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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科39巻1号

2011年01月発行

雑誌目次

歴史に学び,原点に帰ろう

著者: 藤井清孝

ページ範囲:P.3 - P.4

 政治・経済での日本の混乱,凋落ぶりが著しい.中国,インドをはじめとする経済新興国の台頭,リーマンショックによる世界金融信用破綻などで,第二次世界大戦後長期にわたり日本政府がとってきた米国追従型の政治・経済政策が,問題解決に役立たなくなってきた.最近20年にわたり,デフレスパイラルの悪循環から脱却できず,財政と金融政策で有効な手立てが打てない歴代政府や日銀の判断と政策実行能力の低さが際立っている.先進国中で日本経済のみが停滞し,米国をはじめとする各国より憐みの目で見られ,日本の二の舞だけは避けようといった何ともやりきれない状況が続いている.2000年初頭の小泉内閣時代はすべての領域で聖域なき財政再建を目指したが,医療・年金・社会保障の分野で破綻を来し,さらに企業は人件費切り詰め策として非正規雇用制度を積極的に採用したため,貧困格差という社会問題を生じてしまった.国家予算は財政再建を目指しながらも,景気低迷・税収の減少で過度の国債発行に依存せざるを得ず,未だプライマリーバランスを回復できないなど,借金大国の危うい状態が続いている.このまま国の借金が増え続け,国としての明確なビジョンの提示と適切な政策が実行されなければ,2020年頃にはギリシャのように国家の破産が起こるのではないかと恐れられている.これらの責任は政策立案・実行能力に乏しい政府と現実を直視せず省益に走る硬直化した官僚組織の責に帰するところが多いが,国民やマスコミの側にも大いなる責任があるように思う.

総説

中枢神経疾患に対する細胞移植療法を用いた再生治療

著者: 金村米博

ページ範囲:P.5 - P.23

Ⅰ.はじめに

 中枢神経疾患に対する再生治療法の研究開発は,現在,さまざまなアプローチを用いて全世界で精力的に研究が実施されている.研究対象となる疾病は,虚血性疾患や外傷性疾患など,脳神経外科医になじみの深い疾患に加え,神経変性疾患や先天性神経疾患など,従来は神経内科および小児科領域で主に加療されている疾病も加わり,多岐にわたる.研究の方向性としては,神経組織内に備わる幹細胞を代表とする内在性細胞を活用して疾病を治療するアプローチと,外部から何らかの細胞を移植・補充して治療を行うアプローチ(細胞移植療法:cell therapy)の2つに大別される.外科領域に近い治療法としては,後者の細胞移植療法が考えられ,現在までさまざまな細胞を応用した神経疾患の細胞移植療法が研究されてきた(Table 1).

 細胞移植療法が神経症状改善をもたらすメカニズムとしては,移植細胞がホスト脳内に定着して,軸索再伸展による神経回路網の再構築や再髄鞘化を促すなどの直接的な神経再生作用(neuroregenerative effect)に加えて,細胞変性や細胞死を防ぐ神経保護作用(neuroprotective effect)が存在する.移植された細胞がこれらの作用のいずれを発揮するかは,細胞の種類,移植方法,移植時期により異なるが,何らかのメカニズムをもってして神経機能改善に貢献していると考えられる.歴史的には,胎児神経組織を代表とするさまざまな細胞,組織が基礎研究のみならず臨床研究においても移植に使用され,さらに嗅神経鞘細胞(グリア)(olfactory ensheathing cell/glia:OEC)9,84),臍帯血細胞(umbilical cord blood:UCB)62)などの応用が報告されてきた(Table 1).一方,昨今はin vitroで増殖させることが可能な神経幹細胞(neural stem cell:NSC)や間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)などの組織幹細胞,ES細胞やiPS細胞94)などの多能性幹細胞,といった各種幹細胞の応用に注目が集まり,幹細胞あるいはそれに派生する分化細胞を用いた研究が精力的に実施され,続々と新しい臨床研究が開始あるいは準備されている(Table 2).急速に拡大している本領域においては毎月のように多数の研究論文が報告されており,その全容を把握することは本領域の専門家でさえ困難である.個別領域においても,蓄積されている知見の量は膨大なものになりつつあり,限られた紙面でそのすべてを紹介することには限界がある.しかし,大きな進歩があるがゆえに,本領域の現状と将来性,特に脳神経外科領域の臨床現場における位置づけを見極める作業を継続的に行うことが,今後ますます重要になってくると考える.

 そこで本稿では,細胞移植療法を用いた治療法,とりわけ将来的に脳神経外科医が中心となって担うであろう「神経組織内移植」の有用性の検討がなされている研究の中から,既に臨床研究が開始されている,あるいはその開始が近い疾患を中心に,本領域の現状を概説する.なお,虚血性疾患への応用に関しては,既に本誌でも何度か概説されており,今回は割愛する.

解剖を中心とした脳神経手術手技

パーキンソン病に対する脳深部刺激療法の目標点決定法

著者: 戸田弘紀

ページ範囲:P.25 - P.35

Ⅰ.はじめに

 脳深部刺激療法(deep brain stimulation,DBS)はパーキンソン病および本態性振戦に対する外科的治療法としてわが国では2000年に保険認可され現在まで広く普及している.進行期パーキンソン病にみられる日内変動やジスキネジアに対してDBSは有効で6),最近の無作為化比較試験8,38)ではDBS・薬物療法併用群が薬物療法単独群に比べてよりよい結果を示した.DBSの効果を十分に引き出すためには,安全で正確な手術を行うことが重要である.本稿ではパーキンソン病に対するDBSについて,治療適応,刺激部位選択,手術手順と目標点座標決定法を解説する.

研究

総排泄腔外反に合併した脊髄病変の検討

著者: 中溝聡 ,   長嶋達也 ,   河村淳史 ,   秋山英之 ,   山元一樹 ,   杉多良文 ,   久松英治 ,   西島栄治 ,   甲村英二

ページ範囲:P.37 - P.43

Ⅰ.はじめに

 総排泄腔外反は20~25万人に1人発生する非常に稀な疾患である13,14,16). 同疾患には尿路,性器,消化器系とともに神経系にも異常が合併することが知られている7,13-15).通常,脊髄病変の状態により手術適応を決定するが,総排泄腔外反に合併する脊髄病変は症例数が少なく自然経過も知られていない.今回,われわれは自験症例について,文献的考察を加えて報告する.

症例

脳血管撮影検査後に腫瘍内出血を来した放射線誘発性髄膜腫の1例

著者: 山口慎也 ,   鈴木諭 ,   松尾吉紘 ,   上坂十四夫 ,   松角宏一郎 ,   岩城徹

ページ範囲:P.45 - P.50

Ⅰ.はじめに

 髄膜腫には異型髄膜腫,退形成性髄膜腫など悪性の経過を辿るものが含まれるが,基本的には良性腫瘍であり腫瘍内出血性などで急性増悪することは比較的稀と考えられている.だが少ない頻度ではあるが,出血で発症する場合1,13,27)や術前の塞栓術後に出血性変化を来した報告3,14,15,22,28)が散見される.

 今回われわれは,放射線誘発性と考えられる髄膜腫が,脳血管造影検査後に腫瘍内出血を来し急性増悪した稀な症例を経験した.文献考察を加え報告する.

大腰筋内に発生した神経鞘腫の1例

著者: 下田祐介 ,   森本大二郎 ,   井須豊彦 ,   濱内祝嗣 ,   松本亮司 ,   磯部正則 ,   金景成 ,   遊佐純教 ,   高橋達郎

ページ範囲:P.51 - P.57

Ⅰ.はじめに

 神経鞘腫は,末梢神経のSchwann細胞に由来する腫瘍で,末梢神経の存在する部位に発生し得る.今回われわれは,腰椎脊柱管外である大腰筋内に発生した稀な神経鞘腫に対し外科的治療を行い良好な治療成績を収めたので,文献的考察を含めて報告する.

Double overlapping stent techniqueにてflow diversionを行った紡錘状椎骨動脈瘤の1例

著者: 内野晴登 ,   浅野剛 ,   中山若樹 ,   黒田敏 ,   寳金清博

ページ範囲:P.59 - P.63

Ⅰ.はじめに

 紡錘状椎骨動脈瘤では,母動脈閉塞が治療オプションとして選択されることが多いが,単純な母動脈閉塞では対処困難な症例も存在する.近年,欧米ではpipeline embolization device(PED,Chestnut Medical,USA)やSILK(Balt Extrusion,France)などのflow diversion専用デバイスの臨床応用が進み,良好な中期成績が報告されつつある5,6,8,11).今回,対側椎骨動脈に狭窄を伴う紡錘状椎骨動脈瘤に対して,double overlapping stent法にてflow diversionを行った1例を報告する.

書評

『がん診療レジデントマニュアル 第5版』―国立がん研究センター内科レジデント●編

著者: 佐藤温

ページ範囲:P.57 - P.57

 『がん診療レジデントマニュアル』も第5版となった.初版から既に13年を数え,とても息の長い本である.いかにがん診療医に必要とされつづけている本であるかがうかがえる.私の仕事部屋の本棚にも初版から全版が揃えられている.各版の表紙の色が異なることもあり(徐々に厚くもなっている),並べると案外きれいなものである.マニア心をくすぐるのでプレミアでも付かないかなぁ,などと不謹慎なことまで考えてしまう.実は大変お世話になっているので捨てられないのである.がん薬物療法を診療の主とする医師にとっては,複雑で解釈しにくいこの領域における実臨床的な内容が,非常にわかりやすく整理されているため,初めに目を通す本としては最適である.

 第3版までは,常に白衣のポケットに入れて,日常診療にあたっていた.治療方針がわからない症例に出会うとすぐ調べた.治療計画をたてて再び内容を確認した.症例を検討するときにも本マニュアルを開きながら議論した.第4版は,地方での学会会期中が発売日であったため,発表に来ていた医局員とわざわざ医学専門書を取り扱う書店を探して,発売日当日に購入した.まるで,人気ゲームソフトの販売みたいである.さらに,第4版は2冊所有している.別に他からプレゼントされたわけではない.自分のポケットから支払って購入している.実は,この時私は,臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医の試験を受けるため,このマニュアルを試験合格に向けて覚えるべき知識を整理するために使用していたのである.まるで学生時代のように赤線をたくさん引いているうちに,真っ赤になってしまい,日頃の臨床時に調べにくくなってしまったので1冊追加購入した次第である.結論から言えば,がん薬物療法専門医を受けようとしている医師にも,ぜひお薦めしたい.膨大な知識をこれだけコンパクトにまとめている本はない.本書を読んでから,臨床腫瘍学会の教育セミナーを聴くと,理解しにくい自身の専門外の領域のがんの知識がよく頭に入る.また,携帯可能であることも大きい.この件については後述する.自分勝手な話ばかりでなく,書評として本来の意義である内容について触れる.

『《神経心理学コレクション》視覚性認知の神経心理学』―鈴木 匡子●著,山鳥 重,彦坂 興秀,河村 満,田邉 敬貴●シリーズ編集

著者: 高橋伸佳

ページ範囲:P.77 - P.77

 神経心理学の対象は言語,行為,認知にはじまり,記憶,注意,遂行機能,情動などを含む広範な領域に及ぶ.このうち失認症を中核とする認知の障害は,他の症状,例えば失語症や失行症などと比べてとっつきにくいと感じる人が多いのではなかろうか.大脳の機能を大きく運動(出力)と感覚(入力)に分けたとき,後者の障害である失認症は外から見てその存在がわかりづらい.障害を検出する際にも,結果を出力という目に見える(表に現れる)形でとらえにくいため客観的評価が難しい.こうした印象が失認症への積極的アプローチをためらう理由の1つかもしれない.

 認知の障害は視覚,聴覚,触覚など感覚別に分類される.本書はこのうち最も重要な視覚性認知に焦点を当てたものである.本書の特長は2つある.1つは視覚が関係する高次脳機能のすべてを網羅している点である.内容は「視覚性失認」はもちろん,「視空間認知」,「視覚性注意」,「視覚認知の陽性症状」から「視覚認知と意識」にまで及ぶ.読み,計算,言語理解,行為などについて,視覚(あるいは視空間)認知の観点からみた項目もある.読者は全体を眺めてもよいし,まず興味のある部分から覗いてみてもよい.徐々にこの領域が身近に感じられるようになるだろう.

読者からの手紙

頚動脈内膜剝離術で遭遇した舌下神経の走行破格

著者: 中嶋浩二 ,   大石敦宣

ページ範囲:P.64 - P.64

 「これが12番?」

 われわれは驚きの声をあげた.むろん,12番とは第12脳神経,すなわち舌下神経のことである.頚動脈内膜剝離術(carotid endarterectomy:CEA)において,舌下神経の温存・保護は手術成績の向上のために重要な課題である.舌下神経の損傷は,舌の患側偏位,構音障害,嚥下障害を引き起こす.Cunninghamら1)は,CEAによる舌下神経障害の合併率を1.6%と報告した.合併症としての脳神経障害のなかでは最多である.その主な原因は,舌下神経の走行にあると考えられる.舌下神経は,頚部において,はじめは迷走神経および内頚静脈の後外側にあるが,茎突舌骨筋および顎二腹筋後腹の内側で弓状をなして前下方に進み,舌骨舌筋の外側で多くの枝に分かれて舌筋に分布する.経験の浅い術者は,顎二腹筋を牽引して頚動脈遠位部を露出させる際に,近傍を走行する舌下神経を損傷する可能性がある.

Occipitalgiaという医学用語

著者: 北井隆平 ,   近藤真冶

ページ範囲:P.78 - P.78

 先日,国内発行雑誌の英語論文を読んでいて違和感を覚えた.その論文タイトルにsevere occipitalgiaと書かれていたからである.後頭部痛を英語で表記するならばoccipital headacheであり,occipitalgiaなる英語は存在しないと思われる.この表現では後頭部を意味するoccipit-というラテン語由来の語根に,疼痛を表すギリシア語由来の接尾辞-algiaが接続しており,一見医学英語として成り立っているように見える.ラテン語由来の語根に-algiaが接続した例は,abdominalgia(腹痛),costalgia(肋骨痛),dorsalgia(背痛)などいくつかあることも事実である.しかし,どの辞書を探してもoccipitalgiaの記載はない.また,frontalgia,parietalgia,temporalgiaといった表現についても同様の問題を指摘することができる.そこでPubMed searchを利用して,frontalgia,parietalgia,temporalgia,occipitalgiaなる語が使用されている論文を探してみたところ,first authorはわが国に留学している1人を除くとすべて日本人名であった.著者らの施設は日本全体に広がっており,ある地方の医局からこれらの言葉が広がったとの考察は成り立たないようである.学会でのプレゼンテーション,カルテや紹介状にもこのような言葉は散見され,非常に便利な表現ではある.しかしながら,わが国以外ではほとんど使用されていないことを考えると,国際社会に雄飛する後輩たちには標準的な医学表記を教えるべきだと思う.

連載 先天奇形シリーズ

(2)小児脳神経外科領域における遺伝子診断

著者: 山崎麻美

ページ範囲:P.65 - P.77

Ⅰ.はじめに

 分子遺伝子学の進歩が,先天性疾患の臨床にもたらした意義は大きい.分子遺伝子学的診断が臨床にもたらす影響の程度から,次のように分けられる.すなわち①遺伝子診断の意義が臨床的に確立し,疾患の確定診断,保因者診断,出生前診断などに寄与しているもの,あるいは疾患の分類が書き換えられつつあるもの,②疾患の一部に原因遺伝子が同定され,病態解明や疾患分類に新しい知見を呈しているものの,臨床的には遺伝子診断の意義は未確立のもの,③まったく研究段階で臨床的な意義は未確立のものである.

 小児脳神経外科領域の疾患で,遺伝子学的研究が進んだ疾患を上記にそって分類すると,①は頭蓋縫合早期癒合症,X連鎖性劣性遺伝性水頭症,滑脳症など,②は全前脳胞症,③はDandy-Walker症候群,脊髄髄膜瘤などである.

 これらの疾患についての研究の成果と臨床上の意義などについて述べていく.平成22年(2010)度の診療報酬改定では,一部の先天性疾患の遺伝子診断や遺伝カウンセリング料は保険収載され,保険診療として認められるようになったが,小児脳神経外科領域の疾患はまだその中には含まれていない.

臨床神経心理学入門

第8回 機能性疾患

著者: 小山慎一 ,   緑川晶

ページ範囲:P.79 - P.82

Ⅰ.はじめに

 頭痛やてんかんは,脳神経外科や神経内科の臨床では決して稀ではないが,それに伴う高次機能の障害は,これまで発作やその前後に関連する症候に関心が向けられてきた.しかし近年,発作間欠期でも患者を精査することによって神経心理学的な症候の存在が確認されつつある.本稿では臨床場面で見かけることの多い頭痛やてんかんに関連し,見逃しやすい神経心理学的な症候について紹介する.

脳神経外科保険診療の展望・1【新連載】

平成22年度の診療報酬改定の概要とその影響

著者: 神服尚之

ページ範囲:P.83 - P.92

Ⅰ.10年ぶりのプラス改定

 2010(平成22)年度の診療報酬改定では,診療報酬本体を1.55%引き上げる一方,薬価・材料価格を1.36%引き下げ,全体で0.19%のプラス改定となった.診療報酬改定が全体でプラス改定になるのは,2000年度の改定以来,実に10年ぶりのことである.診療報酬改定率の内訳は,医科1.74%(入院3.03%,外来0.31%),歯科2.09%,調剤0.52%となった.薬価・材料価格の内訳は,薬価▲1.23%,材料価格▲0.13%である.

 2010年度の医療費を36兆5,000億円として,改定率を医療費に換算すると,本体=約5,700億円(1.55%),医科=約4,800億円(1.74%),歯科=約600億円(2.09%),調剤=約300億円(0.52%)となる.医科は入院=約4,400億円(3.03%)と外来=約400億円(0.31%)に分けた(Fig. 1).

海外留学記

フランスで神経科学を学ぶ苦悩と楽しみ

著者: 岩室宏一

ページ範囲:P.93 - P.96

 パーキンソン病の臨床と研究に携わるべくフランスに来て10カ月,仕事においても生活においても,フランス流に翻弄されながら,数多くの貴重な経験をしてきました.私が学び,苦しみ,悩み,楽しみつつあるフランス留学の現状を報告します.

報告記

第2回日本ロシア脳神経外科シンポジウム報告記(2010年5月9~11日)

著者: 佐々木寿之

ページ範囲:P.98 - P.99

 2010年5月9日(日)~11日(火),「第2回日本ロシア脳神経外科シンポジウム(The second Japanese-Russian Neurosurgical Symposium)」が,森山記念病院名誉院長堀智勝会長のもと,目の前に広がる富士山を正面に望む富士急ハイランドリゾートホテルアンドスパにて開催されました.

 本会は,Valery Bersnev教授,高倉公朋名誉教授が日本およびロシアの脳神経外科領域における交流と,21世紀におけるさらなる発展を見出す情報交換を目的として創設されました.隔年で開催されており,第1回はThe Russian-Japanese Neurosurgical Symposiumとして一昨年4月にロシアのサンクトペテルブルグにおいて,Valery Bersnev会長,高倉公朋名誉会長のもとに開催されました.前回は日露双方から70名を超える参加者があり演題数も58を数えていました.内容も脳腫瘍,脳血管障害,脳機能性疾患,脊髄脊椎疾患,先天性疾患など多岐にわたっており,成功裏に終わりました.今回第2回をわが国において開催することによって,今後も日本およびロシアの脳神経外科学領域における人的交流と情報交換を密にすることは,両国の脳神経外科にとって大いに意義のあるものと思われます.

The 5th European-Japanese Joint Conference on Stroke Surgery報告記(2010年7月8~11日)

著者: 塚原徹也

ページ範囲:P.100 - P.101

 第5回European-Japanese Joint Conference on Stroke Surgeryが,2010年7月8日より11日まで,ドイツ,ライン川のほとりDüsseldorfにおいて開催された.会長は,Düsseldorf Heinrich-Heine-Universityの脳神経外科主任教授Prof.Dr.Hans-Jakob Steigerと私が共同で受け持ち,名誉会長に,米川泰弘Zürich大学名誉教授に就任していただいた.

 この会の前身である,The Swiss-Japanese Joint Conferences on Stroke Surgeryは,Zürich大学脳神経外科主任教授の米川泰弘先生と国立病院機構仙台医療センター院長櫻井芳明先生を中心に,2001年7月Zürich大学において開催された.第1回の会議では,未破裂脳動脈瘤とくも膜下出血がmain topicsであったが,厚生労働省からの循環器病研究費や厚生科学研究費などの援助もあり,日本からは,研究班に参加されておられる先生方を中心に参加をいただいた.2006年第3回の会議では,スイス以外のヨーロッパの国々からの参加者が増加したこともあり,名称をThe 3rd European-Japanese Joint Conference on Stroke Surgeryと改め,また,この年が,Zürich大学脳神経外科設立70周年記念にもあたることから,記念の会と共催で開催された.2008年の第4回会議では,初めてZürichを離れ,Helsinki大学のProf.Hernesniemi会長のもと,フィンランドの美しい白夜の湖岸にて開催された.

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欧文目次

ページ範囲:P.1 - P.1

お知らせ

ページ範囲:P.35 - P.35

お知らせ

ページ範囲:P.63 - P.63

投稿ならびに執筆規定

ページ範囲:P.104 - P.104

投稿および著作財産権譲渡承諾書

ページ範囲:P.105 - P.106

略語および度量衡単位について

ページ範囲:P.107 - P.107

次号予告

ページ範囲:P.109 - P.109

編集後記

著者: 寳金清博

ページ範囲:P.110 - P.110

 編集後記というものをどれほどの読者が目を通すかと考えると,自分の経験では,その歩留まりは極めて悪いように思う.しかし,言い換えると,あまり他人の目や世間の目など気にせずに,公に文章を残す貴重な機会かもしれない.そう思うと,ありがたい話である.

 「扉」では,藤井先生から熱い檄をいただいた.脳外科医であることは,医師であることに含まれ,言うまでもなく,社会人であることに包含される.そして,日本人であることはその全体を包み込む.それも「世界」の中の歴史上に存在する日本人である.僕の勝手な妄想かもしれないが,脳外科医は,高い志を持った集団であると信じている.藤井先生の熱いメッセージは,心ある若い脳外科医に必ず伝わると確信している.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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