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連載 悪性脳腫瘍治療の今とこれから
序文
著者: 若林俊彦1
所属機関: 1名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学
ページ範囲:P.81 - P.82
文献購入ページに移動 近年の脳腫瘍の治療戦略には大きな変革が起こりつつあります.手術法では,神経内視鏡,ナビゲーションシステム,術中誘発電位などの技術の進歩は目ざましく,ここ数年間で精度が格段に上昇しました.また,ナビゲーションシステムの最大の課題であった術中のブレインシフトは,MRI装置の導入による術中補正が可能となり,大きな進歩を遂げました.今までは,脳の画像診断が先行する形で発展し,手術手技は遅れをとった感がありましたが,ここ数年でようやく大きな前進がみられました.その結果,術前の詳細な検討により,手術による合併症が最小限に抑えられ,術後のquality of life(QOL)に十分な配慮をしつつ,しかも手術による腫瘍摘出精度は飛躍的に向上することとなりました.一方,術後の補助療法にも数々の新しい試みが報告されてきております.放射線療法も定位的放射線治療法として,従来のガンマナイフ治療のほかに,ノバリス(ブレインラボ株式会社,東京)やTomo Therapy(R)(TomoTherapy Inc., WI, USA)など,より精度の高い局所放射線治療法が次々に開発されてきております.化学療法においても,temozolomideをはじめとし,分子標的薬などに新たな治療薬としての期待がかかる開発も相次いでおり,これらの治療法のなかには既に優れた治療成績が報告されているものもみられます.また,新規治療法として,現在臨床研究が進んでいるものとしては,遺伝子治療,細胞療法,ウイルス療法,分子標的療法,ワクチン療法など脳腫瘍治療法に今後も新たな展開が期待される手法も数多く報告されてきています.
このようなここ数年の脳腫瘍の補助療法の急速な変革に伴い,脳腫瘍の最新治療の総括を切望する声が挙がってきました.その要望に応え,今回「悪性脳腫瘍」の連載を組むことになりました.本邦では原発性および転移性脳腫瘍と合わせますと,年間60,000件にも及ぶ脳腫瘍症例が発生していると推定されており,今回の情報を有効に活用することで,最新の脳腫瘍診断および治療を社会に還元できる効果は大きいものと期待されます.
このようなここ数年の脳腫瘍の補助療法の急速な変革に伴い,脳腫瘍の最新治療の総括を切望する声が挙がってきました.その要望に応え,今回「悪性脳腫瘍」の連載を組むことになりました.本邦では原発性および転移性脳腫瘍と合わせますと,年間60,000件にも及ぶ脳腫瘍症例が発生していると推定されており,今回の情報を有効に活用することで,最新の脳腫瘍診断および治療を社会に還元できる効果は大きいものと期待されます.
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