政権が変わり,診療報酬の10年ぶりの引き上げ,医師技術料など本体部分の1.55%増額が決定された.勤務医の負担軽減などが真剣に議論され,また医学部定員の増加,さらに医学部新設の話題など,今後の医療のあり方をめぐって変化の兆しが見えていると言ってよい.報酬総額増だけでなく医師支給技術料の導入や,異分野間の医師偏在対策など,医療コミュニティーの中だけで話題にされていたことが,公的議論に上るようになった.
しかし経済全体の現況は,1人あたりのGDPがかつてのトップクラスから23位まで転落し,総額で中国に追い越され(購買力平価),この状況を一言で要約すればデフレであり,それに「スパイラル」という言葉が付くかどうかの状態である.新産業改革,エネルギー・交通革命など,経済再活性化の方向性ははっきりせず,税収はますます減る傾向にある.財政赤字はGDP比7%を超えており,国債債務残高はGDP比190%で単独首位,米国,英国,ドイツ,フランスなどの2倍以上である.経済全体の見通しが悪い状況下で,医療の技術集約的分野における有効な人的資源の保全強化策,待遇改善などを,財源に負担をかけずにどう成し遂げるのかが現実的な課題であろう.脳神経外科をはじめとする外科医療供給側の危機状況を述べて理解してもらうことは必要だが,声高にさらなる診療報酬の増額,新項目の創設など,財政資源の振り向けを要求するだけでは説得力に欠けるのではなかろうか.それではむしろ,全体像を見ようとしない集団であるというイメージを与えかねない.また診療報酬の増額分が人的資源,即ち賃金報酬に振り向けられるかどうかは医療機関の個別の経営状況と裁量次第である.
雑誌目次
Neurological Surgery 脳神経外科38巻5号
2010年05月発行
雑誌目次
扉
待遇改善の原資と傾斜配分の必要性
著者: 金彪
ページ範囲:P.413 - P.414
総説
頚部頚動脈血行再建術後過灌流:update
著者: 小笠原邦昭
ページ範囲:P.417 - P.425
Ⅰ.はじめに
頚部頚動脈分岐部の粥状動脈硬化性狭窄病変が脳梗塞の原因となることはよく知られた事実である.この発症メカニズムとしては,狭窄部に形成された血栓あるいは粥腫そのものが末梢に飛んでいって脳血管を突然閉塞させる場合(artery-to-artery embolism)と狭窄により末梢である脳血管の灌流圧が下がって脳血流が低下する場合(血行力学的脳虚血)の2つがある.これを予防するために行われるのが粥状動脈硬化を除去する内膜剝離術(carotid endarterectomy:CEA)である.この手術法は欧米の大規模研究でその脳梗塞予防効果が証明された外科治療であり1),本邦でも同病変の増加に伴い盛んに行われている.また,血管内手術手技の発達とともに粥状動脈硬化を強制的に潰す治療法である頚動脈ステント術(carotid artery stenting:CAS)が臨床の場に導入された.2008年4月から保険収載され,CEAと同等の治療効果が期待されている.
CEAあるいはCASは,それを適応する上で明確な基準がある1).すなわち,手術合併症を症候性病変(6カ月以内に脳虚血症状を来している)では6%,無症候性病変(6カ月以内に脳虚血症状を来していない)では3%以内に抑えなければ,有効性はないという厳しい制限がある.それゆえ手術合併症の発症メカニズムを知り,これを予知することが重要である.
CEAにしてもCASにしても,その手術脳合併症として問題となるのが術中脳梗塞と術後過灌流である.さらに術中脳梗塞の原因として,遮断による大脳半球虚血(血行力学的脳虚血)と頚部頚動脈手術部位からの塞栓(artery-to-artery embolism)に分けられる.その発生比率はCEAにおいては,大脳半球虚血:塞栓:過灌流=15:55:30とされ27),CASでは大脳半球虚血による術後脳梗塞はさらに少なく,塞栓の比率が高くなる.いずれにしても,術中塞栓症と術後過灌流が最大の問題である.
術後過灌流は「脳組織の需要をはるかに越えた脳血流の急激な術後の増加」と定義され,本邦を中心とした研究でその病態が明らかになりつつあり,いくつかの総説も著わされている8,9,18).本稿では,術後過灌流の脳組織に対する影響,発生メカニズム,予知,CEAとCASとの相違につき,これらの総説以降の最近の知見を概説する.
解剖を中心とした脳神経手術手技
覚醒下手術の注意点
著者: 村垣善浩 , 丸山隆志 , 田中雅彦 , 伊関洋 , 岡田芳和
ページ範囲:P.427 - P.435
Ⅰ.はじめに
覚醒下手術(awake craniotomy)は,脳神経外科手術,特に髄内病変を対象とした手術の際,手術チームに非常に有用な情報を提供する方法である9).この手術の2大目的は,電気刺激による機能組織(functional tissue)同定(マッピング)と,術中,特に摘出操作中の神経機能のモニタリングである.運動機能の場合は全身麻酔下でも可能であるが,言語機能8)やその他高次脳機能は覚醒状態でしか確認はできず,機能情報が必要と考える場合,必須の手技となる.てんかんとともに神経膠腫10)を中心とした髄内腫瘍での応用が盛んになっている.
加えて近年,覚醒下手術による言語マッピングの臨床的価値も評価されており14),また治療の意思決定の情報のみならず神経科学における重要な方法論1)として認識されるようになっている.しかし一方で,従来の全身麻酔下手術とは異なる手技が必要となり特有の合併症も存在するため,即座に導入できる方法ではない.施行を逡巡する脳神経外科医は患者への高侵襲性を理由に挙げることが多いが,基本的に局所麻酔の手術であるため全身合併症は軽微であり3),非常に鋭敏なモニタリングであるため神経学的合併症の頻度も低い5).覚醒下手術によるマッピングとモニタリングの目的は神経学的欠損症状の予防のみならず積極的な摘出を可能にすることである21)(Fig. 1).機能組織の同定と摘出操作が機能組織の損傷を起こしていないことの確認は引き続く積極的な摘出の必須条件であるからである.そこで本稿では,この優れた覚醒下手術をより安全に施行し,術中機能検査をより正確に施行することを目的として,適応選択から手技や合併症の予防対策まで留意点・注意点を述べる.
研究
当施設における頚動脈内膜剝離術後10年の長期予後
著者: 芳賀整 , 卯田健 , 河野健一 , 森恩 , 宇賀愛 , 濱田康宏 , 矢坂正弘 , 岡田靖 , 詠田眞治
ページ範囲:P.437 - P.440
Ⅰ.はじめに
欧米の大規模無作為試験1,7)から内頚動脈高度狭窄に対する頚動脈内膜剝離術(CEA:carotid endarterectomy)の脳梗塞予防効果は確立されており,長期効果も良好と考えられている.今回,頚動脈狭窄は全身の動脈硬化の一部分症であることも鑑み,本邦当施設におけるCEA術後10年の長期予後を検討した.
症例
大脳鎌に発生したintracranial extraskeletal mesenchymal chondrosarcoma
著者: 齋藤佑規 , 竹村直 , 櫻田香 , 佐藤慎哉 , 嘉山孝正
ページ範囲:P.441 - P.448
Ⅰ.緒言
Mesenchymal chondrosarcomaは,1959年にLightensteinとBernsteinにより,低分化な小型円形細胞と軟骨組織からなる骨の悪性腫瘍として初めて報告された12).発生母地としては骨由来のものが70%以上と最も多く,次いで軟部組織が20%,以下縦隔,眼窩などからの発生が報告されている5,10,21).頭蓋内に発生することは非常に稀で,原発性脳腫瘍全体の0.16%以下であり9),そのほとんどは骨から発生する.頭蓋内で骨以外から発生したとする報告はさらに稀である.今回,われわれは大脳鎌から発生したintracranial extraskeletal mesenchymal chondrosaromaの1例を経験したので,術前の画像診断,治療法について文献的考察を加えて報告する.
Proximal protection methodを用いた頭蓋内内頚動脈狭窄症に対する血管形成術
著者: 須磨健 , 渋谷肇 , 高田能行 , 松崎粛統 , 中村真 , 平山晃康 , 片山容一
ページ範囲:P.449 - P.454
Ⅰ.はじめに
頚動脈狭窄症に対するステント留置術(carotid arterial stenting:CAS)においては,バルーン型やフィルター型のembolic protection device(EPD)によって手技中のdistal embolismを予防している7).しかしながら,頭蓋内内頚動脈狭窄症に対する血管形成術においては,安全に使用可能なEPDが現在のところ存在せず,distal embolismを防止するためのprotectionは行われていないことが多い.以前,われわれは頭蓋内内頚動脈狭窄症に対してembolic protectionなしに血管形成術を行い,虚血性合併症を経験した.そこで,虚血性合併症を防止するため,proximal protection methodを用いた血管形成術を考案し,合併症を発生させることなく治療できた症例を経験したので報告する.
自然破裂した無症候性頭蓋内類皮腫の1例
著者: 菊地善彰 , 竹村直 , 久下淳史 , 佐藤慎哉 , 嘉山孝正
ページ範囲:P.455 - P.462
Ⅰ.はじめに
頭蓋内類皮腫は胎生期遺残組織から発生する囊胞性腫瘍で,その発生頻度は全脳腫瘍中の0.2%と稀な腫瘍である5).類皮腫の自然破裂の報告は,稀ではあるが散見される.しかし,これらはいずれもそれ自体で症状を有するような大きな腫瘍であり,無症候の小さな類皮腫が破裂したという報告はわれわれが渉猟し得た限りでは認めない.今回われわれは,左小脳橋角部にincidentalに発見された最長径20mmの類皮腫が経過観察中に自然破裂した症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
脳神経外科単科専門病院へ救急搬送されたBrugada症候群の1症例
著者: 澤村淳 , 丸藤哲 , 三島鉄也 , 井上道夫 , 笹森由美子 , 松村茂樹 , 高橋八三郎
ページ範囲:P.463 - P.471
Ⅰ.はじめに
今回われわれは,失神後の頭部打撲のため脳神経外科専門病院へ救急搬送されたBrugada症候群の1例を経験したので報告する.Brugada症候群は突然死の原因疾患として重要であるばかりでなく,不整脈以外の特異的症状がなく見逃される可能性があるため注意が必要である.
血流豊富な甲状腺腫瘍に関連した鎖骨下動脈盗血現象
著者: 川原一郎 , 中本守人 , 松尾義孝 , 徳永能治
ページ範囲:P.473 - P.476
Ⅰ.はじめに
鎖骨下動脈盗血症候群(subclavian steal syndrome:SSS)は一側椎骨動脈の発育不全や鎖骨下あるいは腕頭動脈の高度狭窄・閉塞により脳循環障害を来す疾患である3).典型的には,椎骨脳底動脈系の虚血に伴うめまいや失神,患側上肢の痺れなどの症状が一般的であるが,無症候性である場合も多く,椎骨動脈の逆流現象のみで症候を認めないものを鎖骨下動脈盗血現象(subclavian steal phenomenon:SSP)と呼び区別される.
SSSおよびSSPの原因としては,動脈硬化症がそのほとんどを占めている3,5,8,9).しかし今回われわれは,中大脳動脈狭窄症に伴う急性期脳梗塞症例において,脳血管造影検査にて高濃染像を呈する甲状腺腫瘍に関連したSSPを経験したので,文献的考察を加え報告する.
腰部脊柱管狭窄症と腰椎椎間孔狭窄症による神経根症に対して外側開窓と対側からの脊柱管除圧を行った1例
著者: 佐々木学 , 青木正典 , 吉峰俊樹
ページ範囲:P.477 - P.483
Ⅰ.はじめに
近年,画像診断技術の発達により腰椎脊柱管外の病変による神経根症が注目されるようになった.特に椎間孔内の病変により神経根が圧迫されると,障害神経根領域の下肢痛を主とする強い痛みが生じることが多く,しばしば外科的治療を要する.本報告では腰部脊柱管狭窄症(LCS:lumbar spinal canal stenosis)と腰椎椎間孔狭窄症(LFS:lumbar foraminal stenosis)による神経根症を呈した高齢女性に対して,外側開窓による椎間孔内の除圧と対側からの脊柱管除圧を行うことにより,椎弓の連続性を維持しつつ直視下で神経根起始部から椎間孔外まで連続的な神経根の除圧を行うことができた.術前後の経過と文献的な考察を加えて報告する.
海外留学記
マサチューセッツ総合病院留学記
著者: 金井隆一
ページ範囲:P.485 - P.487
私は,慶應義塾大学病院および関連病院にて初期研修,レジデント(脳神経外科)終了後,2004年に専門医を取得し,2005年より約3年間,静岡市立清水病院(脳神経外科)に勤務いたしました.そして現在は,河瀬斌名誉教授(慶應義塾大学脳神経外科)のご高配により,2008年5月より,米国マサチューセッツ州ボストンにあるマサチューセッツ総合病院(MGH:Massachusetts General Hospital)脳神経外科に研究留学させていただいています.
ボストン中心部に位置するMGHは米国で3番目に古い総合病院で,New England地方では,最大・最古であり,医療・研究レベルの高さは長い間全米トップクラスであり続けています.院内に約900床ある入院床のうち,脳神経外科および関連領域の占める割合はおよそ10%となっています.対象疾患は,脳腫瘍,脳血管障害,外傷,変性疾患,脊椎・脊髄など多岐にわたり,バランスが取れている印象です.Neuro-ICUには17床の脳神経外科患者専用ベッドがあり,年間約2,600件の手術が行われています.脳腫瘍の患者さんに対しては,脳神経外科,神経腫瘍科(neuro-oncologist),神経放射線科(neuro-radiologist)など各科の共同は密であり,この点,(日本よりも)専門化・分業化が進んでいる印象を持っています.研究面では関連科も含めると,脳腫瘍,再生,虚血,神経生理,機能・モニタリング,など多くの研究室が存在し,数多くの留学生(MD,PhD問わず)を受け入れています(東京医科歯科大学,日本大学からも脳神経外科医が留学されています).MGHに限らずおおむねの施設で,研究の占める重要性が日本に比べ非常に高いと実感しています.
コラム:医事法の扉
第49回 「医業類似行為」
著者: 福永篤志 , 河瀬斌
ページ範囲:P.489 - P.489
「医業」とは,人の疾病の診察,治療などの医行為を業(対価を得る目的で継続的・反復的に行う行為)とすることをいいます.医師でなければ行うことができず(医師法17条),医師でない者が行うと「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金」に処せられます(同31条1項1号).ただ,そこに明確な定義規定はなく,ある行為が医業ないし医行為に該当するかどうかは,社会的通念で決められています.
一方,あん摩,マッサージ,指圧,はり,灸,柔道整復などを総称して医業類似行為といいます.医業とは本来区別されるべきものですが,実際には医業との境界が微妙なケースもあり,上記医師法違反との関係でしばしば裁判で問題となります.近年,柔道整復師による健康保険不正請求事件が国会や医学会でも取り上げられましたが,その背景には患者が本来医業のみの対象となる疾病であることを理解できず,保険適応のある接骨院などを受診し医業類似行為に頼ってしまうという事情があるでしょう.われわれ医師も,患者から相談された場合には,この点を見極める必要があります.
書評
『Disease 人類を襲った30の病魔』―Mary Dobson●著,小林 力●訳 フリーアクセス
著者: 茨木保
ページ範囲:P.435 - P.435
本書は病気を切り口にした医学史書です.ペスト,コレラ,天然痘などのパンデミックはこれまで,戦争以上に多くの人命を奪ってきました.異文化の接触のたびに病原体の交流が行われ,それはしばしば1つの文明を滅ぼすほどでした.人類の歴史とは感染症との闘いであったといっても過言ではありません.本書ではそうした歴史が,疾患ごとに見開き8ページ前後で解説されています.各章の長さは,診療の合間に読むのにもちょうどよいボリューム.そして何より一番の特徴は,誌面のビジュアル的な美しさでしょう.B5判全ページカラー,いずれのページにも医学の歴史を伝える貴重な絵画や生き生きとした写真が満載.医薬史研究家の小林力氏の流麗な邦訳と相まって,圧倒的な迫力で読者を時間旅行にいざなってくれます.まさに目で見る医学史の決定版といえるでしょう.
『神経診断学を学ぶ人のために』―柴﨑 浩●著 フリーアクセス
著者: 水野美邦
ページ範囲:P.440 - P.440
このたび,柴﨑浩先生が『神経診断学を学ぶ人のために』という本を書かれた.わが国における臨床神経学・神経生理学の第一人者である先生の単著である.アメリカでのレジデント生活の経験も持たれる先生の御本で大変期待の持たれる単行本である.先生は,京都大学臨床神経学講座の主任教授を務められ,今は退官して武田総合病院の顧問をしておいでになる.
目次を拝見すると,神経疾患の診断(総論),病歴聴取,診察の手順,意識状態の把握,脳神経領域と脳幹と続き,後者はさらに嗅覚,視覚から舌下神経まで,詳しく記載されている.次は,頚部と体幹,四肢の運動機能,腱反射と病的反射,不随意運動,体性感覚系,自律神経系,姿勢・歩行と続き,神経学的診察が完了する.さらにその先には,精神・認知機能,失語・失行・失認,認知症,発作性・機能性神経疾患,心因性神経疾患,視床下部と神経内分泌,神経内科的緊急症,日常生活障害度,機能回復と予後,検査方針の立て方と続き,神経学的診察の結果から,どのようにして病因診断に進むのかがわかるように配慮されている.
『プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖』―坂井 建雄,河田 光博●監訳 フリーアクセス
著者: 渡辺雅彦
ページ範囲:P.483 - P.483
『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻「頭部/神経解剖」は,「解剖学総論/運動器系」,「頚部/胸部/腹部・骨盤部」に続く最終巻である.本書を手に取ると,つい引き込まれてページをめくりながら読んでしまう.その理由を分析してみた.
まず第1に,本書の図の1つ1つが実に美しいことである.これまでの解剖学図譜で行われてきたような,実物を精巧に再現する図や,できるだけ多くの構造体を網羅するカラフルな図や,理解を助けるために単純化した模式図とも異なり,プロメテウスならではのユニークな図が満載されている.例えば,最初の頭蓋の章では,約40頁に百数十点の頭蓋の全体や各部の図が登場する.そこには,まるで写真のような精巧さで頭蓋底や頭蓋の断面が描かれた図が登場する一方,その隣には各頭蓋骨をパステルカラーで色分けされた図も提示され,個々の頭蓋骨がどのように頭蓋を構成しているのかがよくわかる.頭部の断面解剖では,CTやMRI画像の理解を意図した図も豊富に提供されている.さらに,これらの図が,著者らの意思と目的を具現する手段として作成されている.例えば,脳神経や眼窩領域の部分では,理解させたい部分の表情筋や骨を順次切り取った図が提示され,脳神経や血管の走行経路と分布が理解できる.剖出を行いながらその先の構造体を明らかにしていく,ちょうど解剖学実習を行っているような感覚になる.
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編集後記 フリーアクセス
著者: 伊達勲
ページ範囲:P.498 - P.498
今月号の扉には,金彪先生がご自身の研究を基に,脳神経外科医の待遇改善に何が必要かについての提言をされている.特に傾斜配分の必要性を強調されているが,この分野に造詣の深い金先生がお得意の経済学的手法を駆使して導かれた結論であり,説得力がある.本文の最後のほうに書かれているURLにアプローチすると,報告書がPDFで掲載されているので興味のある方は是非ご覧ください.小笠原邦昭先生はご自身のライフワークの1つであるCEAとCAS後の過灌流について非常にわかりやすく「総説」にまとめてくださった.ご自身のあるいは先生の教室の豊富な引用論文を拝見すると,この分野でどのように先生がアプローチし分析してこられたかが,よく理解できる.村垣善浩先生は覚醒下手術を最も多く手がけられている脳神経外科医のお一人であるが,数多くの経験からピットフォールを含めた留意点について,「解剖を中心とした脳神経手術手技」に論文を寄せていただいた.実践的な内容が多く含まれており,本手術を行う際に大いに参考にしていただきたい.
小笠原先生,村垣先生の論文を読んでいると,臨床研究はこうあるべし,との見本を示してくださっていると感じる.読者の皆様も精読いただければ幸いである.本号のその他の研究,症例報告などの論文も興味深いものが多く,読み応えがある.
基本情報

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4巻12号(1976年12月発行)
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4巻10号(1976年10月発行)
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4巻8号(1976年8月発行)
4巻7号(1976年7月発行)
4巻6号(1976年6月発行)
4巻5号(1976年5月発行)
4巻4号(1976年4月発行)
4巻3号(1976年3月発行)
4巻2号(1976年2月発行)
4巻1号(1976年1月発行)
3巻12号(1975年12月発行)
3巻11号(1975年11月発行)
3巻10号(1975年10月発行)
3巻9号(1975年9月発行)
3巻8号(1975年8月発行)
3巻7号(1975年7月発行)
3巻6号(1975年6月発行)
3巻5号(1975年5月発行)
3巻4号(1975年4月発行)
3巻3号(1975年3月発行)
3巻2号(1975年2月発行)
3巻1号(1975年1月発行)