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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科39巻11号

2011年11月発行

雑誌目次

脳の可塑性について

著者: 石内勝吾

ページ範囲:P.1031 - P.1032

 脳は不思議な臓器である.理解すればするほどに神秘的であり,かつ整然としていて興味が尽きない.いくら使い続けても消耗しない臓器は,実際,脳だけである.優れた運動選手でも,使いすぎれば肘,肩,膝,腰の故障が起こる.マラソン選手でも,代償性の心室肥大は避けられない.しかし,優れた脳科学者が頭を使いすぎて耄碌したという話は聞いたことがない.事実はむしろその逆である.1986年に「神経成長因子および上皮増殖因子の発見」でノーベル生理学・医学賞を受賞したリータ・L・モンタルチーニは,1909年イタリア・トリノ生まれの102歳.現役のイタリア上院議員で脳科学者である彼女は言う.私たちの脳はとてつもない能力があり,それを自覚すれば,さらに強化され,今まで発揮しそびれていた素質を,老齢期,人生の最期まで発揮し続けられる,と(『老後も深化する脳』朝日新聞出版).モンタルチーニの人生そのものが自己の主張を証明しているようで,なかなか説得力がある.一方,私のような凡人の脳は,なかなか自分の思うようには働いてくれない,怠惰な脳である.この原稿も,締め切りを過ぎてからパソコンに向かっている.頭を使うには苦労がいる.苦労しないで頭をうまく使いこなす解説書があればよいが,解説するには頭のことを十分理解できていないと不可能である.私自身,実際脳のさまざまな疾患を学び,治療してきたが,脳そのものの理解が十分だとは決して思えない.むしろ無知に近い.

 脳科学研究の主たるテーマは,認知と学習の神経機構,運動の発現と制御機構,情動と記憶,その他であり,従来これらのテーマに対して,分子,細胞,神経回路,脳,個体を対象として5階層で研究が行われてきたが,今年から社会活動(方法論的にはdual fMRIなどを用いる)が加わり6階層化された.同時にKOラットや二光子顕微鏡の導入,霊長類のモデル動物の作製により得られた知見をヒトの病態に関する知見と照らし合わせることが重要視されてきている.

総説

定位・機能神経外科手術―フレームベースドからフレームレスへ

著者: 深谷親 ,   山本隆充 ,   片山容一

ページ範囲:P.1033 - P.1044

Ⅰ.定位・機能神経外科とは

 定位脳手術とは,3次元座標で表した脳内の標的部位に任意の穿頭部位から到達する手術法であり,機能的脳神経外科の発展に大きく寄与してきた.一方,機能的脳神経外科は,外科的な方法にて神経系の機能調整・制御を行う脳神経外科の一分野と定義される14)

 定位脳手術と機能的脳神経外科は密接な関係をもちつつ発展してきた.しかし,定位脳手術を用いる手術がすべて機能的脳神経外科の領域に含まれるわけではなく,また逆に機能的脳神経外科治療のすべてが定位脳手術を用いて行われるわけではない.わが国では1963年に日本定位脳手術研究会が発足し,機能的脳神経外科の発展を支えてきたが,こうした状況を受け,1988年に学会名を日本定位・機能神経外科学会と変更している.その後もこうした傾向は,治療技術や手術支援機器の発展と相まって強くなってきている.

研究

カベルゴリン時代のプロラクチノーマの治療

著者: 渡邉真哉 ,   高野晋吾 ,   阿久津博義 ,   佐藤弘茂 ,   松村明

ページ範囲:P.1045 - P.1054

Ⅰ.はじめに

 2003年にプロラクチノーマ治療にカベルゴリンが導入され,今では治療の第一選択が経蝶形骨洞手術(transsphenoidal surgery:TSS)からカベルゴリン投与となっている.カベルゴリンはプロラクチン(PRL)値正常化率,腫瘍縮小率,性腺機能回復率,副作用発現率のすべてにおいて,これまでのドパミン作動薬であるブロモクリプチンとテルロンに勝る14).効果が可逆的であることの多いブロモクリプチンに対して,カベルゴリン長期寛解例では投与中止後の再発率が低いことが報告されており,現在プロラクチノーマ治療の第一選択薬である.

 カベルゴリンも含めたドパミン作動薬による治療では,中断するとPRL値が再上昇するため,長期の継続的使用が必要であることが最大の欠点と考えられてきた.しかし最近,カベルゴリンでは中断後も再発がないとする報告がある.Colaoらの報告3)では,平均4年前後の服用によりPRL値が正常化し,画像上下垂体腺腫の残存がない例で服用を中止したところ,終了後2~5年におけるPRL値再上昇率はmicroadenomaで31%,macroadenomaで36%にみられるのみで,残りの例ではPRL値の再上昇を認めなかったという.わが国での同様な検討によるエビデンスはまだ乏しい.また,臨床の現場ではさまざまなケースが存在し,妊娠を期待する女性などに手術治療を必要とするケースや,手術が根本的治療に結びつくケースがあることも確かである.

 そこで,今回われわれは,当院のデータをもとに,カベルゴリン時代のプロラクチノーマの治療について,カベルゴリン治療後の再発例および手術適応について検討した.

佐野厚生総合病院における脳卒中患者背景の実態―居住形態と脳卒中の関係

著者: 安納崇之 ,   松本英司 ,   渡辺英寿 ,   中村好一

ページ範囲:P.1055 - P.1059

Ⅰ.はじめに

 高齢社会,離婚率の増加などの社会変容に伴い,独居者(単身世帯)が年々増加傾向にある.その変化は,人口約12万5千人に及ぶ栃木県佐野市においても認められ,その中心拠点病院として機能する佐野厚生総合病院(以下,当院)の脳卒中患者背景をみても痛感する.

 脳卒中診療においては,急性期─回復期─2次予防・社会復帰・在宅療養といったスムーズな診療,連携が求められる時代となり,急性期病院では平均在院日数短縮化が推奨されてきている.そのような中で独居が退院や転院の困難因子となり,苦慮するケースもしばしば認められる.そこで,最近3年間に当院に入院した脳卒中患者を対象に,独居者の割合や性別,年齢の傾向,それに疾患や危険因子との関係について検討した.

テクニカル・ノート

Suprahepatic spaceへの脳室腹腔シャント腹腔端の再建

著者: 伊師雪友 ,   伊東雅基 ,   寺坂俊介 ,   茂木洋晃 ,   新保大輔 ,   金子貞洋 ,   寳金清博

ページ範囲:P.1061 - P.1066

Ⅰ.はじめに

 脳室腹腔シャント(VP shunt)術後の腹腔端閉塞の頻度は1.1~19%と報告されており2,3,5,6,8,13-15),決して稀ではない.閉塞が非感染性要因であれば,遠位端の腹腔内への再挿入によるシャント再建術,もしくは脳室心房シャント術が次の手術として選択されることが多い.しかしながら感染性要因による腹腔端閉塞や重篤な全身感染症を併発している症例では,遠位端の留置部位選択に難渋する.

 最近経験した腹腔内合併症によるシャント機能不全を繰り返す成人水頭症の2症例において,代替の遠位端留置ルートとして肝臓上面,すなわち右横隔膜下の腹膜腔であるsuprahepatic spaceを選択した.Suprahepatic spaceへの腹腔端再建の手技は通常の腹腔端再建術の延長線上にあり,新たな遠位端留置先として有用な選択肢と考えられたので報告する.

症例

硬膜付着をもたないシルビウス裂内髄膜腫の1手術例

著者: 宮原宏輔 ,   市川輝夫 ,   柳下三郎 ,   向原茂雄 ,   岡田富 ,   郭樟吾 ,   谷野慎 ,   瓜生康浩 ,   藤津和彦 ,   新野史

ページ範囲:P.1067 - P.1072

Ⅰ.はじめに

 髄膜腫はくも膜の表層細胞(arachnoid cap cell)から発生し,その多くは術中に硬膜との付着が確認される.しかしときに硬膜との付着をもたない場合も存在し,脳室内に発生する髄膜腫(meningioma)はその典型であるが,シルビウス裂内部に限局したいわゆる“deep sylvian meningioma”の頻度は極めて少ない.今回われわれは同部位の髄膜腫の手術例を経験した.腫瘍はシルビウス裂深部で中大脳動脈およびその穿通枝と強く癒着しており,同部位が発生母地と考えられた.実際の手術所見を提示し,本腫瘍の臨床的特徴についての文献的考察を行ったので報告する.

Medullomyoblastomaの1例

著者: 荒巻ゆかり ,   下川尚子 ,   中島進 ,   中村康寛

ページ範囲:P.1073 - P.1077

Ⅰ.はじめに

 Medullomyoblastomaは小児の小脳正中領域に発生する極めて稀な腫瘍であり,古典的なmedulloblastoma様の小型類円形細胞の増殖に混じって横紋筋線維,稀には平滑筋線維への分化を認めるという特異な組織パターンを示す.2007年の中枢神経系腫瘍のWHO分類ではmedulloblastomaの中に複数個の腫瘍亜型,組織パターンがあり,medullomyoblastomaは組織パターンの1つでmedulloblastoma with myogenic differentiationと分類されている3).本腫瘍は1933年のMarinescoとGoldsteinによる最初の報告以来13),今日まで50例余りの報告をみるにすぎず,本腫瘍の発生起源に関しても奇形腫説,血管周囲の内皮細胞や間葉系細胞由来説,原始神経外胚葉細胞由来説などが考えられているが,今なお明らかではない.

 今回われわれはmedullomyoblastomaの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

脊髄前角に偏在する特発性脊髄空洞症に対して空洞くも膜下腔短絡術を行った1例

著者: 栗栖宏多 ,   飛騨一利 ,   青山剛 ,   寳金清博

ページ範囲:P.1079 - P.1084

Ⅰ.はじめに

 MRIの進歩・普及とともに脊髄空洞症が発見される機会は増えてきている.その発生要因としてキアリ奇形,脊髄腫瘍,癒着性くも膜炎,外傷や感染などが考慮されるが,そのいずれにも属さない場合,特発性脊髄空洞症と診断される.

 特発性脊髄空洞症は比較的稀な病態であり,その治療適応に一定の見解はない.しかし,進行性の神経症状が出現した場合には,外科的治療を考慮する必要がある.外科的治療として空洞くも膜下腔短絡術が選択される.手術対象となるものの多くは空洞が大きく拡大して偏在を認めないものか,空洞が脊髄後角に偏在するものが多く,手術に際しては脊髄の最も菲薄化した後根侵入部を切開し,空洞内にチューブを留置するのが一般的である.しかし,脊髄前角に空洞が偏在する特発性脊髄空洞症に対して,空洞くも膜下腔短絡術を行った報告はない.

 今回,われわれは脊髄前角に偏在して発生した特発性脊髄空洞症に対して,空洞くも膜下腔短絡術を行い,良好な転帰を得た.その手術の際のポイントも踏まえて,若干の文献的考察とともに報告する.

神経血管減圧術により呼吸障害の著明な改善を認めた延髄圧迫症候群の1例

著者: 高口素史 ,   中原由紀子 ,   河島雅到 ,   高瀬幸徳 ,   松島俊夫

ページ範囲:P.1085 - P.1089

Ⅰ.はじめに

 延髄圧迫症候群の中で神経血管減圧術(microvascular decompression:MVD)の有効性が最も知られているのは,血管圧迫による神経性高血圧症である2,5,7,9).近年,椎骨動脈(vertebral artery:VA)の延髄圧迫によると考えられる,錐体路障害や球麻痺などの多様な症状を呈した症例に対し,MVDが有効であるとの報告が散見されるようになった4,6,8,10,12).しかしVAによる延髄圧迫のために呼吸障害を来した症例の報告は少なく,さらにMVDによる治療が奏功した症例の報告は極めて稀である11).今回われわれは中枢性呼吸障害で発症した延髄圧迫症候群の症例に対してMVDを施行し,良好な治療成績を得た1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

特異的な画像所見を呈した脳内黄色肉芽腫の1例

著者: 中尾隼三 ,   高野晋吾 ,   渡邉真哉 ,   阿久津博義 ,   松下明 ,   石井一弘 ,   増本智彦 ,   松村明

ページ範囲:P.1091 - P.1097

Ⅰ.はじめに

 黄色肉芽腫(xanthogranuloma)は1900年にBlumerによって初めて報告された4).コレステロール裂,マクロファージ(xanthoma cells),ヘモジデリン沈着物などにおける慢性炎症の細胞性反応を示し,細胞質内に脂質(lipid)の蓄積を呈する多様な性質をもつとされる良性腫瘤である.変性,炎症性,代謝性,腫瘍性など多様な性質が認められ,脳出血,脳梗塞,感染,壊死などから二次性に発生することが多いとされている.頭蓋内では脈絡叢から発生することが多く,側脳室7),第三脳室12)に認められる報告が多く,その他に鞍上部2,16),松果体部19)での報告,下垂体腺腫でも黄色肉芽腫様変化に富む例13)が散見される.脈絡叢を除く脳内の報告は少ない5,9,15)

 今回,われわれは特異的な画像所見を呈した前頭葉腫瘤で,病理組織学的に黄色肉芽腫であった1例を経験し,その画像特徴を含め考察したので報告する.

頚静脈孔部腫瘍患者に生じた同側顔面痙攣に微小血管減圧術が有用であった1例

著者: 鴨嶋雄大 ,   寺坂俊介 ,   下田祐介 ,   福田聡 ,   寳金清博

ページ範囲:P.1099 - P.1103

Ⅰ.はじめに

 顔面痙攣は間欠的に不随意に生じる片側性の顔面筋の収縮であり,一般的に後下小脳動脈,前下小脳動脈,椎骨動脈を責任血管とした頭蓋内顔面神経根出口帯(root exit zone:REZ)への機械的圧迫により生じる6).一方,稀ではあるが小脳橋角部腫瘍,脳動静脈奇形,脳幹神経膠腫に伴う症候性顔面痙攣(symptomatic hemifacial spasm)もこれまで報告されている14,15).小脳橋角部腫瘍に伴う症候性顔面痙攣では,腫瘍そのものによる顔面神経への機械的圧迫のほか,腫瘍存在下の血管や,くも膜の偏移がREZに対する機械的圧迫の原因となる場合もあることが報告されており,原疾患である腫瘍摘出により改善が得られたケースも散見される11,14).しかし,これまで頚静脈孔部腫瘍患者に顔面痙攣を生じた報告は1例の報告が認められるのみであるため8),発症機序,治療法など不明瞭な点も多い.特に治療法に関しては下位脳神経症状が出現していないケースでは,同部腫瘍に対する積極的外科治療の適応は低く,同患者に生じた副次的症状である顔面痙攣に対する治療は悩ましい問題である.今回われわれは,放射線治療後に外来にて経過観察されていた無症候性頚静脈孔部腫瘍患者に同側顔面痙攣を認め,ボツリヌス毒素,内服治療を試みた後に微小血管減圧術を行い,顔面痙攣消失が得られた1例を経験した.症候性顔面痙攣に対する治療に関して考察を加え報告する.

書評

イラストレイテッド 脳腫瘍外科学―河本 圭司,本郷 一博,栗栖 薫●編

著者: 𠮷田純

ページ範囲:P.1089 - P.1089

●若い脳神経外科医の入門書として最適

 脳腫瘍は脳神経外科において重要な分野であり,テーマである.そしてその医療の質と内容は,近年の生命科学,情報科学,そして科学技術の進歩により,大きく変貌・発展してきた.特に病態解明や診断においては,分子生物学,遺伝子工学,そして画像工学が大きな役割を果たしてきた.一方治療においては,19世紀に欧米で開発された近代脳神経外科より現在に至るまで,中心は外科手術である.そして現在の主流は顕微鏡手術,内視鏡手術および最近導入されてきたナビゲーションとモニタリングを用いた画像誘導手術となっている.

パーキンソン病治療ガイドライン2011--日本神経学会●監修,「パーキンソン病治療ガイドライン」作成委員会●編

著者: 澁谷統寿

ページ範囲:P.1103 - P.1103

 医療には事実と論理に基づく科学性と,経験や伝承に基づく非科学性が混在しており結果を予想できないことが多く,医師の経験則がいくら豊富であっても必ずしも患者にとって良い結果をもたらすとは限らない.経験的に最も尊重されていることは,患者さんと真面目に向き合って対話し,いかに信頼関係を築くかである.臨床医は専門性(自律性)の立場から,一人一人の患者の選択すべき道を示し,臨床現場ではどのような場面に遭遇しても適切に判断し対処できる能力を養っておくことが必須である.その過程で根拠に基づく治療ガイドラインの利用は医療の質の標準化(均一化)に有用であり,その普及は社会における医療の在り方を問い直すものである.

 『パーキンソン病治療ガイドライン2011』は「抗パーキンソン病薬と手術療法の有効性と安全性」と「クリニカル・クエスチョン」の2編構成となっている.前者は2001年以降のエビデンスを踏まえ,薬剤や手術療法の有効性,安全性,臨床使用での注意事項や今後の検討課題についてガイドライン作成委員会の現在の考えが簡潔明瞭に記載されている.

連載 先天奇形シリーズ

(12)くも膜囊胞

著者: 稲垣隆介

ページ範囲:P.1105 - P.1111

Ⅰ.はじめに

 くも膜囊胞は頭蓋内囊胞性疾患の約1%を占めるとされる.米国での剖検結果からは1,000例に1例程度が認められると報告されている24)

 くも膜囊胞がどのような機序で形成されるかはまだわかっていないが,女児より男児に多く,また,人種に関係なく左側に多いことが知られている.くも膜囊胞は髄液腔であればどこに存在してもよいが,30~50%は中頭蓋窩にできるとされる.その他には,脳表,トルコ鞍上部,四丘体部,小脳橋角部,後頭蓋窩正中部などに認められる7)

 本稿では一般的なことを最初に記載し,発生部位によるそれぞれの特徴,診断のポイントなどについて述べる.

報告記

第10回国際定位放射線治療学会報告記(2011年5月8~12日)

著者: 鈴木聡

ページ範囲:P.1112 - P.1113

 2011年5月,初夏を思わせるパリで,第10回国際定位放射線治療学会[10th Biennial Congress of the International Stereotactic Radiosurgery Society(ISRS)]が開催されました.今回はISRS発足から満20年を記念する会でした.開会式では会長のRégis教授があいさつし,このたびの東北地方を中心とした震災・津波被害に対する哀悼の意を表されました.

 ISRS congressは会を追うごとに規模が大きくなっているとのことで,今回は50以上の国と地域から740名を超える参加者がありました.口演161,ポスター315の発表のうち,日本からの演題は,口演22,ポスター40で,米国に次ぎ第2位でした.今学会では,定位放射線治療がその対象を体幹部疾患へと着実にすそ野を広げていることが実感されました.Stanford大学のAdler教授は,“The Future of Extracranial Radiosurgery”というテーマで特別講演し,不整脈や疼痛に対するアブレーションに定位放射線照射が有用である可能性を,動物実験レベルで証明していました(写真1).

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欧文目次

ページ範囲:P.1029 - P.1029

お知らせ

ページ範囲:P.1059 - P.1059

お知らせ

ページ範囲:P.1072 - P.1072

ご案内 第7回 日本統合失調症学会

ページ範囲:P.1113 - P.1113

テーマ 統合失調症患者・家族のニーズを適える研究成果を目指して

会 期 2012年3月16日(金)~17日(土)

会 場 愛知県産業労働センター(ウインクあいち)

文献抄録 NFKBIA deletion in glioblastomas

著者: 高柳俊作

ページ範囲:P.1115 - P.1115

文献抄録 Dopamine agonist-resistant prolactinomas

著者: 廣畑倫生

ページ範囲:P.1115 - P.1115

投稿ならびに執筆規定

ページ範囲:P.1116 - P.1116

投稿および著作財産権譲渡承諾書

ページ範囲:P.1117 - P.1118

略語および度量衡単位について

ページ範囲:P.1119 - P.1119

次号予告

ページ範囲:P.1121 - P.1121

編集後記

著者: 高安正和

ページ範囲:P.1122 - P.1122

 今日,脳神経外科医がカバーする分野は非常に幅広く,脳血管障害,血管内治療,脳腫瘍,脊髄外科,神経外傷,定位・機能神経外科,神経内分泌,小児脳神経外科などさまざま領域が含まれる.さらにリハビリテーションや,本号に掲載されている疫学に関するものまで広く扱われる.また,それぞれの分野の進歩は急速であり,1人の脳神経外科医として個々の分野についての基本的な知識をもって診療にあたることは大切であるが,すべての分野に対して最新の知識や技術を維持してゆくことは不可能である.そこでsubspecialtyを絞らざるを得ない.しかし,最近の若い人たちの中には,早くからsubspecialtyを1つに絞ってしまって他の分野に関心を持たなくなるものがいて,これも大きな問題である.個人の関心や適性は時代とともに変わっていく可能性があり,また,複数の分野に関心を持つことで他の分野の知識や経験を活かすことができ,結果的にそれぞれの分野の診療・研究の深みが増すこともある.そこで常々,若いうちは少なくとも2種類ぐらいのsubspecialtyを持つことをお勧めしている.私自身は,はじめ脳血管障害の臨床・研究に打ち込んだ時期があり,卒後10年ぐらいから脊髄外科を専門分野に加えた.次第に後者に関心が移って今日に至っているが,脳血管障害の分野で得た知識や経験は,脊髄外科を行うにあたり大いに役立っていると考えている.

 さて現在,脳神経外科関連の雑誌はいくつかあるが,本誌「脳神経外科」は,脳神経外科の幅広い分野にわたるトピックスに関する論文が,臨床・研究を問わず掲載されているのが特徴である.自分の専門分野以外の記事を手軽に読むことができるのも楽しみであり,それが本誌の真骨頂でもある.本号の「扉」では,石内勝吾先生が「脳の可塑性について」というタイトルで神経科学について格調の高い文章を書かれている.ご自身では「脳そのものの理解は,無知に近い」と謙遜して述べられているが,先生の脳科学への造詣の深さを垣間見る思いであった.また,本号の総説では深谷親先生に定位・機能神経外科の歴史から最新の手技まで,多くの写真を用いて解説いただき,たいへん勉強になる.研究論文も興味深く,渡邉真哉先生の「カベルゴリン時代のプロラクチノーマの治療」は,現在下垂体腫瘍の治療から距離を置く私のようなものにも分かりやすい.安納崇之先生は独居者に注目した脳卒中に関する疫学調査について書かれている.先天奇形シリーズでは稲垣隆介先生が「くも膜囊胞」について分かりやすく解説されており,1編のテクニカルノート,6編の症例報告なども多彩であり,読み応えのある号に仕上がっている.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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