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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科36巻6号

2008年06月発行

雑誌目次

「まんでがん」

著者: 田宮隆

ページ範囲:P.469 - P.470

 香川県に移り住んで既に5年の月日が流れた.私は米国留学時代のボストンを除けば,今まで岡山,神戸,尾道とすべて瀬戸内海沿岸に住んできた.温暖な地域であり,非常に住みやすいところばかりである.他の地域からみれば同じ地域と思われるかもしれないが,微妙に方言や食べ物や習慣が異なっており戸惑うこともある.香川に来て一番戸惑ったのは,海が北に山が南にあることである.それまでの生活で海の方に向かうと必ず南だという習慣が染みついていたようで,これによって東西南北が分からなくなり方向音痴となってしまった.また,方言にも結構戸惑う.私は生粋の岡山弁であるので,讃岐弁は変わった関西弁という印象をもっていたが,年輩の人と話をしているとこれが讃岐弁かと思わせる独特の言葉がある.その中に,「まんでがん」という言葉があり,「全部,限界まで」という意味だそうであるが,非常に印象的な方言である.

 食べ物では,東京のミシュランガイドブックが発売されたとのことだが,香川にも『さぬきうどん全店制覇攻略本』(ちなみに800店以上が掲載されている)がある.まったく比較にはならないが,同じ食べ物ガイドブックであり,こちらのほうは実際に行った店が沢山掲載されており非常に重宝である.ノーベル賞が期待される村上春樹の『辺境・近境』(香川は近境でしょうね)や『恐るべきさぬきうどん』等の本や映画の効果か,讃岐うどんが普通のうどんから“UDON”となり,最近は全国から1杯150円程度のうどんを交通費を気にせずに食べに来てくれるのである.貸し自転車によるうどん巡りツアーは効率がよく,『讃岐うどん全店制覇攻略本』を片手に,うどん屋とうどん屋の間を運動(うどん?)しながら回るので沢山食べることができ特に好評である.さらに金比羅宮参拝も兼ねると奥の院まで1,368段昇って降りてからのうどんは最高である.ほんとうにこんなにうどん屋があって誰が食べるのかと当初は思っていたが,どこも昼時には満員である.それぞれの店でそれぞれの特徴があり,早い,安い,旨いのである.また,酔った後の最後の締めもラーメンではなくうどんである.とにかく讃岐人は朝からうどんである.まだ私はそこまでにはなっていないが,週3回は昼にうどんである.香川のカルボナーラといわれる釜玉(釜で茹であがった熱々のうどんに生卵と醤油か出汁をかけて混ぜ合わせて食べる)など一度食べたらやめられない.香川のJリーグをめざすサッカーチームは何と「カマタマーレ」と呼ばれている.

総説

脳腫瘍の新WHO分類

著者: 中里洋一

ページ範囲:P.473 - P.491

Ⅰ.は じ め に

 脳腫瘍の治療や研究を行う上で正しい診断が必須なことは論を俟たないが,その診断の基礎ともいうべき脳腫瘍分類が改訂された.脳腫瘍分類の世界標準はWorld Health Organization(WHO)により編纂されているWHO分類である.これは1979年に“Histological Typing of Tumours of the Central Nervous System”として出版された分類が最初のものである109).それ以来,病理学的方法論の進歩や,新しい腫瘍型の出現に合わせて改訂を重ねており,1993年に第2版54),2000年に第3版55)が出版されてきた.そしてこのたび7年ぶりに,脳腫瘍WHO分類が改訂され,2007年6月に第4版(WHO2007)として出版された68).第3版(WHO2000)以後の学問的成果を盛り込んで,新しい組織型の追加,分類枠の変更,診断基準の明確化,個々の腫瘍型の記述の改訂など,大幅な変更が加えられている.分類を掲載した書籍(WHO blue book)の形態は第3版とほぼ同様であり,各腫瘍型の定義,疫学,臨床症状,画像所見,病理組織像,分子遺伝学的所見,予後などが詳細かつ簡潔にまとめられ,それに最新文献が多数引用されている.コンパクトな書籍として日常の臨床や病理診断の現場で利用しやすいように工夫されている.

 脳腫瘍のWHO分類の改訂は,脳腫瘍の診断,治療をはじめ,病理学的あるいは分子遺伝学的研究にまで広範な影響を及ぼすものと考えられる.脳腫瘍の新WHO分類の解説はすでにいくつか刊行されており35,67),筆者もBrain and Nerve誌に総説を発表した77).本稿では前述の総説と重複する部分もあるが,図表を多用して可及的にわかりやすい解説を試みたい.

解剖を中心とした脳神経手術手技

弁蓋部神経膠腫の手術

著者: 渡邉学郎 ,   深谷親 ,   片山容一

ページ範囲:P.493 - P.503

Ⅰ.は じ め に

 弁蓋部神経膠腫(opercular glioma)はeloquent areaである言語運動領野近傍に存在するため,その切除範囲は多大な制約を受け,神経膠腫の中でも最も摘出が困難なものの1つである.近年,脳機能マッピングやニューロナビゲーションなどの手術支援法の進歩により,術後の神経脱落症状を最小限に抑えて最大限の腫瘍摘出を遂行することが可能となりつつあり,opercular gliomaに対しても積極的にextensive surgeryが試みられるようになってきた8,9,11)

 Opercular gliomaのうち,腫瘍の首座がsomatosensory cortexと断定できれば,肉眼的全摘出を目指すことができる.言語運動領野に及ぶものでは,腫瘍が口腔・顔面領域のprimary motor cortexに局在している場合には,その運動支配は両側性であるので,extensive surgeryは可能である.優位半球では言語機能温存が最大の課題となるが,後述するように,Broca areaに限定した切除であれば,必ずしも永続的失語症を引き起こすわけではなく,機能回復を見込んで切除率の向上を優先することができる.すなわち,opercular gliomaでもextensive surgeryを目指せ得る症例が少なからず存在するといえる.このextensive surgeryが可能か否かの判断は,3次元表面構造表示MRIや機能的MRIによって術前に予想し得るものである.

 Opercular gliomaに対するextensive surgeryにおいては,①言語機能の温存,②皮質脊髄路障害の回避,③穿通枝の温存,の3つの問題が挙げられる.このうち,①と②に対しては,ニューロナビゲーションなどの形態情報と脳機能マッピング・モニタリングなどの機能情報を十分に活用して機能温存を図るとともに,最大限の摘出を遂行する.③は①と②にも関連する問題であるが,血管径の太い動脈の血流不全は術中モニタリングを駆使することによって探知・回避できるものの,細い穿通枝を完全に温存する方法は確立されていないのが現状である.本稿では,これらの問題点について私見を述べるとともに,opercular gliomaの手術戦略を考察する.

研究

顔面外傷に対する外頸動脈塞栓術症例の検討

著者: 竹内誠 ,   本間正人 ,   加藤宏 ,   井上潤一 ,   高里良男 ,   正岡博幸 ,   早川隆宣 ,   大谷直樹 ,   吉野義一 ,   八ツ繁寛

ページ範囲:P.505 - P.511

Ⅰ.は じ め に

 顔面外傷は生命を脅かす出血の原因となり得る.多発外傷症例の治療プログラムとしては海外ではATLS(Advanced Trauma Life Support),日本ではJATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)が作成されており,確実なA(気道評価・確保),B(呼吸評価・安定化),C(循環評価・安定化)がまずなされるべき事項とされている8).顔面外傷における出血症例では,気道内出血流入による気道閉塞・換気障害により呼吸が不安定となるとともに,出血性ショックに陥る可能性がある.

 われわれは,顔面外傷による出血症例に対して外頸動脈塞栓術を施行した12症例を経験した.これらの症例について検討するとともに,良好な転帰を得た2症例を代表提示し,外頸動脈塞栓術の適応,時期などについて考察したので報告する.

脳血管内治療を受ける患者の精神状態・不安の評価

著者: 松原功明 ,   宮地茂 ,   細島理 ,   泉孝嗣 ,   大島共貴 ,   靍見有史 ,   錦古里武志 ,   吉田純

ページ範囲:P.513 - P.520

Ⅰ.は じ め に

 従来,中枢神経領域の外科的治療は開頭による直達手術がメインであったが,近年の治療技術の向上やデバイスの進歩により血管内治療が行われる機会が広まってきている.また,インターネット等の情報手段の普及により,局所麻酔下に行われる低侵襲性を求めて血管内治療が希望されることもある.

 今回われわれは,局所麻酔下に脳血管内治療を受ける患者が周術期に実際どのくらい不安を感じているかについて,標準的な不安スケールであるState-Trait Anxiety Inventory(STAI)日本語版と不安に関する独自アンケートを用いて評価した.

症例

両側内頸動脈欠損症に合併した破裂後交通―後大脳動脈瘤の1手術例

著者: 数又研 ,   寺坂俊介 ,   石川達哉 ,   浅岡克行 ,   牛越聡 ,   安喰稔 ,   横山由佳

ページ範囲:P.523 - P.528

Ⅰ.は じ め に

 内頸動脈欠損症は稀な血管破格であるが,脳動脈瘤を合併し発見されることが多い1,15,18,19,23).欠損は通常,十分に発達した側副血行により代償されているが,hemodynamic stressのかかりやすい部位に脳動脈瘤が発生しやすいことによると考えられる.今回われわれは,両側内頸動脈欠損症に合併した破裂後交通─後大脳動脈瘤の1手術例を経験した.このような血管破格を伴った例における,手術の注意点と眼症状について述べたい.

骨化した頭血腫に頭蓋形成術を行った1例

著者: 千田光平 ,   久保直彦 ,   鈴木豪 ,   木戸口順 ,   小守林靖一 ,   小川彰

ページ範囲:P.529 - P.533

Ⅰ.は じ め に

 出生直後の新生児において産瘤や頭血腫による頭皮の膨隆はよくみられるが,そのほとんどが数週間で自然に吸収され消滅する.一方,頭血腫では残存血腫周囲が骨化し,頭蓋変形を来すことは知られているが,頭蓋形成を必要とするほど大きなものは稀である2,4,5,6,12)

 われわれは頭血腫の骨化により著しい頭蓋変形を来した小児例に対し,吸収性骨プレートを用いた頭蓋形成を行った症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

下垂体腺腫,ラトケ囊胞を合併したCarney complexの1例

著者: 鴨嶋雄大 ,   澤村豊 ,   岩㟢喜信 ,   藤枝憲二 ,   高橋博之

ページ範囲:P.535 - P.539

Ⅰ.は じ め に

 Carney complex(CNC)は皮膚の色素沈着異常,粘液腫,内分泌腫瘍や機能亢進,神経鞘腫の合併を特徴とし,常染色体優性遺伝を示す稀な疾患である.脳神経外科領域では10%程度の発症率を持ち,若年者において巨人症を呈する可能性を持つ下垂体腫瘍や,同じく10%程度の発症率を示す神経鞘腫が治療対象となる.しかし内科,皮膚科領域を除き本邦での脳神経外科領域での治療に関してはこれまで報告がなく,このため脳神経外科医の本疾患に対する認識も十分とはいえない.今回われわれは,12歳女児において血清成長ホルモン(s-GH)高値を示し巨人症様症状を呈した稀なCNCの1治療例を経験し,同症例において下垂体腺腫とラトケ囊胞の合併を認めた.総合的CNCに関する文献的考察を踏まえ報告する.

視床と傍側脳室に多中心性病変をもったgerminomaの1例

著者: 高野晋吾 ,   大須賀覚 ,   益子良太 ,   松村明

ページ範囲:P.541 - P.545

Ⅰ.は じ め に

 Germinomaは早期に正確な診断がつけば,化学療法と放射線療法で根治しうる疾患群である5).診断に関しては,最近では開頭術による腫瘍摘出あるいは生検ではなく,神経内視鏡による第3脳室開窓術と腫瘍生検の同時手術により行われることが多い8).Germinomaの典型例である松果体部あるいは鞍上部の腫瘍は,脳室内からの観察が容易に行えるのが通常である.しかしながら,それ以外の部位,中脳から間脳,あるいは傍側脳室に発生し,脳室内に露出していないgerminomaを経験したので報告する.

経静脈的塞栓術の併用で根治した,脊柱管内巨大静脈瘤を伴った頸椎傍脊椎部動静脈瘻の1例

著者: 山口秀 ,   飛騨一利 ,   浅野剛 ,   矢野俊介 ,   柏崎大奈 ,   岩㟢喜信

ページ範囲:P.547 - P.553

Ⅰ.は じ め に

 脊髄動静脈奇形(spinal arteriovenous malformation:spinal AVM)のうち,椎体周囲の静脈との間にarteriovenous shunt(AVS)を形成する,比較的稀なタイプの病変の存在が知られており,傍脊髄/脊椎部動静脈短絡:paraspinal/paravertebral AVSなどと称されている.Paraspinal/paravertebral AVSの症状発現の機序としては,perimedullary veinへの逆流によりcongestive myelopathyを呈するものと,拡張した静脈構造によりcompressive myelopathyを呈するもののいずれもあり得る9,24).今回,われわれは,多数の血管群がfeederとなり,脊柱管内のvarixにてcompressive myelopathyを呈した傍脊椎部動静脈瘻に対して経静脈的塞栓術を行い,良好な治療効果をあげることが可能であった症例を経験したので,治療戦略を中心に考察し報告する.

コラム:医事法の扉

第26回 「民事鑑定」

著者: 福永篤志 ,   河瀬斌

ページ範囲:P.557 - P.557

 「鑑定」は,前回の「証人尋問」と同じく,人を証拠方法とする証拠調べの1つです.民事と刑事の両方に導入されている訴訟手続ですが,今回は,民事鑑定についてとりあげます.

 「鑑定に必要な学識経験を有する者は,鑑定をする義務を負う」と規定され(民事訴訟法212条第1項),裁判所に指定されてしまうと(213条),鑑定義務を負うこととなります(もっとも,証人と違って代替性がありますから,鑑定を強制されることはありませんし,実際は,裁判所書記官から連絡があり,鑑定を受諾するかどうかについて打診があります).手続きとしては,当事者が裁判所に鑑定の申出とともに鑑定事項を書面で提出し(民事訴訟法規則129条1項),裁判所から指名された鑑定人は,宣誓を行い意見を述べます(131条1項,132条1項).また,宣誓書と意見書を提出する方法によっても代用できるとされています(131条2項,132条2項)が,対立が厳しい場合は,法廷で意見を述べることが求められます.鑑定人が口頭で意見を述べる時には,証人尋問の時と異なり,裁判長,鑑定申出当事者,他の当事者の順に質問を受けます(民事訴訟法215条の2第1項,2項).また,鑑定人が遠隔地にいるときにはテレビ会議の方法を利用することもできます(215条の3).鑑定人は,裁判所と交信可能なテレビ会議装置が設置されている場所に出頭すれば,裁判所に出頭する必要はありません(同規則132条の5).なお,証人尋問と同様,正当な理由なく出頭あるいは鑑定を拒絶した場合には,10万円以下の罰金又は拘留に処せられますが(民事訴訟法216条,193条),証人と異なり,勾引を命ぜられることはありません.

書評

『コミュニケーションスキル・トレーニング 患者満足度の向上と効果的な診療のために』―松村 真司,箕輪 良行●編

著者: 有賀徹

ページ範囲:P.546 - P.546

 このたび松村,箕輪両氏の編集による『コミュニケーションスキル・トレーニング――患者満足度の向上と効果的な診療のために』が出版された.その帯には「ベテラン医師を対象とした云々」とある.患者面接などに関する実践的な手法については,最近の医学部での教育や臨床研修医の採用において用いられていて,自らもおおよそのことを知ってはいたが,「ベテラン医師」から見ても確かに一読するとうなずくところが多々ある.

 さて,日本語はもともと敬語が発達していて,対話する相手との距離などを測りながらそれを巧みに使うことになっていて,そこにこそ言わば教養のなせるわざがある.したがって,医師はこの面でも研鑽すべきだろうと自らは漠然と考えていた.本書にはさすがにそのような言及はないが,それよりもっと基本的な面接などに関する体系的な仕組みについて解説されている.コミュニケーションスキル・トレーニングなどという教育が微塵もなかったわれわれでも,本書にある標準的な仕組みを頭に入れて医療を展開するなら,内科診断学やSings & Symptomsの基本である患者情報をまずは効果的に得ることに役立つ.引き続く治療についても患者に大いにその気になってもらう上で,この体系的な仕組みを実践する意義は大いにあると言うべきであろう.

『Critical Thinking脊椎外科』―星地 亜都司●著

著者: 小山素麿

ページ範囲:P.555 - P.555

 これほど正直で役に立つ,しかも破格的な書物に出会ったことがありません.正にタイトルの『Critical Thinking 脊椎外科』がぴったりの教科書です.一度目は面白くて一気に読んでしまいました.二度目は共感する文章に黄色のマーカーで線を引きました.ほとんどの頁が黄色になりました.特に「診断学のなぞ」と「知っておきたい脊髄の解剖学的知識」には自分が今まで何回も執筆した際に“書きたくても書けなかった本音”がいっぱい詰まっており,感動しました.例えば前脊髄視床路と外側脊髄視床路を区別できないと書いたのは私の場合,還暦が過ぎてからでした.それほど教科書を執筆するときは先人の記載を変えるのには勇気がいるものでした.「近頃の若い医者は,ハンマーを持たないで画像ばかりみている」と書いておられますが,1点だけ反論をお許しいただけるのであれば,市中病院では若い医師ばかりでないと,追記させていただきたいと思いました.

 「神経所見と画像上の高位診断の整合性があるか」,「MRIで椎間板の出っ張りがあっても,うかつにヘルニアと呼んではならない」ということも非常に大切なご意見と思いました.さらに「椎弓切除術と椎弓形成術とどちらが優れているか」は日本の保険制度での点数の差でしかないと暗に指摘されていると考え,痛快な思いで読ませていただきました.その他,名文は枚挙に暇がありません.「歯突起後方偽腫瘍は摘出する必要のない疾患であって環軸椎固定術で縮小する」,「胸椎のOPLLは脊椎外科医にとって壁のごとき存在である」,「内科的疾患を嗅ぎ分ける能力が必須であり,そのような疾患を画一に鑑別できる能力があってプロといえる」,「dural AVFは胸腰椎移行部によく発生し,(中略)手術になる率が高い,この疾患もなぜか腰部脊柱管狭窄症のような腰部変性疾患として扱われ,診断が遅れることが多い.PTRの亢進を見逃さないことである」etc,etc….

文献抄録

Milrinone for the treatment of cerebral vasospasm after aneurysmal subarachnoid hemorrhage

著者: 大須賀浩二

ページ範囲:P.559 - P.559

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編集後記

著者: 伊達勲

ページ範囲:P.566 - P.566

 春爛漫の4月,岡山と香川を結ぶ瀬戸大橋の開通20周年を記念して,自動車をすべて通行禁止にしての大がかりなマラソン大会(15km)が開かれた.5,000名のランナーとともに,車の通らない瀬戸大橋上を走ったあと自宅に戻り,一息ついたところでこの編集後記を書いている.今月号の「扉」には香川大学の田宮 隆先生による「まんでがん」が掲載されている.田宮先生が述べられているように,大橋のおかげで,岡山と香川の交通は(というより中国と四国の交通は)本当に便利になり,香川での緊急手術の呼び出しでも岡山から1時間でたどりつけるようになった.その大橋の上を走りながら眺める瀬戸の島々の美しさはまた格別のものであった.以前は,「まんでがん」の心意気で走っていたが,今は健康のため楽しみながら走ることにしている.今月号は手術手技欄に渡邊学郎先生による「弁蓋部神経膠腫の手術」,総説欄に中里洋一先生による「脳腫瘍のWHO新分類」をはじめ読み応えのある論文が多数掲載されている.

 学会の主催者がいろいろ悩むことの1つがその会のテーマの決定であろう.本年春の「脳卒中の外科学会」と「脳神経外科手術と機器学会」では,多少の表現の違いはあるものの,たまたま両学会とも「技術の継承」がメインテーマとなった.脳神経外科のような外科系では,内科系とちがって理論だけではものごとが片づかず,「徒弟制度」「手取り足取り」「見て盗め」などのキーワードで示されるような独特の技術の継承が大切な要素である.両学会の「技術の継承」のセッションでは,実際の手術室でのon the job training以外に,手術室の外で行うoff the job trainingの演題が多くみられた.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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