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文献概要
解剖を中心とした脳神経手術手技
弁蓋部神経膠腫の手術
著者: 渡邉学郎1 深谷親12 片山容一1
所属機関: 1日本大学医学部脳神経外科学系神経外科学分野 2先端医学系応用システム神経科学分野
ページ範囲:P.493 - P.503
文献購入ページに移動弁蓋部神経膠腫(opercular glioma)はeloquent areaである言語運動領野近傍に存在するため,その切除範囲は多大な制約を受け,神経膠腫の中でも最も摘出が困難なものの1つである.近年,脳機能マッピングやニューロナビゲーションなどの手術支援法の進歩により,術後の神経脱落症状を最小限に抑えて最大限の腫瘍摘出を遂行することが可能となりつつあり,opercular gliomaに対しても積極的にextensive surgeryが試みられるようになってきた8,9,11).
Opercular gliomaのうち,腫瘍の首座がsomatosensory cortexと断定できれば,肉眼的全摘出を目指すことができる.言語運動領野に及ぶものでは,腫瘍が口腔・顔面領域のprimary motor cortexに局在している場合には,その運動支配は両側性であるので,extensive surgeryは可能である.優位半球では言語機能温存が最大の課題となるが,後述するように,Broca areaに限定した切除であれば,必ずしも永続的失語症を引き起こすわけではなく,機能回復を見込んで切除率の向上を優先することができる.すなわち,opercular gliomaでもextensive surgeryを目指せ得る症例が少なからず存在するといえる.このextensive surgeryが可能か否かの判断は,3次元表面構造表示MRIや機能的MRIによって術前に予想し得るものである.
Opercular gliomaに対するextensive surgeryにおいては,①言語機能の温存,②皮質脊髄路障害の回避,③穿通枝の温存,の3つの問題が挙げられる.このうち,①と②に対しては,ニューロナビゲーションなどの形態情報と脳機能マッピング・モニタリングなどの機能情報を十分に活用して機能温存を図るとともに,最大限の摘出を遂行する.③は①と②にも関連する問題であるが,血管径の太い動脈の血流不全は術中モニタリングを駆使することによって探知・回避できるものの,細い穿通枝を完全に温存する方法は確立されていないのが現状である.本稿では,これらの問題点について私見を述べるとともに,opercular gliomaの手術戦略を考察する.
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