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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科36巻9号

2008年09月発行

文献概要

逆境に負けるな脳神経外科医

著者: 水谷徹1

所属機関: 1東京都立府中病院脳神経外科

ページ範囲:P.751 - P.752

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 産婦人科,小児科の志望者が,激務,ハイリスク,高い訴訟率などから減少し,同様に脳神経外科医の志望者が減少し始めて久しい.やりがいだけでは済まなくなってきており,“給料も同じなら,わざわざ,きつくてリスクの高い科には行きたくない”と考える医学生,研修医学生の本音の反映であろう.それはさておき,外科の面白さは,結果が“個々の術者の技量次第”という部分である.患者さんの運命は手術の成否にかかっており,それがやりがいと心地よいプレッシャーとなる.外科医は基本的に手術の技量が伸びていく過程とその達成感に,喜びを見出す人種であり,脳神経外科医は特にそうである.そのような方向を目指す若者は本当に以前より減っているのだろうか? 少なくとも脳神経外科という,自分と同じ道を目指す若者をできるだけサポートしたいと思っているし,そのための環境作りについて,僭越ながら自分で実践しようとしていることを述べさせていただく.

 第1に,若手脳神経外科医が萎縮せずのびのびと毎日の臨床,手術に従事できるために,まず,少なくとも施設でよく経験する疾患は,その施設自身の経験と治療成績に基づいたオープンな治療方針,手術方針を各医師に示すことだと思う.もちろん患者さんにお勧めし,選択権のある基準である.エビデンスやCRT(cluster randomized trial)はスタンダードな基準を決める上ではもちろん大事であるが,それのみに重きをおくと,結局,個々の術者の技量を考慮していない最大公約数的な基準になることが多い.また,数々の文献においてもdiscussionの部分の“誰かがこう言っている”という記述は,具体的なデータや写真の記載がない限り,引用文献をさらにさかのぼっていくと,出所がはっきりしない推察であったことが,いつのまにか事実であるかのような変遷を遂げていることも多い.大切なのは,患者個々の特性や,術者の技量,実績を反映させて実際の治療方針を決めていくことであると思う.例えばよく経験する脳内出血であるが,若手医師がエビデンスは知った上で,自分の持っている技量で患者さんに対してメリットがあると信じて行おうとする手術については後押しているつもりである.手術によって患者さんが早く離床,リハビリができるようになるという多少のプレッシャーも,低侵襲な手術の上達につながると思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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