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『脳科学のコスモロジー』幹細胞,ニューロン,グリア―藤田 晢也,浅野 孝雄●著 フリーアクセス
著者: 兼本浩祐1
所属機関: 1愛知医大・精神科学
ページ範囲:P.666 - P.666
文献購入ページに移動前半ではグリア論の展開におけるドラマチックな歴史が,その歴史の形成に実際に立ち会った当事者の立場から極めて生き生きとした臨場感を持って活写されている.神経細胞発生学の父,偉大な解剖学者,ウィルヘルム・ヒスは,神経組織の発生は初めからグリアおよびニューロンのいずれに分化するかが前もって決定されている二種類の異なった母細胞から成り立っているという二元論を展開したという.しかし,ヒス自身はさすがに慧眼であり,自説の矛盾を指摘する反論にも耳を傾け,自説を修正しようと試みる懐の深さを死の直前まで示していたが,ヒス亡き後,機械的に早い時期のヒスの説をそのまま金科玉条としてしまった後世のエピゴーネン達は,単一の母細胞からグリアの原基もニューロンの原基も生ずるというグリアの一元的マトリックス起源説を長期間にわたり圧殺してしまう.
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