icon fsr

文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科37巻3号

2009年03月発行

文献概要

--------------------

編集後記

著者: 堀智勝

所属機関:

ページ範囲:P.318 - P.318

文献購入ページに移動
 本号も症例報告も含めて力作が並んでいる.まず,佐伯直勝教授の「傍鞍部腫瘍に対する内視鏡下経鼻的手術─手術症例の紹介と将来展望」はイラストも美しく,内容も充実しており読者に参考になると思われる.私もこの方面の手術に関しては並々ならない関心を持っている一人である.Jho先生が始めた内視鏡のみによる手術は種々の発展性を持っており,近い将来,内視鏡のみの手術時代の到来を予想させたのであるが,私は内視鏡支援経鼻下垂体手術にこだわっている.最近東京女子医大のこの部位の手術の成績をまとめてみたが,内視鏡のみの成績に比べても遜色ないかそれ以上の成績を上げることができたと自負している.内視鏡の利点,顕微鏡の利点を併せて手術するのが最も合理的な手術法ではないかと今も考えている.世界の名だたる内分泌脳神経外科医は内視鏡のみの手術を取り入れていないと言っても過言ではない.

 この種の手術で最も重要なのは,ホルモン産生腫瘍では治癒基準を満たす症例の増加を図り,手術成績を上げ,正常下垂体組織の損傷を可及的に押さえることで,これが内分泌内科医あるいは患者さんからの要望でもある.この意味で内視鏡のみの手術成績が内視鏡支援経鼻下垂体手術成績を凌駕しない限り,現在でも手術機器も画像の質も手術顕微鏡は内視鏡よりも優れていると言わざるを得ない.Jho先生始め,多くの内視鏡のみの術者の手術成績が顕微鏡併用の手術成績を超えたと発表されてはいないと思う.傍鞍部の腫瘍,例えば鞍結節髄膜腫の手術でも,経鼻手術で手術が可能であることは理解できるが,全摘率,再発率,合併症の比較で経鼻手術が優れているという科学的発表はないと思う.一番大事なことは患者さんに優しい手術を行うことであり,種々の髄液漏防止策が発表されているが,この面でも内視鏡のみの手術が優れているとは思えないし,却って危険度は大きいのではないかと思っている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?