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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科36巻6号

2008年06月発行

文献概要

書評

『Critical Thinking脊椎外科』―星地 亜都司●著

著者: 小山素麿1

所属機関: 1脊髄疾患臨床研究所

ページ範囲:P.555 - P.555

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 これほど正直で役に立つ,しかも破格的な書物に出会ったことがありません.正にタイトルの『Critical Thinking 脊椎外科』がぴったりの教科書です.一度目は面白くて一気に読んでしまいました.二度目は共感する文章に黄色のマーカーで線を引きました.ほとんどの頁が黄色になりました.特に「診断学のなぞ」と「知っておきたい脊髄の解剖学的知識」には自分が今まで何回も執筆した際に“書きたくても書けなかった本音”がいっぱい詰まっており,感動しました.例えば前脊髄視床路と外側脊髄視床路を区別できないと書いたのは私の場合,還暦が過ぎてからでした.それほど教科書を執筆するときは先人の記載を変えるのには勇気がいるものでした.「近頃の若い医者は,ハンマーを持たないで画像ばかりみている」と書いておられますが,1点だけ反論をお許しいただけるのであれば,市中病院では若い医師ばかりでないと,追記させていただきたいと思いました.

 「神経所見と画像上の高位診断の整合性があるか」,「MRIで椎間板の出っ張りがあっても,うかつにヘルニアと呼んではならない」ということも非常に大切なご意見と思いました.さらに「椎弓切除術と椎弓形成術とどちらが優れているか」は日本の保険制度での点数の差でしかないと暗に指摘されていると考え,痛快な思いで読ませていただきました.その他,名文は枚挙に暇がありません.「歯突起後方偽腫瘍は摘出する必要のない疾患であって環軸椎固定術で縮小する」,「胸椎のOPLLは脊椎外科医にとって壁のごとき存在である」,「内科的疾患を嗅ぎ分ける能力が必須であり,そのような疾患を画一に鑑別できる能力があってプロといえる」,「dural AVFは胸腰椎移行部によく発生し,(中略)手術になる率が高い,この疾患もなぜか腰部脊柱管狭窄症のような腰部変性疾患として扱われ,診断が遅れることが多い.PTRの亢進を見逃さないことである」etc,etc….

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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