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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科38巻3号

2010年03月発行

文献概要

書評

『下垂体腫瘍のすべて』―寺本 明,長村 義之●編

著者: 森昌朋1

所属機関: 1群馬大大学院・内科学

ページ範囲:P.298 - P.298

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 脳腫瘍患者ではその占拠性病巣のために,脳細胞障害による種々の脳機能低下が生来する.一方,下垂体腫瘍は脳腫瘍に属するが,下垂体には種々の内分泌ホルモン産生細胞が局在する特徴を有することより,下垂体腫瘍患者では下垂体由来のホルモン過剰分泌による下垂体機能亢進症を呈することが多い.また,逆に非機能性下垂体腫瘍の増大により下垂体に局在するホルモン産生細胞が圧迫障害され,下垂体機能低下症で発見される患者も存在する.下垂体細胞由来のホルモンとしてプロラクチン(PRL),ACTH,GH,LH,FSH,TSH,Oxytocin,ADHなどが挙げられ,下垂体から分泌されたこれらのホルモンは末梢血中に放出されて,全身に分布する標的臓器に達して生理作用を発揮する.また,これらの下垂体ホルモンは視床下部に存在する視床下部ホルモンによって,合成と分泌が制御されている.下垂体ホルモンのなかで生命維持に必要なホルモンはACTHとTSHであるが,他のホルモンも日常の恒常的機能維持には必須であり,下垂体ホルモン分泌の過剰や低下により種々の症状や臨床所見が生ずる.また,下垂体機能亢進症を惹起する最も頻度の高い腫瘍はPRL産生腫瘍である.剖検時に下垂体検索を行った報告によると,腫瘍径が1cm未満のmicroadenomaを含めた際のPRL腫瘍の女性での発見率は25%以上の頻度であるという報告がなされており,日常の一般臨床を行う上でも,下垂体疾患は大変身近な存在であると言える.

 さらに,わが国において最近,間脳下垂体腫瘍に基づく下垂体機能障害は特定疾患医療給付の対象疾患として認定された.このことは,下垂体疾患に悩む患者さんにとっては朗報であり,診療現場に携わる医師にとっては治療が行いやすくなった利点がある.一方,その反面医師は,下垂体疾患に関するupdateを常に把握して臨床にあたる責任も課せられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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