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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科38巻11号

2010年11月発行

文献概要

連載 臨床神経心理学入門

第6回 脳腫瘍

著者: 鶴谷奈津子1

所属機関: 1昭和大学医学部神経内科

ページ範囲:P.1057 - P.1063

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Ⅰ.はじめに

 本稿では脳腫瘍における高次脳機能障害について,症例報告を中心に概説する.脳腫瘍による症状は大きく分けて2つある.1つは,頭痛,嘔吐,視力障害,けいれん発作などの一般症状である.これらは腫瘍の増大,浮腫,静脈還流障害,髄液循環障害などに起因して頭蓋内圧が亢進することにより出現する.もう1つは腫瘍による脳組織の圧迫や損傷が原因で生じる局所症状である.脳腫瘍における高次脳機能障害を一括して論ずることは困難であるが7),脳は部位ごとに機能が異なるため,どのような症状が生じるかは腫瘍が発生した部位によってある程度予測できる.例えば運動野が障害されれば病変と反対側の運動麻痺が生じ,視覚野が障害されれば反対側の半盲を来す.さらに,頭頂葉では計算や読み書き・空間認知の障害,側頭葉では記憶や物体の認識の障害,前頭葉では性格変化・意欲低下などが生じる.そのほか,脳腫瘍の組織像,経過,腫瘍周囲の浮腫の程度なども局所症状に影響を及ぼす.したがって,脳腫瘍を罹患した患者がどのような症候を呈するかはケースバイケースと言える.以下では,脳腫瘍の中でも代表的な神経膠腫および髄膜腫の症例をとりあげ,それらの病変と高次脳機能障害を紹介する.

参考文献

1)荒木重夫,河村 満,塩田純一,笠畑尚喜,杉田幸二郎:脳弓病変による純粋前向性健忘.臨床神経34:1031-1035, 1994
2)Assal G:Wernicke's aphasia without amusia in a pianist. Rev Neurol (Paris) 129:251-255, 1973
3)Delay J, Brion S:Le Syndrome de Korsakoff. Brain 114:2611-2618, 1969
4)Gaffan EA, Gaffan D, Hodges JR:Ammnesia following damage to the left fornix and to other sites:A comparative study. Brain 114:1297-1313, 1991
5)Judd T, Gardner H, Geschwind N:Alexia without agraphia in a composer. Brain 106:435-457, 1983
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7)大塚 顕:脳腫瘍例の神経心理学的症候─とくに失語を中心に─.神経心理学5:22-32, 1989
8)塩田純一,河村 満:脳弓・脳梁膨大後域(辺縁葉後端部)病変.No To Shinkei 47:443-452, 1995
9)Swanson LW, Cowan WM:Hippocampo-hypothalamic connections:origin in subicular cortex, not Ammon's horn. Science 189:303-304, 1975
10)Werthem N:The amusia. In:Vinken PJ and Bruyn GW, eds. Handbook of Clinical Neurology, Vol. 4, Amsterdam, North-Holland Publishing, pp195-261, 1969

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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