文献詳細
文献概要
海外留学記
臨床研修報告:Department of Neurosurgery, University of Erlangen-Nuernberg
著者: 阿久津博義1
所属機関: 1筑波大学脳神経外科
ページ範囲:P.624 - P.626
文献購入ページに移動 Erlangenは南ドイツのBayern州Franken地方に位置し,Nuernbergから電車で20分程度の所にある,大学とSiemensで成り立っている人口10万人程度の小さな町です.Erlangen大学脳神経外科はKopfklinik(写真1)という眼科・神経内科・精神科・神経放射線科からなる病院内にあり,脳神経外科だけで92床を有し,ドイツで2番目に大きな脳神経外科の施設です.2005年10月までは下垂体腫瘍と術中MRIで有名なProf. Fahlbuschがchairmanでしたが,以降は彼の元同僚でGoettingen大学の教授であったProf. Buchfelderが後を引き継いでいます.前任教授の頃からドイツにおける間脳下垂体腫瘍のセンターとなっており,困難な症例や再手術例などが全ドイツならびに周辺国からも数多く紹介されてきます(昨年度の間脳下垂体腫瘍の手術件数は約300件でした).またその他の脳腫瘍,脊椎疾患,てんかん外科も充実しています.4つの手術室の1つには1.5Tの術中MRIとneuronavigationが備わっており,functional MRI,MEG,diffusion tractgraphy等の結果を顕微鏡の画面中に表示しつつ手術ができるとともに,切除範囲の確認を術中に行っています.そこでは巨大下垂体腫瘍,glioma,脳室内腫瘍,てんかん外科,およびstereotactic biopsyなどの手術が行われます.
私が所属している筑波大学脳神経外科医局では松村教授と上村講師がDAAD奨学生としてそれぞれ2年間ドイツで臨床研修をしており,その豊富な手術件数と,そこでのすばらしい経験を聞いていたので,私もドイツの,特に興味を持っている間脳下垂体腫瘍の手術件数の豊富な施設でぜひ臨床研修を受けたいと希望していたところ,松村教授がErlangen大学の先生と知り合いだったこともあり受け入れの許可をいただきました.それと平行してDAAD奨学金の応募をしました.DAAD奨学金は金額としては少ないですが,素晴らしいのはドイツでの医師活動許可の申請を代行してくれることです.それによってEU圏外の外国人でも,実際に手術をはじめとするすべての医療行為を法的に問題なく行うことができます.私は卒後8年目の2005年10月1日から研修を開始したのですが,臨床をやるからにはドイツ語が絶対に必要と感じていたので日本でもレッスンを受けるとともに,研修開始前にミュンヘンでホームステイをしつつ4カ月弱のドイツ語の集中講座に参加しました.それでも研修開始当初は会話が全くわからず,仕事は手術の助手のみという感じでしたが,2カ月を過ぎてドイツ語に慣れてきた頃から当直もやり始め,他のドイツ人と同様に病棟業務もこなし始めました.そして研修を開始して半年ほど経過した頃にProf. Buchfelderの自宅に家族とともに食事に招待され,その席で次年度(2006年10月)から正職員として採用してもいいとの言葉をいただきました.その時の嬉しさは今でも忘れられません.現況ではEU外の外国人がドイツで有給で医師として働くのはかなり困難なことでしたが,最終的に州政府から現在の医師活動許可の延長ということで許可してもらえました.仕事の面でも語学力の向上とともに任されることも多くなり,2006年の7月頃より当直は助手2人体制の上のほうの立場になりました.また,時間外の手術は基本的に年下の助手と2人でやるようになり,定時手術でも脊椎手術や脳腫瘍の開閉頭などは1人で任されるようになりました.筑波大学のレジデント教育では若いうちから動脈瘤や脳腫瘍なども積極的に執刀させる方針をとっており,また脊椎疾患にも力を入れていることもあり,手術の経験という意味ではそれほどドイツ人の同世代の人たちと遜色なく,また日本の専門医を取得しているということでドイツでも信用してもらえました.むしろドイツでは動脈瘤の手術などは講師でも上のほうの人しかできないほど敷居が高い手術なので,私の動脈瘤の手術経験数を話すと同世代の同僚たちに驚かれたくらいです.ただ,脊椎の手術に関してはドイツでは桁違いに数が多いのでむしろドイツで多くを学ぶことができました.ドイツでは一般的に最初のmicrosurgeryが腰椎ヘルニアの手術とされています.またヘルニアの手術はmicroscope下に片手でdrillやstanzeを使うよい訓練になることがわかりました.本来の目的である間脳下垂体腫瘍に関しては再手術例を含め困難な症例が多く,そう簡単には執刀させてもらえませんが,助手として多くの症例を経験し,また非常に稀なことではありますが教授の指導の下に執刀させていただく機会も得ました.Prof. Buchfelderはtranssphenoidal approachを最も得意としていますが,transcranial approachによる下垂体腫瘍,鞍上部髄膜腫,頭蓋咽頭腫の手術に関しても多くの経験を持っています.また,間脳下垂体腫瘍のみならずその他の頭蓋底腫瘍や聴神経腫瘍,glioma,episurgery,そして動脈瘤や脊椎疾患も手術できるまさにオールラウンドな外科医であり,助手として入っているだけでもかなり勉強になります.
私が所属している筑波大学脳神経外科医局では松村教授と上村講師がDAAD奨学生としてそれぞれ2年間ドイツで臨床研修をしており,その豊富な手術件数と,そこでのすばらしい経験を聞いていたので,私もドイツの,特に興味を持っている間脳下垂体腫瘍の手術件数の豊富な施設でぜひ臨床研修を受けたいと希望していたところ,松村教授がErlangen大学の先生と知り合いだったこともあり受け入れの許可をいただきました.それと平行してDAAD奨学金の応募をしました.DAAD奨学金は金額としては少ないですが,素晴らしいのはドイツでの医師活動許可の申請を代行してくれることです.それによってEU圏外の外国人でも,実際に手術をはじめとするすべての医療行為を法的に問題なく行うことができます.私は卒後8年目の2005年10月1日から研修を開始したのですが,臨床をやるからにはドイツ語が絶対に必要と感じていたので日本でもレッスンを受けるとともに,研修開始前にミュンヘンでホームステイをしつつ4カ月弱のドイツ語の集中講座に参加しました.それでも研修開始当初は会話が全くわからず,仕事は手術の助手のみという感じでしたが,2カ月を過ぎてドイツ語に慣れてきた頃から当直もやり始め,他のドイツ人と同様に病棟業務もこなし始めました.そして研修を開始して半年ほど経過した頃にProf. Buchfelderの自宅に家族とともに食事に招待され,その席で次年度(2006年10月)から正職員として採用してもいいとの言葉をいただきました.その時の嬉しさは今でも忘れられません.現況ではEU外の外国人がドイツで有給で医師として働くのはかなり困難なことでしたが,最終的に州政府から現在の医師活動許可の延長ということで許可してもらえました.仕事の面でも語学力の向上とともに任されることも多くなり,2006年の7月頃より当直は助手2人体制の上のほうの立場になりました.また,時間外の手術は基本的に年下の助手と2人でやるようになり,定時手術でも脊椎手術や脳腫瘍の開閉頭などは1人で任されるようになりました.筑波大学のレジデント教育では若いうちから動脈瘤や脳腫瘍なども積極的に執刀させる方針をとっており,また脊椎疾患にも力を入れていることもあり,手術の経験という意味ではそれほどドイツ人の同世代の人たちと遜色なく,また日本の専門医を取得しているということでドイツでも信用してもらえました.むしろドイツでは動脈瘤の手術などは講師でも上のほうの人しかできないほど敷居が高い手術なので,私の動脈瘤の手術経験数を話すと同世代の同僚たちに驚かれたくらいです.ただ,脊椎の手術に関してはドイツでは桁違いに数が多いのでむしろドイツで多くを学ぶことができました.ドイツでは一般的に最初のmicrosurgeryが腰椎ヘルニアの手術とされています.またヘルニアの手術はmicroscope下に片手でdrillやstanzeを使うよい訓練になることがわかりました.本来の目的である間脳下垂体腫瘍に関しては再手術例を含め困難な症例が多く,そう簡単には執刀させてもらえませんが,助手として多くの症例を経験し,また非常に稀なことではありますが教授の指導の下に執刀させていただく機会も得ました.Prof. Buchfelderはtranssphenoidal approachを最も得意としていますが,transcranial approachによる下垂体腫瘍,鞍上部髄膜腫,頭蓋咽頭腫の手術に関しても多くの経験を持っています.また,間脳下垂体腫瘍のみならずその他の頭蓋底腫瘍や聴神経腫瘍,glioma,episurgery,そして動脈瘤や脊椎疾患も手術できるまさにオールラウンドな外科医であり,助手として入っているだけでもかなり勉強になります.
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