文献詳細
文献概要
コラム:医事法の扉
第44回 「誤診・見落とし」
著者: 福永篤志1 河瀬斌1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.1260 - P.1260
文献購入ページに移動一般に,医師が患者の単純X線やCT・MRIなどの画像フィルムを見て行った診断が誤っていた状態が「誤診」であり,疾患を指摘できなかった場合は「見落とし」となります.診療契約(民法656条)上,医療従事者は,善管注意義務2)(644条)を負いますから,履行補助者である医師が的確な診断をすることは,原則として,善管注意義務の1つと考えられます.そうすると,誤診・見落としは,善管注意義務違反となってしまいそうです.しかし,善管注意義務を果たしたかどうかは,診療当時の医療水準3)を基準として判断され,具体的には医師個人や診療機関に応じて期待された診療レベルに達していたかどうかが問題となります.そうすると,誤診・見落としであっても,当時の医療水準よりも高度な診断技術を要するような場合には,必ずしも善管注意義務違反に問われるわけではないということになります.
参考文献
掲載誌情報