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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科37巻1号

2009年01月発行

文献概要

コラム:医事法の扉

第33回 「製造物責任」

著者: 福永篤志1 河瀬斌1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部脳神経外科

ページ範囲:P.109 - P.109

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 製造物の欠陥により人の生命,身体または財産に係る被害が生じた場合には,その製造業者等は損害賠償責任を負うことがあり,これは「製造物責任法(PL法)」に規定されています.一見,われわれ医師には直接関係がないようにも思われますが,医療技術の進歩に伴い,さまざまな医薬品や医療器具(これらは「製造物」にあたります)を用いるようになったため,それらの欠陥に基づくトラブルが裁判で問題となり,医師が紛争に巻き込まれることがあります.PL法の特徴は,賠償を求めるためには,民法の原則では製造者の過失(民法709条)を立証しなければならないところ,「欠陥」という物の性状を立証することで足りるとしたもので,被害者に有利になっています.

 「製造物の欠陥」とは,製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい(PL法2条2項),「通常有すべき」とは,製造・流通当時の一般的科学技術水準を基準として判断されます.また,「欠陥」には,①製造上の欠陥(製造物が設計・仕様どおりにつくられず安全性を欠く場合),②設計上の欠陥(設計段階で十分に安全性を配慮しなかったために製造物が安全性を欠く場合),③指示・警告上の欠陥(有用性ないし効用との関係で除去し得ない危険性が存在する製造物について,その危険性の発現による事故を消費者側で防止・回避するのに適切な情報を製造者が与えなかった場合)のすべてが含まれていると理解されているようです1)

参考文献

1)野村豊弘:医療器具と製造物責任.別冊ジュリスト医事法判例百選:228-229, 2006
2)東京高裁平成14年2月7日判決.判例時報1789号, p78
3)東京地裁平成15年3月20日判決.判例時報1846号,p62
4)東京地裁平成15年9月19日判決.判例時報1843号,p118

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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