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海外留学記
美しきAugusta―Department of Neurology, Medical College of Georgia
著者: 安原隆雄1
所属機関: 1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経病態外科学
ページ範囲:P.400 - P.402
文献購入ページに移動Borlongan先生は慶應義塾大学で学位をとられたこともあり,ずいぶん親日派で,私を含めて2~3人の日本人ポスドクが中心となって研究が進んでいました.慶應義塾大学脳神経外科からは原 晃一先生,名古屋市立大学神経内科からは松川則之先生,後任で牧 美奈先生が来られ,みなさんに助けていただきながら慌しくも楽しい留学生活が過ごせました(写真1).最初の1年は,アメリカのシステムにも馴染んでおりませんでしたし,常時各種共同研究やラボの持つテーマに追われ,あまり自由な時間もとれませんでした.アメリカに来てすぐの頃は,当たり前のように,いったん家に帰って夕食をとった後,夜中の2時,3時までラボで顕微鏡を覗いていたような気もします.しかし,そんな過密スケジュールの中,6月には日本からは3~4時間で着く台湾へ,片道1日がかりの4泊6日で,9th International Conference on Neural Transplantation and Repair(脳梗塞に対する骨髄由来幹細胞移植の演題)に参加する機会をいただきました.さらに,11月にはワシントンDCの35th Society for Neuroscience学会(パーキンソン病に対する神経幹細胞移植の演題)に乗じてニューヨークへ行ったり,12月にはカリフォルニアの12th International Symposium on Neural Therapy and Regeneration (パーキンソン病に対するNT2N.Nurr1細胞移植の演題)で美しいモントレーの自然を満喫したりと,1年目が過ぎようかという頃にはかなりゆとりも出てきていました.また,ラットの下肢運動抑制モデルにおける神経新生について,ゼロから実験を立ち上げました.大学の動物実験の倫理委員会の承認を得るのに半年かかったものの,ボスに助けてもらいながら,何とか暑いオーガスタの真夏には実験が軌道にのっていました.一方で,まるで共同生活かのようにラットと時間を共にしたことが災いし,次第にラットアレルギーが重症化して,軽い呼吸困難やラットの分泌液に皮膚がみみずばれを起こすようになっていましたが,これも完全防備で実験することと抗アレルギー剤の内服でしのぐことができました.研究面ではそれ以外にも,脳梗塞ラットにサプリメントを毎日与え続けてその影響をみたり,原先生が中心で行っていたRhesus Monkeyに対する虚血実験をお手伝いさせていただいたり,いくつもの実験にかなり混乱した時期でもありました.そんな中でも,伊達 勲教授のお力添えもあり,留学1年目でreview論文などを書かせていただく機会を得,大変勉強になりました.
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