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連載 脳神経外科手術手技に関する私見とその歴史的背景
3.脳動脈瘤:Anterior Circulation─Pterional Approach
著者: 米川泰弘1
所属機関: 1Neurochirurgische Universitätsklinik Zürich
ページ範囲:P.703 - P.718
文献購入ページに移動もう25星霜が経過したが,1982年にanterior communicating artery(AcomA)aneurysmをpterional approachで根治手術をすることに関して,当時のstatusを日本脳神経外科コングレスの『Neurosurgeons』に発表する機会を得た.その後も,今もなお同じようなことを行っている.本稿はそれ以来のlearning process Lernprocessを示すものである.整理のために当職就任1993年以来の1,100例あまりの動脈瘤自執刀例をExcelにまとめているが,個々の症例を思い出すと,手術の仕方,管理の仕方は当時と比べてあまり変わっていないと言えなくもないが,やはり各ステップでの自分で納得した手技が残ってきたとも言える.
近年,endovascular techniqueの勃興によりconventional microsurgical techniqueの活用の場が狭まってきているのは確かではあるが,依然として必要不可欠なtechniqueであることも事実である.こちらに着任して間もなく,それを象徴するような出来事があった.AcomA aneurysmの患者さんで,Prof. Yasargilからinterventional neuroradiologistのProf. Valavanisに紹介されcoilingがなされ,当科にV-P shuntだけのために入院してきた症例があった.しかし治療としてのcompletenessの立場から言えば,neck clippingを今の段階で去ることはできないし,endovascular method で解決できない場合にもどうしても必要なstandardなtechniqueである.私がいつもstaffに言うことは,
1)一般的に言って,convemntional microsurgical methodで難しい手術はendovascular methodでも難しい.これらの技術は多くは互いに相補うのではなくて,むしろ競合するものであるが,その競合が相互技術の発展につながる.
2)ある技術を完成に近づけることができたと考え始めると,必ずそれに対抗する良い技術が出現してくる.脳神経外科関連の分野で言えばmicrosurgery,Gamma-knife,endovascular surgery などがそれぞれ発展の歴史をもち,他の技術に対抗しながら,個々の中でも競争しながら洗練されてゆくものである.
日本の実情にそぐわないかもしれないがconventional microsurgical method の発展の中に身をおいてきたものとして,本稿では,conventionalか endovascularかの議論には深入りしない.当科に13年前に赴任して,それまで行われていなかったくも膜下出血急性期重症例の治療を始めた.幸い,病態生理の解明の進展に対応してその治療にふさわしいneuroresuscitationを標榜した脳神経外科集中治療室を,スタッフを含めて整備することができたように思う1,12).今回は,ごくスタンダードなpterional approachとanteriorcirculation aneurysmsについて私見とその歴史的背景を述べてみたい.
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