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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科38巻1号

2010年01月発行

雑誌目次

近未来

著者: 峯浦一喜

ページ範囲:P.3 - P.4

 日食が46年振りに国内で観察された.皆既日食が見られる奄美大島には熱狂的な観察者が訪れ,人口が倍化した島もあるほどであった.かたや京都でも雲間から部分日食を見ることができた.前回の日食では,次第に空が夕暮れのように薄暗くなり,下敷き,あるいは煤の付着した硝子で観察したことが記憶にある.現在,これらの観察方法は日食網膜剝離を惹起する危険性があり非常識であると言われる.皆既日食に限らず,かつての常識が,いつのまにか非常識になることは驚くに値しないほど多くの分野でみられる.「変わることこそ変わらないこと」である.

 大学も例外ではない.国公立大学は法人化し,私立大学も意欲的に改革が進められている.近年,いくつかの大学の卒業式でスピーチを聞く機会があった.卒業式はcommencementの別称の通り,「終われば始まる」.学生が大学から社会に飛び出すスタートラインである.

総説

特発性正常圧水頭症:最近の動向

著者: 石川正恒

ページ範囲:P.7 - P.14

Ⅰ.はじめに

 わが国では高齢化が急速に進行しており,社会のさまざまの局面でその対応が迫られている.特発性正常圧水頭症(iNPH:idiopathic normal pressure hydrocephalus)は高齢者にみられ,歩行・認知・排尿の機能障害を呈し,髄液シャント術にて症状の軽減が得られる症候群である.1965年にHakimら1)がはじめて報告して以来,“治療可能な認知症”として注目を浴びたが,くも膜下出血や髄膜炎後などの二次性正常圧水頭症とは異なり,iNPHは有効例が少ないことやシャント合併症が多いために手術適応外としてしまい,その後は関心を持たれなくなったという歴史がある.この“暗黒の30年”とでも呼ぶべき歴史の背景には,診断が適切でなかったことやシャント機能を至適な状態に維持できなかったことがあったと考えられる.近年,診療ガイドラインの公表や圧可変式差圧バルブの使用といったことにより,再びiNPHが注目されるようになっている.しかし,多くの未解決の問題が残っており,これらを1つ1つ検討し解決することが,高齢化社会にむけての脳神経外科医の責務の一端と考えられる.

 本邦の診療ガイドラインは2004年に公表された4,9)が,翌年には国際診療ガイドラインが公表されている7,11).両者は同じevidence-based medicineの方法に準じて作成されているが,いくつかの点で違いがみられる.その違いは,iNPHの定義に関する問題や,また,検査は診断精度優先か否かといった問題に由来している.本稿では,本邦と国際の診療ガイドラインの比較を通してiNPHの定義や診断に関する議論に触れるとともに,最近検討がすすみつつあるiNPH関する本邦初の共同研究である“Study of idiopathic normal pressure hydrocephalus on neurological improvement:SINPHNONI”の結果の一部も交えて,iNPH診療の最近の動向について述べることとする.

解剖を中心とした脳神経手術手技

舌下神経シュワン細胞腫の手術戦略

著者: 吉田一成

ページ範囲:P.17 - P.23

Ⅰ.はじめに

 舌下神経から発生するシュワン細胞腫は稀ではあるが,その進展様式から手術治療を考えたときに,非常に興味深い.本腫瘍は,頭蓋内,舌下神経管内,頭蓋外に進展し得る.舌下神経管は,後頭顆を横切っているという解剖学的特徴がある.また,舌下神経に限ったことではないが,脳神経は,頭蓋内では,epineuriumに覆われておらず,舌下神経管に入るところで,硬膜,くも膜に連なり,epineurium,perineuriumに覆われるようになる.これらの解剖学的特長は,舌下神経シュワン細胞腫の手術戦略を考える上で,極めて重要である.

 前述のように,舌下神経管は後頭顆を横切っている.腫瘍が舌下神経管内で発育すると,舌下神経管が拡張する.これはつまり,後頭顆自体を破壊することを意味する.これまでに,本腫瘍に対する手術戦略がいくつか報告されているが,後頭骨環椎関節の安定性に関しては,ほとんど議論されていなかった4,7-10).われわれは最近,後頭骨環椎関節の安定性を考慮した,舌下神経シュワン細胞腫の手術戦略を報告した5).本稿では,舌下神経シュワン細胞腫の治療方針,特に舌下神経管内の腫瘍に対する手術戦略について,condylar fossaを経由する他のアプローチと比較して解説する.

研究

内頚動脈閉塞による広範囲脳梗塞に対する側頭葉前方内側切除を伴う外減圧術の治療成績

著者: 山崎貴明 ,   上山憲司 ,   大里俊明 ,   佐々木雄彦 ,   中川原譲二 ,   中村博彦

ページ範囲:P.25 - P.32

Ⅰ.はじめに

 中大脳動脈灌流領域を含む広範囲脳梗塞のうち“malignant middle cerebral artery(MCA)infraction”は,内頚動脈もしくはMCA proximalの主に塞栓性閉塞により,急速に進行する致死的脳腫脹で,78%がuncal herniationを来すとされている6).そのmortalityは80%に及ぶ極めて予後不良の疾患である1,6,7,23).特に内頚動脈閉塞は,近年行われるようになったrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の効果も乏しく17),その梗塞の範囲は中大脳動脈の灌流領域のみならず,前大脳動脈,後大脳動脈の灌流領域といった多血管領域に渡ることもある重症脳梗塞の1つである.われわれは,内頚動脈閉塞による広範囲脳梗塞に伴う著明な脳腫張に対し,救命目的で硬膜形成を伴う外減圧術に,内減圧として側頭葉前方および内側切除(anterior and medial temporal lobectomy:AMTL)を加えた内外減圧術を行ってきたので,その治療成績につき報告する.

軽症小児頭部外傷症例における頭部3D-CT画像の有用性と注意点

著者: 松本佳久 ,   苗代弘 ,   魚住洋一 ,   景山寛志 ,   鷲見賢司 ,   長谷公洋 ,   南村鎌三 ,   藤井和也 ,   戸村哲 ,   豊岡輝繁 ,   大角篤司 ,   長田秀夫 ,   都築伸介 ,   島克司

ページ範囲:P.35 - P.40

Ⅰ.はじめに

 軽症小児頭部外傷は,救急外来で頻度の高い傷病であるが,中には重症化する症例を認めることもある.Lloydらは,意識消失や嘔吐などのエピソードや神経学的異常所見が存在すれば,感度91%,陰性的中率97%で頭蓋内損傷を同定可能と報告している5).しかし,特に乳幼児症例では成人症例と比べ,病歴や神経学的異常所見の把握が困難である3,5)

 来院時の神経学的所見が重篤でなくとも,頭蓋内損傷は存在し得る.Rivaraらは,来院時GCS(Glasgow Coma Scale)が13点以上でも,小児頭部外傷症例の31%にCT画像で異常所見を認めている7).Davisらは,来院時GCSが15点でも,意識消失のエピソードを認めた症例では,7.5%で頭蓋内出血像を認めている2)

 頭蓋内損傷の可能性がある場合,画像診断を要することになるが.この中で,頭蓋骨骨折は頭蓋内損傷の危険因子とされる.頭部単純X線画像で骨折像が認められる場合は,頭部computed tomography(CT)を撮影するなどの精査が必要である3,9).一方,頭部単純X線画像の有効性を疑問視する報告もある5).また,頭部CT軸位断のみでは撮影画像と平行に近い角度で走る線上骨折像を見逃す恐れがある10).いずれにせよ,頭蓋内損傷の有無や骨折像を簡便に確認できる画像が求められる.

 近年,multislice CTの利用により,体動の多い小児症例でも短時間で頭部単純CT撮影ができるようになった.また,画像ソフトにより頭蓋骨の3次元CT(3D-CT)構成も容易にできるようになった.

 われわれは,軽症小児頭部外傷症例に対して頭部CT後に3D-CTを構成することで,頭蓋内異常所見のみならず,頭部単純X線撮影に比べて容易に骨折像を指摘することができた.しかし,3D-CT読影上の注意点が存在したため,文献的考察を加えて報告する.

症例

脳動脈瘤塞栓術中に逸脱したコイルが,後に血管狭窄を引き起こした1例

著者: 目黒俊成 ,   佐々木達也 ,   春間純 ,   田邉智之 ,   村岡賢一郎 ,   寺田欣矢 ,   廣常信之 ,   西野繁樹

ページ範囲:P.41 - P.45

Ⅰ.はじめに

 脳動脈瘤コイル塞栓術中に,瘤内に離脱したコイルが親血管内に逸脱してしまうことはしばしば経験される合併症である.親動脈へのわずかな突出であればそのまま経過観察することが多いと思われるが,親動脈に逸脱したコイルが長期的にどのような経過を辿るのかはあまり知られていない.

 今回われわれは,破裂脳動脈瘤塞栓術中に瘤内に離脱したコイルが動脈瘤外に逸脱し,回収せずに経過観察としたところ,半年後に血管狭窄を起こした症例を経験したので報告する.

動脈瘤塞栓術後に脳血管攣縮を来した未破裂内頚動脈瘤の1例

著者: 緒方敦之 ,   鈴山堅志 ,   古賀壽男 ,   高瀬幸徳 ,   松島俊夫

ページ範囲:P.47 - P.51

Ⅰ.はじめに

 脳血管攣縮の多くは,くも膜下出血発症後4~14日の間に生じ,くも膜下出血患者の予後を左右する重大な病態であり,その治療にはしばしば難渋する.脳血管攣縮の原因としては血液分解産物が血管壁に作用して生じるとされている.今回われわれは,未破裂動脈瘤の塞栓術後に広範囲な無症候性脳血管攣縮を生じた1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

後頭蓋窩から頚静脈孔を通り頚動脈周囲に進展するgranulocytic sarcomaの1例

著者: 馬場史郎 ,   松尾孝之 ,   石坂俊輔 ,   森川実 ,   陶山一彦 ,   永田泉

ページ範囲:P.53 - P.59

Ⅰ.はじめに

 Granulocytic sarcomaは,骨髄球系前駆細胞よりなる骨髄以外に発生する腫瘍である.稀な腫瘍であり通常,急性骨髄性白血病(AML:acute myelogenous leukemia)の診断時や経過中にみられるが,AMLの診断に先行してみられることもある.好発部位は骨,骨膜,軟部組織,リンパ節および皮膚であり,頭蓋内での発生は稀である.今回われわれは,後頭蓋窩から頚静脈孔を通り頚動脈周囲に進展した極めて稀な症例を経験し,またMRI拡散強調画像(DWI:diffusion weighted image)が術前診断に有用であったため,文献的考察を加えて報告する.

6年間の囊胞形成過程を観察し得たgangliocytomaの1例

著者: 広田健吾 ,   谷茂 ,   大渕英徳 ,   秋山真美 ,   萩原信司 ,   田中則子 ,   中村聡 ,   久保長生 ,   糟谷英俊

ページ範囲:P.61 - P.66

Ⅰ.はじめに

 Gangliocytomaは中枢神経系に生じる稀な腫瘍であり,WHO(World Health Organization)ではneuronal and mixed neuronal-glial tumorsに分類される1).脳腫瘍全国統計によればgangliogliomaを含めてもわずか0.4%の頻度であり症例報告も少ない5,6,9).今回われわれは,6年間にわたり画像の変化を観察し得た頭頂葉のgangliocytomaの1例を経験したので報告する.

Angioguard® XP展開部に生じた頚部内頚動脈狭窄症の1例

著者: 竹本光一郎 ,   岩朝光利 ,   大川将和 ,   安部洋 ,   井上亨 ,   卯田健

ページ範囲:P.67 - P.71

Ⅰ.緒言

 2007年9月より頚動脈ステント留置術(CAS:carotid artery stenting)が薬事承認され,頚動脈内膜剝離術(CEA:carotid end arterectomy)の高リスク群に対する治療法として,今後さらなる普及が予想される.一方,今回薬事承認された機材はAngioguard® XP filter wire protection(Cordis)とPRECISE® stent(Cordis)のみであり,本邦でのCASにおける治療環境は従来頻用されていたballoon protection systemからfilter protection systemへ急激に移行することとなった.今回われわれはAngioguard® XPを使用したCAS後,filter展開部に限局性高度狭窄を生じた稀な症例を経験したので,その原因について若干の文献的考察を加え報告する.

無名動脈狭窄症に対する経皮的血管形成術により記憶障害が改善した1例

著者: 根木宏明 ,   石原正一郎 ,   石原秀章 ,   金澤隆三郎 ,   神山信也 ,   山根文孝 ,   大沢愛子 ,   前島伸一郎

ページ範囲:P.73 - P.78

Ⅰ.はじめに

 無名動脈の狭窄においては,鎖骨下動脈・総頚動脈両者の血流低下が生じる.鎖骨下動脈の血流低下では,鎖骨下動脈盗血症候群が有名で,鎖骨下動脈に狭窄を呈した際,疎血状態となった患側椎骨動脈,上腕動脈の血流を確保するために対側椎骨動脈の血流が患側を逆流して供給される血行動態となる.症状としては,椎骨動脈の虚血に起因する眩暈・眼症状・不安定感・失神・後頚部痛などや,上腕動脈の阻血に起因する易疲労感・脱力・冷感・しびれ・血圧左右差などが知られている.無名動脈に狭窄を来した場合にも同様の症状を来すことが知られている2)が,われわれが検索した限り,高次脳機能障害に関する報告は少ない.今回われわれは,記憶障害を主症状とした無名動脈狭窄症に対して経皮的血管形成術(PTA:percutaneous transluminal angioplasty)を施行し,症状の改善が得られた1例を経験したので報告する.

連載 脳神経外科疾患治療のスタンダード

14.下垂体腺腫の治療:最近の話題

著者: 泉本修一 ,   有田憲生

ページ範囲:P.79 - P.89

Ⅰ.先端巨大症の治癒基準

 先端巨大症の治療成績は,開頭術による摘出,放射線治療が行われていた時代と比較し,経蝶形骨洞手術の導入,普及により飛躍的に向上した.その後さらにoctreotide製剤,特に徐放性製剤の開発により手術で正常化できなかった症例の薬物治療成績は改善している.

 この領域における最近のトピックのひとつは,治癒基準の見直しである.従来,成長ホルモン産生下垂体腺腫に対する手術成績は,治癒判定を術後成長ホルモン基礎値10ng/ml以下3,28,29),5ng/ml以下2,7,16,31,33,43,46)などの基準値を用いて報告されてきた(Table 1).臨床例の経験では,術後5ng/ml以下に成長ホルモン値が低下すると,直ちに発汗が減少,頭痛も消失,短期間のうちに手指や足趾の軟部組織の分厚さの減少などが観察できる.しかし,多数の先端巨大症症例の長期経過を追跡した欧米の内分泌医の解析によると,このような治癒基準に達した先端巨大症患者の長期生存率は一般人口に比較して有意に不良である.統計学的には,術後任意に測定された成長ホルモン値が2.5ng/ml以下に低下していれば長期生存率は一般人口と同等であることが示された20,50)

報告記

第14回世界脳神経外科学会報告記(2009年8月30日~9月4日)

著者: 斉藤延人

ページ範囲:P.90 - P.91

 第14回世界脳神経外科学会(World Congress of Neurological Surgeons)が,2009年8月30日(日)~9月4日(金)まで,米国BostonのHynes Convention Centerで開催された.Robert C. Heros会長のもと,Scientific Program CommitteeのJacques J. Morocos委員長とNelson M. Oyesiku副委員長を中心に学術プログラムが構成され,86カ国以上から1,700を超える演題数の学会となった.日本からも多数の先生方が参加された.

 会場の入り口ではコンピュータの起動画面のような看板が,各国からの参加者を歓迎していた(写真1,2).このコンベンションホールは,天井が高いのがとても印象的な会場であった.各発表は,座長が右手,演者が左手に対峙する日本でおなじみの景色ではなく,中央に演者と座長が並んで発表するスタイルである(写真3).筆者も脳幹手術のセッションで発表があったが,直前に演者のキャンセルがあり,急遽座長が演者に回り,予定のなかったBertalanffy先生が座長役を引き受けてくださった.各演者はあまり時間を気にせずに,じっくりと話していたのが印象的だった.

コラム:医事法の扉

第45回 「くも膜下出血の見落とし」

著者: 福永篤志 ,   河瀬斌

ページ範囲:P.92 - P.92

 今回は前回の続きで,くも膜下出血(SAH:subarachnoid hemorrhage)の見落とし事例について検討します.

 初診医は,脳神経外科医よりもむしろ内科医や総合診療科医,救急科医などのほうが多いでしょう.特に,夜間当直医は注意が必要です.確かに,実際の判例をみますと,脳神経外科医が見落としで訴えられた事例は少ないのですが,診断を脳神経外科医にコンサルトするケースが増加しているので,依頼された場合には特に気をつけなければなりません(法的関係については「他科診療依頼」1)参照).

書評

『初めて学ぶ脳神経疾患の漢方診療―おもな漢方処方と治療報告』―宮上 光祐●著 フリーアクセス

著者: 松村明

ページ範囲:P.32 - P.32

 本書の序文にも書かれているが,「西洋医学」を学んできた者にとって「漢方医学」は個人の体質・特徴を重視した全人的医療であることからやや理解しにくい面がある.特に全身的な診察の後に「証の決定」を行ってから薬剤を決定していくプロセスは西洋医学にはないものである.

 一方,日本では「漢方」は古くから取り入れられており,西洋医学のEvidence based Medicineとは異なり,Experience based Medicineであるとも言われている.すなわち,個人の医師の経験に基づいて患者さんへの投薬を決定し,病態の変化に応じて薬の処方をきめ細かく変えていくような手法なども使われている.

『神経文字学』読み書きの神経科学―岩田 誠,河村 満●編 フリーアクセス

著者: 下條信輔

ページ範囲:P.51 - P.51

 この本の帯には「時空を超えたヒトと文字の神秘」とある.惹句にしてもいかにも大げさな,と評者は最初思ったが,本書の中身に触れた今は「まったく同感」としか思わない.ヒトの脳と,文字という文化の間には,実にそれだけの豊かな内容が広がっているのである.

 この本は,文字にかかわる神経心理学と神経科学の知見を,各テーマごとにトップの専門家を擁して編んだアンソロジーである.初学者にとって最適な入門書であるとともに,専門家や隣接分野の研究者にとっても最新のデータをいち早く参照できるハンドブックとして有用である.神経文字学という新しい分野を打ち出す上で,教科書としての決定版をめざした節もある.

『脳脊髄のMRI 第2版』―細矢 貴亮,宮坂 和男,佐々木 真理,百島 祐貴●編 フリーアクセス

著者: 嘉山孝正

ページ範囲:P.59 - P.59

 初版から10年が経過し「脳脊髄のMRI」が第2版へ改訂された.

 この10年間でMRIは,拡散強調画像,磁化率強調画像,拡散テンソル画像をはじめとする新たな撮像法が瞬く間に広く一般化され,さらには3T MRIなど,より高磁場の機器も広まり,まさに日進月歩で進歩している感がある.本書でも,初版後に普及しているこれらの最新画像をもとに改訂され,正常解剖にはすべて3T MRIによる美しい詳細な画像が掲載されており,さらには最新の拡散テンソル画像による詳細な白質線維の描出もされている.これら最近の画像診断の進歩による疾患の病態の解明,さらには治療への貢献には目覚ましいものがあり,すべての神経疾患においてMRIはもはや必須と言える画像検査になっている.本書は,各疾患の代表所見を数多くの美しいMRI画像で網羅しており,真に難しい鑑別診断に十二分に役立つ内容となっている.

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編集後記 フリーアクセス

著者: 若林俊彦

ページ範囲:P.100 - P.100

 歴史的な転換期となった2009年が終わり,新たな世界の構築に胸躍る2010年が始まった.その巻頭言を飾る峯浦一喜先生の「扉」に描かれた「近未来」には,脳神経外科医療の将来を託す若き医師達への重厚な想いが込められている.「変わることこそ変わらないこと」,そしてその変化の契機となる偶然あるいは必然的な巡り合わせの数々の実証を己の経験を交えて解説されている.脳神経外科の26年後は果たしてどのような世界を醸し出しているのか,初夢は宇宙を巡り,一筋の光明を手掛かりに新天地を目指す.まさに開拓者の心境である.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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