する頻回のimage updateや,術中の詳細な解剖学的情報をわれわれに提供するのみではない.いくつかのシーケンスを組み合わせることによるtissue characterization,水分子プロトンの異方性を利用したdiffusion tensor imaging(DTI),磁化率の変化を脳機能と合わせ可視化したfunctional MRI(fMRI),代謝産物を観察するmagnetic resonance spectroscopy(MRS)など,従来の診断機器では不可能であった生体情報を得ることを可能とした.特に脳内の物理的変量である,温度・圧力・流体の流れなどのMRIによる計測は,近年新しい非侵襲的治療の概念を打ち出しており,今後の方向性として重要である.

 本稿では,最初に術中画像診断の変遷を述べ,次に最近登場した新しいタイプの手術室を紹介する.そして最後に,MRIを用いた脳内物理的変量の計測,MRI温度計測法を利用した低侵襲治療,新しい画像合成技術,MRI撮像下血管内カテーテル誘導など,他領域で研究されている技術についても紹介し,画像誘導治療の将来について言及する.

研究

後大脳動脈瘤の7例

著者: 魏秀復 ,   宇野淳二 ,   伊飼美明 ,   伊野波諭 ,   古賀広道 ,   山口慎也 ,   長岡慎太郎

ページ範囲:P.345 - P.352

Ⅰ.はじめに

 後大脳動脈瘤(以下,PCA動脈瘤)は,その発生頻度の少なさから脳神経外科医が遭遇する機会は極めて少ない.また解剖学的な動脈瘤の位置により出現する神経学的症状も異なり,到達法・治療法の適切な選択が必要となる動脈瘤でもある.われわれは,過去10年間に7例のPCA動脈瘤を経験した.手術方法,また本稿では,Zeal & Rhoton の分類法14)を用いてPCA動脈瘤を分類したが,今までに報告されている分類法の差違などにつき若干の文献的考察を加え報告する.

難治性振戦に対するposterior subthalamic areaの深部刺激療法

著者: 村田純一 ,   北川まゆみ ,   上杉春雄 ,   斉藤久寿 ,   岩㟢喜信 ,   菊地誠志 ,   澤村豊

ページ範囲:P.355 - P.362

Ⅰ.はじめに

 本態性振戦やパーキンソン病の上肢末梢の振戦には,視床腹側中間核(Vim核)の治療(凝固術あるいは脳深部刺激,DBS)が有効とされている.しかし,近位筋に著明な振戦は,標準的なVim核手術では制御しきれない場合がしばしばある12,13).また頭頸部,体幹などの体軸部振戦axial tremorや下肢の振戦も同様である.このような振戦を視床凝固術で制御するには,より広い範囲の凝固巣が必要となり,破壊に伴う合併症が問題となる.またDBSでは,標準的なtarget以外の効果的な部位をも刺激できるような電極位置の設定が必要となる13).重度の近位筋を含む振戦に対して,多数の症例群で安定した治療成績を上げるのは簡単ではない.

 Posterior subthalamic areaは,古くから定位脳手術の有望なtargetとして認知されており,1960年から1970年代に術中電気刺激または凝固破壊で,近位筋を含む多様な振戦に著効を示した多くの報告がある2,10,20,21).しかし破壊に伴う合併症が問題となり広く普及するには至らず,代わって視床Vim核手術が標準的治療となっていった14).しかしながらDBSが普及した現在,この領域は十分安全に治療可能なtargetである.ここはSchaltenbrand and Wahrenのatlasでは,不確帯(zona incerta, Zi)とprelemniscal radiation(Ra.prl.)からなる(以下,Zi/Raprl).

 筆者らは,Vim thalamotomyで遠位筋振戦は消失したが近位筋振戦が改善しなかった本態性振戦の症例で,Zi/RaprlのDBSが著効した例を経験した.その後,振戦を主徴とするパーキンソン病にも同治療を試み,振戦ばかりでなく固縮・寡動にも有効であったため,症例を重ねて長期的に持続する効果を得ている.本稿では,その治療手技および長期効果を報告したい.

症例

新生動脈瘤の3例

著者: 下川原立雄 ,   下村隆英 ,   奥村嘉也 ,   榊寿右

ページ範囲:P.365 - P.370

Ⅰ.はじめに

 動脈瘤頸部クリッピング術は,脳動脈瘤に対する根治的治療法と考えられているが,術後数年から10年以上経過して動脈瘤の再発,再出血を来した症例が報告されている.このような動脈瘤再発の原因の1つに動脈瘤の新生が挙げられ,クリッピング術後の長期にわたる経過観察の必要性が指摘されている2,6-8,12,14,18)

 今回われわれは,初回治療後長期間(平均12年)経過し動脈瘤の新生を来した3症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

超高齢非機能性下垂体腺腫に対する外科治療

著者: 中村一仁 ,   岩井謙育 ,   山中一浩 ,   川原慎一 ,   池田英敏 ,   永田理絵 ,   宇田武弘 ,   一ノ瀬努 ,   村田敬二 ,   阪口正和 ,   安井敏裕

ページ範囲:P.371 - P.375

Ⅰ.はじめに

 高齢下垂体腺腫患者に対する外科治療についての報告は散見3,5,8-10)されるが,高齢下垂体腺腫患者は他の全身疾患を多く有することなどから,手術侵襲による全身状態の悪化を危惧して経過観察を選択することも多いと考えられる.しかし,視力障害の愁訴をもつ高齢下垂体腺腫患者に対して,外科治療適応を考慮する必要性があることも事実である.今回われわれは,視力障害にて発症した超高齢者の非機能性下垂体腺腫の3手術例を経験し良好な結果を得たので,その治療経過について報告する.

極めて不安定な状態におかれた腰仙椎移行部病変に対するintrasacral fixation(Jackson法)の有用性

著者: 西浦司 ,   西口充久 ,   日下昇 ,   高山和浩 ,   前田八州彦 ,   荻原浩太郎 ,   中川実

ページ範囲:P.377 - P.384

Ⅰ.はじめに

 腰仙椎間は,仙骨頭側面が腹側に傾斜し重力線に対して大きな剪断力が作用するため固定しがたく,また骨癒合率も他の高位に比べて低いとされる11,14,15).この不安定要因に拮抗すべくこれまでにも種々の固定法が開発されてきた.Jacksonによるintrasacral fixation8)(Fig. 1)では,岬角を抜くように刺入した仙骨スクリューと仙骨スクリュー頭部より仙骨外側部に刺入したロッドが仙骨を強力に保持し,ロッド先端部が仙腸関節部で押さえられる,いわゆるiliac buttress効果9)により,腰仙部での屈曲負荷に対する固定性を維持できるとされる.われわれは腰仙椎が極めて不安定な状態を強いられた3症例に対して本法を応用し,その有用性を認めたので報告する.

外傷性硬膜下水腫の経過観察中に水頭症を来した1例

著者: 井上浩平 ,   萩原直司 ,   安陪等思 ,   渡邊光夫 ,   田渕和雄

ページ範囲:P.387 - P.390

Ⅰ.はじめに

 外傷性硬膜下水腫は自然寛解することが多い一方,慢性硬膜下血腫へ移行する例も数多く存在することはよく知られている.今回われわれは外傷性硬膜下水腫の経過観察中に水頭症を来した稀な1例を経験したので報告する.

連載 脳神経外科医療のtranslational research(6)

脳・神経刺激療法のtranslational research

著者: 深谷親 ,   片山容一

ページ範囲:P.391 - P.399

Ⅰ.はじめに

 脳神経外科の様々な領域は,大まかには臨床の場で培われた経験に基づく知見と論理的な方法論に基づく研究の成果の2つを基盤に発展してきたといえよう.その中でも脳・神経刺激療法を中心とした定位・機能神経外科という領域は,研究が寄与する部分の特に多い分野の1つといえる.既に,脳・神経刺激療法は脳神経外科医療の中で1つの分野として確立しているが,これまでの長い歴史の中で数多くの基礎あるいは臨床研究の成果を基盤として発展してきた.そして,これからの発展もこうした研究成果なしにはあり得ないであろう.事実,この領域は,近年の電子工学技術の進歩に伴い,さらなる大きな発展が期待されている.本稿では,定位・機能神経外科領域の基盤となった主たる研究の流れを初めに概観する.さらに,神経刺激の作用機序の解明,新たな刺激部位や適応疾患拡大のための基礎ならびに臨床研究について記載し,最後に今後の展望について述べる.

脳神経外科における再生医療―臨床応用にむけて(1)

ヒトES細胞を用いる再生医療の法的倫理的諸問題

著者: 位田隆一

ページ範囲:P.403 - P.410

はじめに

 生命科学・医学の発展は,第2次大戦後の科学技術のそれの中でも最も著しいものの1つである.いまや1個のヒト細胞の発達が分子レベルまで把握されてくるにつれて,細胞や組織をいかにして疾病の治療に用いるかが,重要な目標の1つとなった.とりわけヒトES細胞を用いる再生医療は,様々な難病の効果的な治療に大きく役立つことが期待されている.

 しかし,ヒトES細胞を用いる再生医療は同時にわれわれに大きな課題を投げかけている.人のES細胞は人間が誕生する最初の段階にある胚を破壊して得られるものであり,さらにその臨床応用においては,免疫拒絶反応を回避するために患者のクローン胚を作成する必要があるとされる.こうした「人の生命の萌芽」を生殖目的以外に利用することは,人間の生命に対する考え方に再考を迫るものであり,人間の生命に対する重大な挑戦でもあって,人間社会および個々人に対して重大な倫理的,法的,社会的問題を含んでいる.

海外留学記

美しきAugusta―Department of Neurology, Medical College of Georgia

著者: 安原隆雄

ページ範囲:P.400 - P.402

 2005年1月から2006年12月まで2年間,アメリカ ジョージア州オーガスタにあります,ジョージア医科大学神経内科学教室 Cesario V. Borlongan先生の下,神経移植再生に関する研究留学をさせていただきました.オーガスタ生活でまず思い出されるのは美しい春のことです.オーガスタは「ゴルフのマスターズで有名な」といえばほとんどの方がご存知の,人口20万人程度の小さな町です.マスターズは4月に開催されるのですが,その1週間は大勢のrichな観光客であふれかえり(ホテル料金は3倍程度に上昇します),木々はきれいな花で彩られ,町をあげてのお祭りムードになります.ゴルフコースは本当に美しくすばらしいのですが,私はその頃に舞うマツの花粉にいつも悩まされました.

 Borlongan先生は慶應義塾大学で学位をとられたこともあり,ずいぶん親日派で,私を含めて2~3人の日本人ポスドクが中心となって研究が進んでいました.慶應義塾大学脳神経外科からは原 晃一先生,名古屋市立大学神経内科からは松川則之先生,後任で牧 美奈先生が来られ,みなさんに助けていただきながら慌しくも楽しい留学生活が過ごせました(写真1).最初の1年は,アメリカのシステムにも馴染んでおりませんでしたし,常時各種共同研究やラボの持つテーマに追われ,あまり自由な時間もとれませんでした.アメリカに来てすぐの頃は,当たり前のように,いったん家に帰って夕食をとった後,夜中の2時,3時までラボで顕微鏡を覗いていたような気もします.しかし,そんな過密スケジュールの中,6月には日本からは3~4時間で着く台湾へ,片道1日がかりの4泊6日で,9th International Conference on Neural Transplantation and Repair(脳梗塞に対する骨髄由来幹細胞移植の演題)に参加する機会をいただきました.さらに,11月にはワシントンDCの35th Society for Neuroscience学会(パーキンソン病に対する神経幹細胞移植の演題)に乗じてニューヨークへ行ったり,12月にはカリフォルニアの12th International Symposium on Neural Therapy and Regeneration (パーキンソン病に対するNT2N.Nurr1細胞移植の演題)で美しいモントレーの自然を満喫したりと,1年目が過ぎようかという頃にはかなりゆとりも出てきていました.また,ラットの下肢運動抑制モデルにおける神経新生について,ゼロから実験を立ち上げました.大学の動物実験の倫理委員会の承認を得るのに半年かかったものの,ボスに助けてもらいながら,何とか暑いオーガスタの真夏には実験が軌道にのっていました.一方で,まるで共同生活かのようにラットと時間を共にしたことが災いし,次第にラットアレルギーが重症化して,軽い呼吸困難やラットの分泌液に皮膚がみみずばれを起こすようになっていましたが,これも完全防備で実験することと抗アレルギー剤の内服でしのぐことができました.研究面ではそれ以外にも,脳梗塞ラットにサプリメントを毎日与え続けてその影響をみたり,原先生が中心で行っていたRhesus Monkeyに対する虚血実験をお手伝いさせていただいたり,いくつもの実験にかなり混乱した時期でもありました.そんな中でも,伊達 勲教授のお力添えもあり,留学1年目でreview論文などを書かせていただく機会を得,大変勉強になりました.

コラム:医事法の扉

第12回 「診断書交付義務」

著者: 福永篤志 ,   河瀬斌

ページ範囲:P.411 - P.411

 われわれは,よく患者さんから診断書の交付を依頼されますが,医師法には,「診察若しくは検案をし,又は出産に立ち会った医師は,診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には,正当の事由がなければ,これを拒んではならない.」と規定されています(19条2項).ちょっとごちゃごちゃした条文ですが,ようするに,診察をして診断書を求められたら,正当の事由がない限り拒否してはいけないということです(死亡診断書については,記載事項が医師法施行規則20条で規定されています).

 ここにいう「正当の事由」とは,どのようなものでしょうか.

脳神経外科をとりまく医療・社会環境

日本と米国の脳神経外科診療の違い―第1回

著者: 伊藤昌徳

ページ範囲:P.413 - P.418

Ⅰ.はじめに

 「医学」は科学であるが,「医療」は社会文化の一部であり12),その国の政府の医療政策に依存している.また,医療業界は医療政策,医療制度によってコントロールされている.米国の脳神経外科医は官僚主義の医療政策,患者からの訴訟,民間保険会社と公的保険機関からの診療報酬支払い制限3,4,5)という厳しい環境の中で診療に当たっていることは本誌で述べた13).このように世界各国で独自の社会文化を背景とした「医療」が行われているが,部分的に共通するものもある.

 米国の医療制度,診療の実態を知ることはわが国の医療の将来を考える際の一助となる.米国の制度を参考に日本に導入された最近の例として,診療報酬包括支払い制度(DPC)と臨床研修医のマッチング制度が挙げられる.筆者は第1回(サンディエゴ,2003)と第2回(名古屋,2004)日米脳神経外科友好シンポジウム,そして第64回日本脳神経外科学会(横浜,2005)において日米の医療保険制度について講演の機会を与えられた14,15).その際の検討,議論と米国脳神経外科医から得た情報をもとに,今回日米の比較を行った.第1回では,米国脳神経外科の診療の実態について,脳神経外科医の適数,新規採用,診療形態,脳神経外科専門病院,施行されている手術を中心に述べる.

書評

『神経内視鏡手術アトラス』―石原正一郎・上川秀士・三木 保:編集 フリーアクセス

著者: 冨永悌二

ページ範囲:P.385 - P.385

 このたび,石原正一郎先生,上川秀士先生,三木 保先生らが編集した「神経内視鏡手術アトラス 第1版」が発売された.神経内視鏡は,歴史は古いものの脳神経外科領域における診断・治療技術としては片隅に追いやられていた感がある.しかし新たな内視鏡機器の開発や技術の洗練によって成熟し,今やある種の閉塞性水頭症では治療の第一選択しとなる程重要なmodalityとなりつつある.本書はこのような流れの中にあって誠に時便を得た企画であり,神経内視鏡を志す脳神経外科医,第一線で神経内視鏡治療に携わっている脳神経外科医のみならず一般の脳神経外科医にとっても大変有用な著書である.

 第一章「歴史と基礎知識」では神経内視鏡の歴史がわかりやすく紹介されるとともに,従来の著書では軽視されがちであったdeviceとしての神経内視鏡に関する解説がなされている.軟性鏡と硬性鏡それぞれの特色や利点にととまらず,最近登場した脳室内ビデオスコープについても従来の軟性鏡との違いについて解説している.さらに現在の神経内視鏡手技において最も問題となる止血操作の際に用いられる凝固因子についても各製品の作用原理,生体への影響についてもわかりやすく述べている.

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編集後記 フリーアクセス

著者: 吉峰俊樹

ページ範囲:P.426 - P.426

 光と色が少しだけ増えて昼の時間が徐々に延びる季節となりました.これで私は五十数回目の春を迎えますが,巻頭言の園部 眞先生はそれより少しだけ多いのではないかと思います.が,それだけの差でなぜ園部先生はああも立派なのだろうか,日頃より腑に落ちないところ,今回の巻頭言を心して拝読させていただきました.

 もうおひとかた,同じ位の年代差でかねてより尊敬申し上げております伊藤昌徳先生が日米の脳神経外科診療について連載を始めて下さいます.伊藤先生が述べられているように医療は医学とは異なりまさに社会と文化の一部であり,各国の医療状況,特にその背景を知悉することは簡単ではなく,種々のメディアはもちろん留学経験があったり当地で現在活躍中の先生でさえ苦労されるようです.この点,より大きな視野,より多くの視点から分析される伊藤先生に期待するところ大です.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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