icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科38巻7号

2010年07月発行

雑誌目次

私達の世代

著者: 加藤天美

ページ範囲:P.597 - P.598

 私が脳神経外科を志した30年前は頭部外傷や脳出血の患者が多く,病棟はさながら野戦病院のようだった.徹夜の手術,患者の急変は日常茶飯事で,術後の再出血,脳ヘルニア,遷延性意識障害といった転帰が本当に身近な病態だった.手術適応,手術手技,患者管理すべてにおいて体系だったエビデンスもなく,まさに道なきジャングルを試行錯誤で切り拓くという感があった.翻って今日,手術が原因で大きな神経脱落症状が生じたり,生命に関わることは例外的であり,ある意味,教科書的な疾患は教科書的に治療すれば,まともな結果が得られる.「よき時代」となったものだ.

 30年前と言えば,やっと顕微鏡下手術が導入された頃である.このような状況から世界レベルにいち早く追いつき,日本独自の展開をも強力に先導してきた日本脳神経外科学会という組織の役割には瞠目すべきものがある.過去の年次総会の企画を振り返ると,脳出血や頭部外傷から,破裂脳動脈瘤,頭蓋底外科,血管内外科などへの変遷にその足跡をみることができる.

総説

経蝶形骨洞手術における髄液漏修復術

著者: 天野耕作 ,   川俣貴一 ,   堀智勝 ,   岡田芳和

ページ範囲:P.599 - P.611

Ⅰ.はじめに

 Hardyが経蝶形骨洞手術(transsphenoidal surgery :TSS)に手術顕微鏡を導入29)して以来40年以上が過ぎ,当手術はその利便性から広く普及し,一般的な手術となっている.近年では神経内視鏡の導入6,7,38)により下垂体およびその近傍病変に対するTSSの適応は広がり,前頭蓋底の広汎な領域に対する拡大経蝶形骨洞手術11,17,19,25-27,32-34,36,37,43,45,58,63)も行われるようになってきた.またナビゲーションシステムの導入3,36,39,63)により当手術の安全性は向上し,さらには術中MRI 14)などの検査機器の進歩,手術顕微鏡の改良,摘出器具の開発41,58)により,腫瘍の摘出率も年々向上してきている.しかしながらどんなに安全性,摘出率が向上しても,当手術最大の合併症である術後髄液漏は完全に解決されていないのが現状である.

 TSS後の髄液漏発生率は1.5~40%4,8,13,16,17,19,20,25,27,28,45,50,51,55,66)と緒家の報告でばらつきがある.これは各施設で腫瘍摘出の積極性,髄液漏修復方法が異なるためと考えられるが,Ciricら13)の3.9%という報告が大規模studyで信頼に値する平均的な数字だと考えられる.また一般的なTSSの術中髄液漏発生率も,腫瘍摘出の積極性や髄液漏確認時にValsalva法を行うか否かで異なってくるが9.5~37.8%8,10,28,50,55,56,61,62)とされている.TSS適応の代表例である下垂体腺腫では,腫瘍が巨大化し正常下垂体が菲薄化している場合,機能性下垂体腺腫で偽性被膜を積極的に摘出しなければならない場合40)などでは術中髄液漏が起こりやすい.ラトケ囊胞でも,病理診断確定のためcyst wallを採取する2)際に髄液漏が発生しやすく,また自然経過の中で囊胞に穴が開き既に髄液腔と交通していることもある.頭蓋咽頭腫26,58),髄膜腫14,18,27,58)も,腫瘍の全摘出を目指せば髄液漏は必発である.積極的な腫瘍摘出を行えば,必然的に術中髄液漏の発生率が上がるのは自明の理である.逆に言えば,手術中に髄液漏の発生を恐れていては,腫瘍を積極的に摘出することはできない.実際当科でも成長ホルモン産生下垂体腺腫の摘出率は年々向上してきているが,その理由の1つに髄液漏対策技術が向上してきたことが挙げられる.

 当科では,1998年にTSSを経上口唇から片側経鼻孔に変更するとともに神経内視鏡を導入して,安全性,腫瘍摘出率の向上に努めている.同時期から現在までに770例を超えるTSSを施行した.本稿ではTSSにおける術後髄液漏の予防という課題に対して,当科および各施設で行われているさまざまな工夫,手技について概説したい.

Sturge-Weber症候群

著者: 菅野秀宣 ,   中西肇 ,   中島円 ,   肥後拓磨 ,   飯村康司 ,   下地一彰 ,   新井一

ページ範囲:P.613 - P.620

Ⅰ.はじめに

 Sturge-Weber症候群(SWS)は稀な神経皮膚症候群の1つであるが,顔面および脳表の血管腫など特徴的な所見があるため,比較的認知度の高い疾患といえる.しかしながら,治療適応や治療方法になると曖昧になるのではないだろうか.SWSは静脈の発生障害に起因する血管性疾患である.皮質静脈の形成不全のために静脈うっ滞が生じ,脳血流が低下するという虚血性の病態を示す30).また,SWSでは75~90%にてんかん発作が生じる8,41).そのため,てんかん発作は重要な治療対象と考えねばならない.虚血性の疾患であるにもかかわらず,てんかんに対する治療を行っていくということが,治療に対する理解の混乱につながっていると思われる.

 われわれは,SWSについて以下のような病態仮説を考えている.血管腫下の脳皮質は虚血のため機能が低下していく.発達に伴い脳の血流需要は増加するが,静脈の灌流障害がある脳では血液供給が対応できないというミスマッチが生じた際にてんかん発作が起こる.てんかん発作が起こるとさらに血流不足が進み,脳機能低下,脳萎縮領域の拡大という悪循環に陥り,臨床的には精神運動発達遅滞が残る.そのため,治療は早期に脳機能と血流のuncouplingを改善させることが重要である.このuncouplingを助長するのがてんかん発作であるために,てんかん発作に対する治療が前面に位置してくる.

 治療介入の時期を決めるためには,MRIやSPECT,PETなどの画像診断,電気生理,小児発達検査など包括的な検討が必要である.本総説では,それらを検査,病態,治療に分け整理するとともに,今後の研究課題を確認する.

研究

神経膠腫における術前FDG PET/MET PET併用撮影の意義

著者: 山口秀 ,   寺坂俊介 ,   小林浩之 ,   成田拓人 ,   平田健司 ,   志賀哲 ,   臼居礼子 ,   田中伸哉 ,   久保田佳奈子 ,   村田純一 ,   浅岡克行

ページ範囲:P.621 - P.628

Ⅰ.はじめに

 従来のCTやMRIなどの形態学的画像に,positron emission tomography(PET)による代謝情報が加わることで,神経膠腫の生物学的特性が徐々に明らかになってきている4,13,17,23,27).神経膠腫に用いられる核種としては,18F-fluorodeoxyglucose(FDG)と11C-methionine(MET)が代表的であるが,この両核種を同一症例群で比較検討した報告は決して多いとは言えない2,6,9,10,12,20,25,28,31)

 FDGは正常なglucoseと同様に血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)を通過し,glucose transporter(GLUT)と結合して細胞内に取り込まれた後FDG-6-リン酸となり,これが細胞内に滞留することを利用している.局所のブドウ糖消費量を反映するため,GLUTの発現や活性化が亢進している悪性腫瘍細胞で集積が亢進する.FDGの集積は神経膠腫の悪性度や予後とよく相関するという報告が多いが1,2,9,20,23),FDGの集積は非特異的であり炎症細胞や肉芽組織などでも亢進することや15,30),脳組織(特に皮質)の糖代謝がそもそも高く,腫瘍との識別は視覚的には必ずしも容易ではないという問題がある3,14).一方,METは必須アミノ酸の1つであり,アミノ酸トランスポーターやBBBの破綻により組織内へ取り込まれる8,16).正常脳組織ではアミノ酸代謝は低く,腫瘍細胞のアミノ酸代謝が亢進している場合にはFDGに比べて正常脳組織とのコントラストがつきやすい.またMETの集積が増殖能と相関しているとの報告もある12,16).ところが,astrocytoma系の腫瘍に比べてoligodendroglioma系の腫瘍でMETの集積が亢進していることや4,7,11,18,27),oligodendroglioma系の腫瘍では腫瘍増殖能の指標であるMIB-1 labeling indexとMETの集積に相関性がなかった,という報告もある11)

 今回,われわれは当施設において術前にPETを施行した成人神経膠腫の症例のFDG・MET所見と腫瘍の悪性度や増殖能との関連性を比較検討した.神経膠腫の術前評価に両核種を併用する意義に関して考察する.

転移性脳腫瘍の治療における臨床経済評価手法の検討

著者: 田倉智之 ,   林基弘 ,   村垣善浩 ,   伊関洋 ,   上塚芳郎

ページ範囲:P.629 - P.637

Ⅰ.はじめに

 転移性脳腫瘍については,単発脳転移などを中心に外科手術と放射線全脳照射の併用療法,および全脳照射の単独療法,または定位的放射線手術(stereotactic radiosurgery)と全脳照射の併用療法など,治療選択のあり方についてさまざまな議論が行われている1,6,13,20,22,24,32,33).これらの検討では生存率を1つの指標に挙げているが,終末期に近く中央生存期間が1年間程度と比較的短い疾病機序などを背景に,おのおのの治療法が有する価値を十分に論じるには,生活の質(QOL:quality of life)や診療の経済性などを加味した多面的な検討も必要となる.しかし,現在行われている多施設共同研究や転移性脳腫瘍治療に関する現存の報告においても,生存率や腫瘍コントロール率(progression free survival rate)などは言及されているが,生活の質や臨床経済的な観点での有用性に関する報告は見当たらない.

 最近は,このような臨床経済的な観点による研究も普及しつつある.例えば,QOLを定量化した効用(utility)と診療に係わる費用(cost)の比から,診療技術の臨床経済的な価値(診療パフォーマンス)を論じる費用対効用分析(cost-utility-analysis)などがある.このような研究成果を蓄積することは,外科手術や全脳照射,または定位的放射線手術などの社会的な意義をさらに示すことになり,わが国の医療システムの中で当該診療技術の適切な普及を促すと考えられる.一方で,転移性脳腫瘍の領域でこの臨床経済的な価値を整理していくためには,次に示す手法自体の検証が必要となる.例えば,転移性脳腫瘍に対して患者の効用値を測定することが可能なのか,また測定されたその効用値は疾病特性と整合性を有するのか,などである.転移性脳腫瘍に対するこのような研究は,国内でまだ十分でなく臨床面のみならず制度面からも期待が高いと思われる.

 そこでわれわれは,転移性脳腫瘍の治療における臨床経済学的な評価手法の検討を目的に,予備的研究(pilot study)を試行した.なお,手法の有用性の検討が目的なため,手技の複雑性や運用上のバイアスが比較的少なく,さらに有害事象の管理もできるだけ可能な療法と症例を選択することが,本研究の条件として重要であった.このような観点から,定位的放射線手術の1つであるガンマナイフ治療(gamma knife surgery)を選び,その一般的な症例について検討を進めた.

 ガンマナイフ治療は,201個のコバルト(Co60)が線源となり半円球状かつ同心円状に配置され,それぞれから放出されたガンマ線がその中心に集束するよう設計されている.このガンマナイフの脳腫瘍に対する治療は,介入できる病巣の大きさに制限があるものの,侵襲性が低いため,全身麻酔に耐えられないような患者の治療も可能な上,比較的治療リスクが少ないとされる25,35).実際,わが国における定位的放射線手術の最大の適応は転移性脳腫瘍であり,各施設の治療適応疾患の多くを占めている.一方で,従来の放射線治療と同様,被照射線量(Gy)のみを基準とした治療計画が一般的とされており,高線量一括照射ゆえに照射体積などを考慮した治療プロトコール(腫瘍もしくは周囲正常脳への被照射体積や辺縁線量など)は完全に確立されたとはまだ言えない状況にある10,16).そのため,放射線障害に伴う脳浮腫などの有害事象や腫瘍再発の管理が的確に行えず,患者QOLなどの低下や医療費の増加が懸念されるケースも散見しており,単に照射量だけにとどまらない,新たな照射方法に関するパラメータの開発と検討が急務となっている.例えば,線量勾配の均一化のみならず,標的外の線量減衰の急峻さに対する配慮も重要と言える.今後は,臨床経済性にも考慮しつつ,照射方法のさらなる発展が期待される.

 以上の点を踏まえ,本研究では,転移性脳腫瘍に対する臨床経済評価を推進させる予備的研究として,ガンマナイフ手技で転移性脳腫瘍治療の費用対効果分析の可能性を確認するとともに,患者QOLへの貢献度,臨床経済学的な有効性,そして治療法によるそれらの差異について検討を行ったので,若干の文献考察を加え報告をする.

症例

親子間で認めた家族性AVMの1例

著者: 輪島大介 ,   竹島靖浩 ,   田村健太郎 ,   本山靖 ,   平林秀裕 ,   中瀬裕之

ページ範囲:P.639 - P.644

Ⅰ.はじめに

 脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)は胎生早期に発生する先天性異常であるが,家族性AVM(4親等以内の親族に2人以上のAVMの既往がある場合)2-4,6,9,11,13,14,21,22,24)の報告は非常に稀である.今回,われわれは親子間で認められた家族性AVMの症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

前大脳動脈dolichoectasiaの1症例

著者: 川原一郎 ,   中本守人 ,   松尾義孝 ,   徳永能治

ページ範囲:P.645 - P.650

Ⅰ.はじめに

 Dolichoectasiaは稀な病態であり,罹患動脈のほとんどは脳底動脈や内頚動脈である.とりわけ,前大脳動脈のdolichoectasiaは極めて稀である1,24).Dolichoectasiaによって引き起こされる病態に関しては,虚血性・出血性イベントに加え,周囲構造への直接的圧迫による脳神経麻痺などが報告されており,以前にもいくつか報告例はあるものの5,7,19),dolichoectasia自体によって引き起こされる脳循環動態の変化に関する報告はわれわれが渉猟し得た限りではそれほど多くない7,15,18)

 今回われわれは,前大脳動脈のdolichoectasiaにおいて,その灌流領域に脳血流低下を呈した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

脳室腹腔短絡術後にcerebrospinal fluid edemaを来した正常圧水頭症の3例

著者: 上山謙 ,   小山誠剛 ,   小菊実 ,   中村良一

ページ範囲:P.651 - P.654

Ⅰ.はじめに

 水頭症に対して行われる脳室腹腔短絡術に代表されるシャント術では,ときに種々の合併症を来すことがあるが,そのなかで脳室カテーテルに沿って髄液が脳実質内に浸潤するcerebrospinal fluid edema(CFE)は非常に稀な合併症である.しかも,CFEの過去の報告例はほとんどがシャント不全に続発したものであり,シャントが機能している状態でのCFEの発生例の報告は渉猟した限りでは見当たらない1-4)

 今回,シャントは機能しているにもかかわらず,CFEを来した正常圧水頭症の3例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

急性腰痛にて発症した仙腸関節障害の3例

著者: 浜内祝嗣 ,   森本大二郎 ,   井須豊彦 ,   菅原淳 ,   金景成 ,   下田祐介 ,   茂木洋晃 ,   松本亮司 ,   磯部正則

ページ範囲:P.655 - P.661

Ⅰ.はじめに

 腰椎疾患の主な症状である腰痛および下肢症状(痺れ,痛み)の原因を考える際は,腰椎疾患以外にも目を向ける必要がある.今回われわれは,急性腰痛で発症した仙腸関節障害患者の治療を経験したので,診断および治療に関して文献的考察を含めて報告する.

ガイディングカテーテルの保持にgoose neck snareを使用し非破裂血栓化巨大椎骨動脈瘤に対する塞栓術を施行した1例

著者: 河野健一 ,   卯田健 ,   安森弘太郎 ,   宇賀愛 ,   森恩 ,   芳賀整 ,   濱田康宏 ,   詠田眞治

ページ範囲:P.663 - P.668

Ⅰ.はじめに

 血管内治療の際に,アクセスルートの蛇行が強い症例では,ガイディングカテーテルを目的の位置に上手く留置できずに,その後の手技が難しくなることをしばしば経験する.今回,われわれは非破裂血栓化巨大紡錘状椎骨動脈瘤に対して母動脈閉塞術を行う際に,goose neck snareを用いてガイディングカテーテルの安定を図り,良好な結果を得た1例を経験したので報告する.

椎骨動脈血栓症に伴う脳底動脈塞栓症3例の血管内治療経験

著者: 菊地統 ,   牛越聡 ,   柏崎大奈 ,   高川裕也 ,   横山由佳 ,   安喰稔 ,   浅岡克行 ,   数又研 ,   板本孝治

ページ範囲:P.669 - P.673

Ⅰ.はじめに

 脳底動脈塞栓症は,早期の再開通が得られなければ,非常に予後が悪いことが知られている2-5).塞栓源は主に心原性塞栓のほか,椎骨動脈など主幹動脈からの血栓塞栓である.特に椎骨動脈起始部は狭窄性病変の好発部位であり,脳底動脈塞栓症の血管内治療に際し,病変部までのアプローチを困難にさせるだけでなく,主たる塞栓源となっていることにも注意して治療を行わなければならない7)

 今回,われわれは椎骨動脈起始部に生じた血栓塞栓による脳底動脈塞栓症に対する血管内治療を行った3症例を提示し,その問題点について検討した.

連載 臨床神経心理学入門

第2回 変性性疾患

著者: 小早川睦貴

ページ範囲:P.675 - P.681

Ⅰ.はじめに

 本稿では変性性疾患における高次脳機能障害について概説する.従来の神経心理学的検討では脳血管障害による局所病変例や,外科的手術などによる局所損傷例を対象としてきた.そのため,1つの脳機能は1つの孤立した病変と対応付けて考えられてきた.

 一方,近年の神経心理学的研究では,変性性疾患が検討の対象となることは珍しくない.変性性疾患ではその病変部位の違いによりさまざまな症候を呈する.これは,変性性の病変で障害される脳部位が脳の「システム」の機能不全を引き起こすためである.変性性疾患の認知機能障害として最も注目されてきたのは,Alzheimer病(AD)やPick病などで起こる認知症でみられる症候群であるが,その他の疾患においてもさまざまな高次脳機能障害を呈することが近年わかってきた.本稿ではAD,前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)のほか,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS),Parkinson病(PD),大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)でみられる高次脳機能障害をそれぞれ紹介する.

コラム:医事法の扉

第51回 「未破裂脳動脈瘤」

著者: 福永篤志 ,   河瀬斌

ページ範囲:P.682 - P.682

 今回から各論としまして,脳神経外科領域の疾患ごとに判例を検討していきたいと思います.

 未破裂脳動脈瘤は,術前は無症状の場合が多いため,術後に何か問題があると,手術が悪影響を与えたと疑われ,紛争化しやすい傾向があります.とはいえ,破裂する危険を考えると,手術を勧めたほうがよい場合もあります.そのバランスが難しく,脳神経外科医にとって,最も注意しなければならない疾患の1つであるといえるでしょう.平成元年からの医療過誤訴訟をみると,未破裂脳動脈瘤の事例は,平成12年から提訴され始め,患者側のさまざまな主張のうち,医療側の「手術・検査手技の過失」や「説明義務違反」などが裁判所に認定されやすいことがわかっています1)

IDH1 and IDH2 mutations in gliomas

著者: 荻野暁義

ページ範囲:P.683 - P.683

--------------------

編集後記

著者: 新井一

ページ範囲:P.690 - P.690

 本号にも多くのすばらしい論文が寄せられている.投稿いただいた筆者諸氏に敬意を表するものである.特に「扉」の加藤天美先生と私は同年代であり,「ポスト団塊の世代」として共感できる内容の「私達の世代」であった.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?