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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科38巻4号

2010年04月発行

雑誌目次

バランス感覚

著者: 黒岩敏彦

ページ範囲:P.315 - P.316

 2009年は長期間続いた政権政党が交代するという大きな出来事がありました.海外の新聞でも大きく取り上げられていたのを,ちょうどWFNS出席中にボストンで見ましたが,メディアなどの影響も大きかったのか予想以上に極端な結果でした.与野党が拮抗した緊張感の中で政策を論議し決定していくのが理想ですし国民のためにもベストだと思いますが,選挙前までの与党は見るも無残な結果に終わり,正に雪崩を打った状況でした.これでは新与党が遠慮気兼ねなく無理を押し通し,政権政党が変わっただけで状況は変わらないかもしれないと不安になります.多くの人が一斉に同じ方向を向き,何かあれば過剰に持ち上げ,次の瞬間には徹底的に袋叩きという最近の風潮は,あまり感心できることとは思えません.この原稿を書いている今も,昨日までの世界的ヒーローであったタイガー・ウッズの惨めなまでの報道が続いています.彼の発した過去の名言も今や失笑の的です.もちろん彼に原因があるわけですが,報道のどこまでが真実か私達には知る由もありません.私達が論文を書くときは,データを収集して慎重に検証し,多くの文献にあたり,推敲を重ねて,と随分時間がかかるものですが,メディアは真偽のほどの定かでない内容を次々と報道し,その結果に対して責任を取ったという話はほとんど聞きません.周囲の意見に惑わされず,私達個々人における偏らない情報の取捨選択が重要な時代であり,自分の体験しか信じなければ極端に世界が狭くなりますし,何でも信じてしまえば大変な混乱を来すことになります.

総説

三叉神経痛に対する脳神経減圧術

著者: 畑山徹 ,   大熊洋揮

ページ範囲:P.319 - P.326

Ⅰ.はじめに

 顔面に耐え難い発作痛を生じる三叉神経痛は,視床痛,幻肢痛などとともに「三大疼痛」として挙げられるほど患者が受ける苦痛は甚大である.もとより,感覚器が集中する顔面は知覚も鋭敏であり,四肢や体幹より疼痛に対する感受性は高い.さらに,三叉神経痛は食事や発語など生活動作によって容易に誘発されるため,生命に関わらない病気でありながら,患者は「このままでは生きていけない」と感じるほど深く思い悩んでいることも多い.

 それに対して,1970年代にJannetta 12)が根治療法として手術顕微鏡下でのmicrovascular decompression(MVD)を確立し,本邦でも近藤ら15,16),福島ら5)によってその高い治療効果が示され,多くの患者に福音がもたらされた.ただし,長期的な観察での完全治癒率は70~85%程度であり(Table 1)2,15,19,24,29),手術によっても100%治癒できる疾患ではない.また,服薬や放射線治療11)などの選択肢もあり,疼痛の許容範囲は本人にしか判断できないことから,治療の選択に際しては,「痛みに妨げられない生活」を取り戻すための最善の手段を患者ごとに検討する必要がある.

 したがって,三叉神経痛はどの治療法に対しても理解を持つ脳神経外科医が積極的に治療に関与すべき疾患と考えられ,2008年の本誌においても,松島ら21)が疾患の特徴と治療の現況について,藤巻4)が解剖を基礎とした手術手技について,林ら11)がガンマナイフ治療と薬物療法について,それぞれ優れた報告を行っている.そこで本稿でも,三叉神経痛の治療が推進される一助となるべく,MVDを実施する際に有用な知見を概説する.

テクニカル・ノート

硬膜外前床突起一塊切離整復法

著者: 茂野卓 ,   熊井潤一郎 ,   堀川弘吏 ,   苗村和明 ,   相原功輝 ,   石川治 ,   西堂創 ,   坂本真幸 ,   大宅宗一 ,   遠藤賢

ページ範囲:P.329 - P.334

Ⅰ.はじめに

 浅く広い術野を得るために,頭蓋底手術は日常のものとなってきた.前床突起切除はその方法の1つである.前床突起切除の硬膜外切削には,安全で迅速な低侵襲手技が求められる.われわれは従来のドリルで削る概念を一新し,前床突起を安全に一塊として切り取り整復する手術法を開発した.本法は,ドリリングより短時間で,かつドリルの熱による視神経損傷を起こさない.また,一過性動眼神経麻痺あるいは術後の眼球陥凹などを生じさせないといった利点もある.低侵襲手術にかなう高付加価値手術(value-added surgery)である.

脳神経外科領域における手術用拡大鏡(ルーペ),手術用ライトの使用経験

著者: 河野健一 ,   宇賀愛 ,   森恩 ,   芳賀整 ,   濱田康宏 ,   詠田眞治

ページ範囲:P.335 - P.339

Ⅰ.はじめに

 手術用拡大鏡(ルーペ)と手術用ライトは心臓血管外科領域で頻用されているが,脳神経外科領域での使用は本邦では少ないと思われる.当施設では脳神経外科医師6名全員がルーペを有し,術者と助手がルーペと手術用ライトを装着して手術を行っており,その使用経験を報告する.

症例

特発性解離性浅側頭動脈瘤の1例

著者: 吉岡史隆 ,   萩原直司 ,   安陪等思 ,   小島和行 ,   渡邊光夫 ,   田渕和雄

ページ範囲:P.341 - P.345

Ⅰ.はじめに

 浅側頭動脈瘤は臨床の場でときに経験する疾患の1つである.多くは外傷後2~6週後に自覚され9),偽性動脈瘤の形態を呈することが多い1,3,4,13,14).今回われわれは,明らかな外傷歴がない特発性解離性浅側頭動脈瘤の1例を経験した.極めて稀な症例であり,興味深い血管造影所見を呈したのでこれを報告する.

くも膜下出血で発症し,原発性アルドステロン症を認めた多発脳動脈瘤の1例

著者: 澤田佳奈 ,   前原健寿 ,   稲次基希 ,   鳥山英之 ,   岡田朋章 ,   成相直 ,   青柳傑 ,   土井賢 ,   大野喜久郎

ページ範囲:P.347 - P.351

Ⅰ.はじめに

 原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は,副腎皮質球状層における原発性病変によりアルドステロンの過剰分泌を来す結果,二次性高血圧,低カリウム血症を呈する疾患である.近年の報告では全高血圧患者の5~10%程度を占め,従来考えられてきたよりもかなり高頻度に存在することが明らかにされている13).PAに伴う高血圧は本態性高血圧や他の原因による二次性高血圧に比べて臓器障害は少なく予後のよい高血圧と考えられてきたが,最近,比較的軽度な高血圧でも脳血管障害の合併が多いことが報告され,注目を集めている4,10).TakedaらはPA 224例と,性・年齢をマッチさせた224例の本態性高血圧を比較し,脳出血発症頻度はPA患者で有意に高かったと報告している12).またPA症例ではしばしば脳血管障害を繰り返すため6,8),難治性高血圧の治療ではPAの診断は重要な位置を占めるようになった.

 今回われわれはくも膜下出血で発症し,多発脳動脈瘤を認めたPAの1症例に対して,動脈瘤クリッピング術および副腎摘出術を行い良好な結果を得ることができた.本症例に対する治療戦略およびPAにおける脳血管障害について報告する.

内シャント挿入前にプラーク遠位端の剝離処理を先行させた頚動脈内膜剝離術の1例

著者: 遠藤英樹 ,   上山憲司 ,   髙田英和 ,   渡邉健太郎 ,   杉尾啓徳 ,   本庄華織 ,   佐々木雄彦 ,   中川原譲二 ,   中村博彦

ページ範囲:P.353 - P.358

Ⅰ.はじめに

 当院では頚動脈内膜剝離術(carotid endarterectomy:CEA)を施行する際に,頚動脈遮断に伴う脳虚血を可能な限り最小限にする目的から全例で内シャントを使用している3).内シャントを挿入する際には脳塞栓症を引き起こす危険性があり2,6),プラーク遠位端の確認が重要である.今回われわれは,プラーク遠位端が動脈切開遠位部より末梢に及んでいたため,先行して顕微鏡下にプラーク遠位端の剝離処理を行い,その後に内シャントを挿入してCEAを施行した1例を経験したので報告する.

脳梗塞にて発症した脳動脈解離と思われた2小児例

著者: 堀恵美子 ,   福田修 ,   栄楽直人 ,   高橋千晶 ,   濱田秀雄 ,   林央周 ,   遠藤俊郎

ページ範囲:P.359 - P.364

Ⅰ.はじめに

 本邦における小児閉塞性脳血管障害の特徴としては,諸外国に比べもやもや病の発生頻度が高いことが挙げられる.一方,非もやもや病は,松本ら4)が行った全国調査によると小児閉塞性脳血管障害全体の約20%を占めており,決して少ないものとは言えない.その原因として血液疾患や感染,心原性塞栓などが報告されているが,その他に脳動脈解離も挙げられる.成人例の脳動脈解離に関する報告は散見されるが,小児例は非常に少なく,その病態も不明なところが多い.今回われわれは,脳動脈解離が原因と考えられた小児脳梗塞の症例を2例経験したので,文献的考察を加え報告する.

頭部外傷後に生じた頭蓋頚椎移行部硬膜下血腫の1例

著者: 白神俊祐 ,   赤井卓也 ,   飯田隆昭 ,   飯塚秀明

ページ範囲:P.365 - P.370

Ⅰ.はじめに

 脊髄硬膜下血腫は,頭蓋内硬膜下血腫に比べ稀な疾患である.原因からみると,腰椎穿刺を含む外傷が約85%を占め,残る15%は種々の原因で起こる.しかし,健常な人にこれが起こることは稀で,血小板減少症,白血病,血友病,抗凝固療法などを基礎疾患として有するものが全体の約40%を占める13).また,明らかな原因を同定できない特発性脊髄硬膜下血腫も報告されている7,18)

 今回われわれは,脊椎・脊髄損傷を伴わず,頭部外傷が原因で発症した頭蓋頚椎移行部から上位頚椎に生じた急性硬膜下血腫の1例を経験したので報告する.

頭蓋骨骨折部位に骨転移した肝細胞癌の1例:転移巣形成機序の考察

著者: 福島匡道 ,   片桐彰久 ,   森達郎 ,   渡邉学郎 ,   片山容一

ページ範囲:P.371 - P.377

Ⅰ.はじめに

 肝細胞癌(HCC:hepatocellular carcinoma)の骨転移は椎骨や肋骨に多く発生し,頭蓋骨への転移は稀である.しかし近年,集学的治療の導入により長期生存が可能となり,骨転移の症例数が増加傾向にある.今後,頭蓋骨転移例に対して,脳神経外科医がHCCの治療に参加する機会に遭遇するであろう.われわれは,頭蓋骨骨折の局所に骨転移を起こし,急速に増大したHCCの1例を経験した.頭蓋骨骨折部位に転移した報告は自験例のみであり,その病態について文献的考察を加え報告する.

報告記

第1回日本スイス脳神経外科共同カンファレンス報告記(2009年7月23~26日)

著者: 本郷一博

ページ範囲:P.378 - P.379

 2009年7月23日(木)~26日(日),「第1回日本スイス脳神経外科共同カンファレンス(Swiss-Japanese Neurosurgical Joint Meeting)」が,チューリッヒ大学脳神経外科Helmut Bertalanffy教授のもと,チューリッヒ市街を見下ろす高台にある郊外のホテルにて行われた.本会は,2007年チューリッヒ大学教授になられたBertalanffy教授がぜひ日本と共同カンファレンスを持ちたいとの意向を持っておられ,実現したものである.河瀬教授(慶應義塾大学)に顧問になっていただき,私は塚原徹也先生(京都医療センター脳神経外科部長)とともに日本側事務局を務めた.

 日本からは30名を超える先生方が出席され,スイスをはじめヨーロッパ諸国からもほぼ同数の参加があった.学術集会は4日間にわたり,58題の発表が行われた.題目は脳血管障害,脳腫瘍,頭蓋底外科,機能脳神経外科,解剖生理の基礎研究など多岐にわたり,とても有意義なものであった.海外の先生方の発表では特に,Bertalanffy先生の“Treatment of Brainstem Cavernomas”,Ohgaki先生(Lyon)の“Genetic pathways to primary and secondary glioblastoma”,Valvanis先生(Zurich)の“Curative endovascular treatment of brain AVM's”,Yonekawa先生(Zurich)の“Thoughts on upper basilar aneurysms”などが印象に残り,私としてはいずれも15分間の発表ではなく特別講演として聴きたい内容のものであった.日本からは,若手の先生方の素晴らしい発表も多く,またディスカッションにも積極的に参加され,日本の存在感を強くアピールできたと思っている.

連載 脳神経外科手術手技に関する私見とその歴史的背景

6.体位,手術器具

著者: 米川泰弘

ページ範囲:P.381 - P.396

Ⅰ.はじめに

 少し間が空いたが,前回(37巻1号)はmeningiomaがテーマであった.次回は後頭蓋窩動脈瘤ないしは後頭蓋窩腫瘍について述べたいと思う.その前に,これらの手術を行う際にどうしても必要なことなので,この辺で,やはり今回のテーマ「体位,手術器具」について述べておきたい.

 この稿の執筆を終える数日前に,左前頭葉(gyrus frontalis superior)の後半に首座を持つoligodentroglioma grade Ⅱで11年前にsubtotal removalを行った症例を再手術した.

 Grade Ⅱであったので,術後照射あるいはchemotherapyは行わず,定期的に外来観察のみで経過した.最近speech arrestを伴うfocal seizureが抗癲癇薬の投与にもかかわらず頻繁に出現すること,および前回手術の腫瘍除去腔の後半部分に造影剤を摂取する部分が出現し,それに伴い除去腔壁に残存している腫瘍の増殖傾向がみられた.前回の術後,右片麻痺を伴った言語障害が一過性に出現したため,この手術をするにあたって以下の準備をした:functional MRI,術中open MRI,術中strip electrodeによるmotor strip stimulation,ステルスnavigation,5 aminolevulinic acid(5ALA).このような検査,手技のため時間はかかったが,幸いsubtotal removal手術は予定通り大過なく経過し,その患者は術後何の新しい神経脱落症状もなく覚醒した.

 本稿では,これらの準備した最近の補助手術装置,検査についての詳細を述べるのではないことを,前もって,お断りしておく.ここではこれらの装置がなくても,基本的には安全な手術できること,またこれらを使ってもなお手術遂行に伴い必要な基本的な体位,頭位,手術器具などについて述べたい.

海外留学記

ピッツバーグ大学留学便り

著者: 藤田貢

ページ範囲:P.397 - P.399

留学への経緯

 私は2006年1月~2009年12月現在まで,ペンシルヴァニア州ピッツバーグにて基礎研究者として生活しています.海外生活を始めてちょうど4年となり,2年ほどの留学期間の方が多いことを考えるとやや長期の部類になります.

 私は1997年に名古屋大学を卒業後,名古屋第二赤十字病院に研修医として就職しました.この間の脳神経外科医を志す過程で印象的だったのは,先輩脳神経外科医の多くが海外留学経験者であったことでした.外国人ゲストも多く,海外留学への興味を強めるのに十分な環境であったと思います.

コラム:医事法の扉

第48回 「安全配慮義務」

著者: 福永篤志 ,   河瀬斌

ページ範囲:P.401 - P.401

 通常安全配慮義務とは,労働者が勤務中に事故などに遭わないように,使用者側において労働者の安全に配慮する義務をいいます.以前は不法行為(民法709条)の問題として取り扱われていましたが,国の自衛官に対する生命および健康などを危険から保護するよう配慮すべき義務を認めた最高裁判決(昭和50年2月25日第三小法廷判決)を契機に,雇用契約を背景として,使用者が労働者に対する安全配慮を怠った債務不履行(415条)の問題として取り扱われるようになりました.

 このように,一見医事法とは関係ないように思われますが,医療過誤事例でも医療者側に患者に対する「安全配慮義務」違反が問われることがあります.この場合の「安全配慮義務」は,雇用契約ではなく,診療契約上の債務不履行として捉えられることになります.

書評

『Disease 人類を襲った30の病魔』―Mary Dobson●著,小林 力●訳

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.334 - P.334

 「将来の人々は,かつて忌まわしい天然痘が存在し貴殿によってそれが撲滅されたことを歴史によって知るだけであろう」

トーマス・ジェファーソン.エドワード・ジェンナーへの1806年の手紙 本書134頁より(以下,頁数は本書)

 われわれは,ジェファーソンの予言が1979年に実現したことを知っている.個人の疾患は時間を込みにした疾患である.社会の疾患は歴史を込みにせずには語れない.目の前の患者に埋没する毎日からふと離れ,俯瞰的に長いスパンの疾患を考えるひとときは貴重である.

『下垂体腫瘍のすべて』―寺本 明,長村 義之●編

著者: 松谷雅生

ページ範囲:P.339 - P.339

 長らく渇望していた書がついに発刊された.下垂体腫瘍の診断と治療の第一人者である寺本明教授と,下垂体細胞および下垂体腫瘍(細胞)の病理学と生物学の第一人者である長村義之教授が,わが国の碩学の方々を執筆者に揃えて編んだ本書である.

 第1章は視床下部・下垂体の発生である.ヒトにおいては妊娠12~17週の間に視床下部─下垂体の神経内分泌系は活動し始め,そこに至るまでには種々の転写因子やその供役因子である内因性増殖因子などが関与している.まことにヒトの生命誕生は神秘的であり,驚嘆を禁じ得ない.この章に続く下垂体ホルモンの分泌機構の章は,下垂体腫瘍の臨床において極めて重要である.

文献抄録

Antiangiogenic therapies for high-grade glioma

著者: 黒住和彦

ページ範囲:P.403 - P.403

Patterns of relapse and prognosis after bevacizumab failure in recurrent glioblastoma

著者: 黒住和彦

ページ範囲:P.403 - P.403

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編集後記

著者: 斉藤延人

ページ範囲:P.410 - P.410

 世間ではバンクーバーオリンピックに盛り上がっている最中,脳神経外科学会では新専門医研修制度を動かすための実務的な作業が続いている.新たな基幹施設や研修施設などの研修プログラムの枠組みの中で,研修プログラムの募集が始まったところである.大きな混乱なくスムーズにスタートしてほしいと願う.また,医療界では中医協が平成22年度の診療報酬改定を厚生労働大臣に答申したところである.中医協とは中央社会保険医療協議会の略称で,診療報酬を決める厚生労働大臣の諮問機関である.最近では,我らが日本脳神経外科学会の一員である嘉山孝正先生が委員に入ったことが話題を呼んだ.今回の改定では診療報酬総額が0.19%引き上げられる.勤務医の疲弊や診療科間の格差はだいぶ世間に認知されたようで,医師の技術料などが大幅増となる.「救急,産科,小児,外科などの医療の再建」と「病院勤務医の負担軽減」を重点課題と位置付け,優先的に配分するようになっている.われわれ脳神経外科医の環境も改善されるように願うものである.一方で,勤務医の待遇改善という趣旨から外れて,病院の赤字解消のみに費やされないように,見守っていかなければならない.われわれ脳神経外科医も意見を発信していく必要があるが,そのためには基本情報を収集して勉強しておく必要がある.学会場やさまざまな雑誌上で,社会面での情報も交換することが重要と思われる.

 さて,本号の扉では大阪医科大学の黒岩敏彦先生が「バランス感覚」についてエッセイを書かれている.個人情報保護法に対する過剰反応や,手術中の綿花のカウントなどを例に挙げられ,木を見て森を見ないような事態にならないように注意喚起されている.先生のお人柄がにじみ出ている名作である.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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