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コラム:医事法の扉
第34回 「時効・除斥期間」
著者: 福永篤志1 河瀬斌1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.209 - P.209
文献購入ページに移動 民事上の時効とは,一定期間継続した事実状態を尊重し,当事者に所有権等の財産権を与えるか,あるいは,権利を行使しない者からその権利を消滅させる制度であり,前者を取得時効(民法162~165条),後者を消滅時効(166~174条の2)といいます.そして,時効の効果を発生させるためには,時間の経過だけではなく,「援用」という意思表示が必要となります(145条).今回は,消滅時効について検討します.
不法行為(709条)や債務不履行(415条)に基づく損害賠償請求権には,時効があります.不法行為は「損害及び加害者を知った時から3年」,債務不履行は「10年間行使しないとき」と規定されています(724条前段,167条1項).つまり,医療過誤事件では,通常当該医療行為の時点から3年あるいは10年を経過し,医療側が援用の意思表示をすれば時効となります.ただし,医療過誤訴訟は,不法行為と債務不履行の両方を請求の基礎とすることができますので(請求権の競合),3年では不法行為に基づく請求権しか消滅しません.とすると,10年以上経過しなければ訴訟を起こされる危険が抽象的には付きまとうことになりますが,実務上,3年以上経過して民事裁判が起こされることはめったにありません.
不法行為(709条)や債務不履行(415条)に基づく損害賠償請求権には,時効があります.不法行為は「損害及び加害者を知った時から3年」,債務不履行は「10年間行使しないとき」と規定されています(724条前段,167条1項).つまり,医療過誤事件では,通常当該医療行為の時点から3年あるいは10年を経過し,医療側が援用の意思表示をすれば時効となります.ただし,医療過誤訴訟は,不法行為と債務不履行の両方を請求の基礎とすることができますので(請求権の競合),3年では不法行為に基づく請求権しか消滅しません.とすると,10年以上経過しなければ訴訟を起こされる危険が抽象的には付きまとうことになりますが,実務上,3年以上経過して民事裁判が起こされることはめったにありません.
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