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連載 臨床神経心理学入門
第6回 脳腫瘍
著者: 鶴谷奈津子1
所属機関: 1昭和大学医学部神経内科
ページ範囲:P.1057 - P.1063
文献購入ページに移動本稿では脳腫瘍における高次脳機能障害について,症例報告を中心に概説する.脳腫瘍による症状は大きく分けて2つある.1つは,頭痛,嘔吐,視力障害,けいれん発作などの一般症状である.これらは腫瘍の増大,浮腫,静脈還流障害,髄液循環障害などに起因して頭蓋内圧が亢進することにより出現する.もう1つは腫瘍による脳組織の圧迫や損傷が原因で生じる局所症状である.脳腫瘍における高次脳機能障害を一括して論ずることは困難であるが7),脳は部位ごとに機能が異なるため,どのような症状が生じるかは腫瘍が発生した部位によってある程度予測できる.例えば運動野が障害されれば病変と反対側の運動麻痺が生じ,視覚野が障害されれば反対側の半盲を来す.さらに,頭頂葉では計算や読み書き・空間認知の障害,側頭葉では記憶や物体の認識の障害,前頭葉では性格変化・意欲低下などが生じる.そのほか,脳腫瘍の組織像,経過,腫瘍周囲の浮腫の程度なども局所症状に影響を及ぼす.したがって,脳腫瘍を罹患した患者がどのような症候を呈するかはケースバイケースと言える.以下では,脳腫瘍の中でも代表的な神経膠腫および髄膜腫の症例をとりあげ,それらの病変と高次脳機能障害を紹介する.
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