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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科39巻12号

2011年12月発行

雑誌目次

年報(Annual Report)作成と扉

著者: 池田幸穂

ページ範囲:P.1125 - P.1126

 毎月本誌が送られてくると,私がまず目を通すのが,最初の「扉」です.「扉」を執筆される先生方と,立場や年代が近いこともあって,各先生のいろいろな思いが伝わってきて興味深く読ませていただいております.さて,どの教室も論文・学会発表・手術件数・入院患者数など,教室の実績を盛り込んだ年報(Annual Report)を作成されておられると思います.私の現在の職場は本院ではないため,当初は作成に躊躇していたのですが,新卒後臨床研修制度の導入も視野におき,医局の活動を肩の凝らない形で紹介する目的で,毎年作成しております.最初の「扉」の頁として「巻頭言」を書いています.記載の多くは,1年間の病院・医局の活動実績の総括とし,残りの部分に,私がその時々に感じた雑感を付記しています.今回の本誌「扉」では,過去数年の年報に記載した私の雑感の一部を紹介したいと思います.

 世の中は,IT,グローバリゼーションといった言葉に代表されるように,なにもかも超高速化の流れです.一方,このような流れに必ずしも異論を唱えるわけではないでしょうが,『スローライフ』(筑紫哲也著),『本の読み方 スロー・リーディングの実践』(平野啓一郎著)なるタイトルの2冊の本に接する機会がありました.さらに,「スロー・フード」,「スロー・ラブ」なる表現も最近,散見されています.入局当時,恩師から言われたことをふと思い出しました.「臨床や研究の姿勢で重要なことは,決して流行にとらわれないこと,そして常にSlow but Steadyであれ」.(Annual Report 2006:2007年1月記)

総説

中枢神経系への放射線照射によって生じる高次脳機能障害の評価ならびに予防法の開発

著者: 石内勝吾

ページ範囲:P.1127 - P.1137

Ⅰ.はじめに

 中枢神経系に対する放射線照射は,原発性および転移性脳腫瘍ばかりでなく,頭頚部腫瘍,リンパ腫/白血病に対しても広く行われている重要な癌治療法である.しかし,小児および成人を問わず,脳への広範な放射線照射は記憶,注意,遂行,社会的行動などの高次脳機能の障害38)を来すことが知られている.腫瘍が制御された患者においては,治療終了後数カ月から数年後に生じる晩発性放射線障害による認知機能低下は生活の質を低下させるため克服すべき重大な課題であり,近年社会問題化している.3歳以下の小児では特に重篤な発達発育障害や知能低下が必発である.悪性リンパ腫患者においても,高濃度メソトレキセート療法後の放射線療法は,放射線量を40~50Gyに軽減しても,長期生存患者では白質障害による認知機能低下が必発である.これら放射線治療によって引き起こされる高次脳機能障害は,従来,生命予後を優先し看過されてきたが,脳疾患の予防,治療,周術期管理,リハビリテーション,外来治療すべてを担うわれわれ脳神経外科医にとっては,日常診療で遭遇している極めて身近な克服すべき重要な問題である.

 最近では,放射線による高次脳機能障害の原因として,海馬歯状回の神経新生の障害との関連が示唆されている5).転移性脳腫瘍に対する線量計画においては,視交叉・視神経同様,積極的に神経幹細胞が局在する側脳室壁を照射野から除外する試みもなされている.本邦では認知機能低下を危惧し,転移性脳腫瘍の手術後の補助療法としての放射線治療は,欧米で推奨されている全脳照射を回避する傾向にある.ガンマナイフやサイバーナイフなどを用いた高線量局所放射線,もしくは強度変調放射線療法により,腫瘍に放射線を収束させ,神経幹細胞の局在部位への照射量を軽減する試みも施行されている.

 本稿では,臨床における高次脳機能診断の実際とその評価,放射線治療経過に伴う高次脳機能障害の特徴,放射線が誘発する高次脳機能障害と海馬歯状回の神経新生との関連について論じることにする.

研究

柔道における重症頭部外傷

著者: 永廣信治 ,   溝渕佳史 ,   本藤秀樹 ,   糟谷英俊 ,   紙谷武 ,   新原勇三 ,   二村雄次 ,   戸松泰介

ページ範囲:P.1139 - P.1147

Ⅰ.はじめに

 スポーツによる頭部外傷は,日本においては柔道やボクシングなどの格闘技,ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツ,スノーボードなどで頻度が高い1-3,6,8,10-13).近年,柔道練習中の頭部外傷による死亡事故が,マスコミなどで相次いで報道されており,社会的にも注目されている12).柔道による頭部外傷が重症化する原因は,ほかのスポーツ外傷と同様に急性硬膜下血腫による場合が多いとされている1,2,6,8,12,13)が,その発生頻度や発生状況,治療と転帰の詳細や対応マニュアルなどに関しては,これまで詳細には報告されていない.2012年度から,中学体育への武道(柔道・剣道・相撲)の必修化に伴い,さらに頭部外傷事故の増加が懸念されており12),今回,全日本柔道連盟(全柔連)の要請を受け,全柔連の「損害補償・見舞金制度」に報告された事故例を解析する機会を得たので,柔道による重症頭部外傷の特徴と対策について検討した.

成人慢性硬膜下血腫の疫学に関する検討―宮城頭部外傷研究会多施設共同登録調査より

著者: 刈部博 ,   亀山元信 ,   川瀬誠 ,   平野孝幸 ,   川口奉洋 ,   冨永悌二

ページ範囲:P.1149 - P.1153

Ⅰ.はじめに

 慢性硬膜下血腫は,脳神経外科の日常診療において最も遭遇する頻度の高い疾患の1つである.その疫学に関しては,現在においても1975年のFoelholmらのHelsinki研究2)がしばしば引用されているが,発生頻度1つをとっても人口10万人あたり年間1.7人と,今日の臨床経験から得られる印象とは大きくかけ離れたものになっている.本邦においては,約20年前の淡路島研究の報告7)があるのみで,以降の慢性硬膜下血腫の疫学報告は皆無である.慢性硬膜下血腫は高齢者に好発する疾患としても知られるが1,2,7),本邦の急速な高齢化とそれに伴う社会環境の変化は,慢性硬膜下血腫の疫学に大きな影響を与え得ることは想像に難くない.

 宮城頭部外傷研究会では,1996年より入院設備を擁する宮城県内すべての脳神経外科施設で頭部外傷入院症例の多施設共同登録事業4-6)を行っており,宮城県内で受傷・入院した各種頭部外傷例について,ほぼ全症例の把握が可能である.そこで今回われわれは,宮城頭部外傷研究会多施設共同登録調査から成人慢性硬膜下血腫の疫学について調査・研究したので報告する.

テクニカル・ノート

Dural scoring:開頭術における硬膜一次閉鎖の補助手技

著者: 清水曉 ,   近藤宏治 ,   山﨑友也 ,   中山賢司 ,   山本勇夫 ,   藤井清孝

ページ範囲:P.1155 - P.1158

Ⅰ.はじめに

 開頭術における硬膜閉鎖には髄液漏の阻止が要求され,縫合による一次閉鎖がgold standardである.しかし,硬膜の収縮・緊張により辺縁を寄せきれない症例にしばしば遭遇する.この数mm幅の間隙を縫合糸のみで引き寄せようとすると,裂け目を生じ,かえって閉鎖が不完全となり髄液漏を発生させる.また,縫合による硬膜の緊張は,術後頭痛の一因となり得るため望ましくない5).縫合による一次閉鎖が不可能な例では自家組織や人工材料(人工硬膜やsealant)を用いた補塡を行い得るが,前者は術野で十分に得られない場合があることと採取による整容的リスクが問題となり,後者は狭い硬膜間隙に用いると材料の大部分が余剰となるため,省資源・省コストの観点から使用に躊躇する.

 本稿では,これらの問題を解決し,縫合による硬膜の一次閉鎖を補助する簡便な手技を提示する.

症例

妊娠高血圧症候群に合併した産褥期脳出血の1例

著者: 松田良介 ,   藤本京利 ,   田村健太郎 ,   本山靖 ,   朴永銖 ,   中瀬裕之

ページ範囲:P.1159 - P.1164

Ⅰ.はじめに

 妊産婦に脳出血が発症することは妊娠合併症として認識すべき重要な病態である.脳出血の原因としては,既存の脳血管障害によるもやもや病15),脳動静脈奇形10),脳動脈瘤21)などが挙げられるが,その他にも妊娠特有の病態として妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension:PIH)3-6,8,9,11,16-18,22)に続発するものなど多岐にわたる.今回われわれはPIHに合併した産褥期脳出血を来した1例を経験したので,文献的考察を踏まえて報告する.

Nocardia farcinicaによる脳膿瘍の2例

著者: 井澤大輔 ,   阪野和重 ,   奥村浩隆 ,   桑田俊和 ,   辻直樹

ページ範囲:P.1167 - P.1172

Ⅰ.はじめに

 Nocardia症は,高齢者をはじめ後天性免疫不全症候群,臓器移植術後,造血系悪性疾患,ステロイド長期投与など免疫能の低下した患者の増加に伴い,近年増加傾向にある4,8,19).一方,免疫能の低下を伴わない健常成人で発症したという報告も散見される7,11,14,22,25).また,Nocardia脳膿瘍は全脳膿瘍のうち約2%と比較的稀であるが,その死亡率は他の脳膿瘍の3倍と予後不良である12,17).今回,比較的健常な成人に発症したNocardia farcinica(N. farcinica)による脳膿瘍の2例について,若干の文献的考察を加えて検討し報告する.

錐体静脈の術前評価における3次元画像の有用性:4例報告

著者: 高尾哲郎 ,   高口素史 ,   中原由紀子 ,   河島雅到 ,   松島俊夫

ページ範囲:P.1175 - P.1181

Ⅰ.はじめに

 三叉神経痛や脳腫瘍などに対する上部小脳橋角部の手術では,錐体静脈(petrosal vein:PV)の存在が手術の妨げになる.また,その分枝の1つであるvein of the cerebellopontine fissure(VCPF)を含むPVの切断は,小脳の出血性梗塞など重大な合併症を起こし得ることが知られており,極力温存するよう努力すべきである3,4,5).他方,これらのPVをうまく処理できれば,術中のランドマークとなり得る.したがって,PVの術前評価は当部位の手術において非常に重要であり,われわれは術前に3次元(three dimension:3D)画像検査を行っている.4症例を提示し,その検査の有用性について報告する.

成人発症の単発型眼窩部ランゲルハンス細胞組織球症の1例

著者: 神宮字伸哉 ,   尾山徳秀 ,   米岡有一郎 ,   福多真史 ,   藤井幸彦

ページ範囲:P.1183 - P.1188

Ⅰ.はじめに

 ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)は,以前はhistiocytosis X,eosinophilic granuloma,Letterer-Siwe病,Hand-Schüller-Christian病などと呼ばれた疾患の総称である.主に1~3歳に好発し,小児における年間発症率は100万人に5人前後とする報告が多く2,13),成人発症例はさらに少ないとされる9).病的なランゲルハンス細胞が異常増殖する非腫瘍性の疾患で,全身に病変が生じ得る可能性があるが,骨病変の頻度が最も高く,なかでも頭蓋骨に生じることが多い9).現在では,罹患する臓器と病変の数により,単一臓器単発(single-system single-site:SS)型,単一臓器多発(single-system multi-site:SM)型,多臓器病変(multi-system multi-site:MM)型と分類される.

 今回,われわれは成人発症の眼窩に発生したLCHを経験したので報告する.

経静脈的液体塞栓術にて治療した海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の2例

著者: 平松匡文 ,   杉生憲志 ,   徳永浩司 ,   西田あゆみ ,   栗山充夫 ,   前城朝英 ,   寺坂薫 ,   伊達勲

ページ範囲:P.1189 - P.1196

Ⅰ.はじめに

 海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(cavernous sinus dural arteriovenous fistula:CSdAVF)の根治的治療としては,血管内治療による経静脈的塞栓術(transvenous embolization:TVE)が主流であり,使用する塞栓物質としては,コイルが頻用されている3-5).今回われわれは,CSdAVFに対するTVE中に,コイルのみでは不完全閉塞に終わりそうな状況となり,緊急避難的に液体塞栓物質n-butyl-cyanoacrylate(NBCA)を経静脈的に注入することにより,合併症を来すことなく根治が得られた2症例を経験したので報告する.

脳出血にて発症した頭蓋内pial arteriovenous fistulasの1例

著者: 大下純平 ,   大庭信二 ,   伊藤陽子 ,   迫田英一郎 ,   石原聡士

ページ範囲:P.1197 - P.1202

Ⅰ.はじめに

 Pial arteriovenous fistulas(pial AVF)は脳動脈と脳静脈がnidusを介することなく直接交通するものであり,脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)や硬膜動静脈瘻(dural AVF)とは異なる病態である3,5).発症頻度は頭蓋内動静脈短絡疾患のうち1.6~4.8%2,7,12,13)とされ,稀な疾患である.頭蓋内出血で発症する場合も多いが,出血発症例の場合は保存的治療では予後不良であるため9),早期に血管内治療や開頭手術などの根治的治療が必要となる.今回われわれは,脳出血で発症したpial AVFに対して直達手術を行い,良好な予後を得ることができた.当症例について文献的考察を含めて報告する.

書評

基礎から読み解くDPC 第3版 実践的に活用するために--松田 晋哉●著

著者: 堺常雄

ページ範囲:P.1164 - P.1164

 2003年にDPCが特定機能病院に先行導入されてから8年が過ぎ,大きな変革の時期を迎えている.DPCの変遷に合わせて刊行されてきた本書も第3版となり,その存在意義は版を重ねるごとに大きくなっている.今後の大きな変革を予期させる2010年度改定後に刊行された本書は,サブタイトルもこれまでの『正しい理解と実践のために』から『実践的に活用するために』に変わり,著者の意気込みが感じられる.

 病院の運営でいちばん大切なのは診療の質と経営の質であり,2つが相まって初めて健全な医療を提供することが可能である.公的病院が次々と独立法人化し,民間病院も社会医療法人化されるなかでこのような考えはますます重要になってきている.著者はまえがきで「……したがって,それを用いることで臨床面・経営面で各施設を共通の視点から評価することが可能……」と述べているが,まさにDPCが良質な医療を担保するうえでのツールであることを示しているものといえる.

イラストレイテッド 脳腫瘍外科学--河本 圭司,本郷 一博,栗栖 薫●編

著者: 寺本明

ページ範囲:P.1173 - P.1173

●ScienceとArtが織りなす“脳腫瘍外科学”

 東日本大震災直後の2011年3月15日,医学書院から,河本圭司・本郷一博・栗栖薫の3名の先生方の編集による 『イラストレイテッド脳腫瘍外科学』が発刊された.わが国には「日本脳腫瘍の外科学会」という既に定着した学会があるので,この本の名称自体には違和感はなかったが,“脳腫瘍外科学”という名前の成書はこれまでなかったのではなかろうか? そもそも脳腫瘍は,その治療過程において原則として何らかの手術を必要とする.そのため,主な脳腫瘍に関する手術書は数多く出版されてきた.また一方では,脳腫瘍のいわゆる解説書も少なからず入手することができる.

 しかし,本書は,“脳腫瘍の手術は脳腫瘍を包括的に理解した上で取り組むべきである”,という編者らの強い思い入れによって制作されている.ちなみに筆者は,下垂体外科を専門としているが,常々下垂体腫瘍を手術する医師は間脳下垂体内分泌学に精通していなければならないと考えている.すなわち,外科医的な発想だけで手術をすると,腫瘍全摘出イコール治癒と考えがちである.下垂体腫瘍の治療体系において手術は確かに重要なステップではあるが,薬物療法や放射線療法,さらには術後のホルモン補償療法などを十分念頭に置いて治療しなければ,患者をトータルに治したことにはならないのである.同様に,脳腫瘍の手術では,単に手術のテクニックという側面だけでなく,術前・術中・術後管理や長期フォローを含めて総合的に脳腫瘍を理解していなければ優れた手術を実施することはできない.そのような編者らのコンセプトが本書を貫いていると思われる.

病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方 IDATEN感染症セミナー--IDATENセミナーテキスト編集委員会●編

著者: 香坂俊

ページ範囲:P.1207 - P.1207

 ああ,またですか.抗菌薬の選択が議論にもならずスルーされていくのをみて,僕はため息をつきます.しかも,よりによってカテーテルをそのまま残しておいていただいているなんて,培養はどうなっているのでしょうか? もう提出済みですか? しかも,そのサンプルは2セットともカテーテルから取ったから問題ない? いやあ,感激です.これで緑膿菌が出たらコンタミでも何でも治療を開始できますね.え,もうメロペネムが使われている? それはもう神の一手ですね.文字通り言うことは何もありません.

 臨床感染症というのはもっといろんな科の先生が知っていてもいいのではないかと思います.その上で身近な疑問に答えていただけるエキスパートがいてくれるとありがたいのですが,そんなぜいたくは望んではいけませんよね.かといって成書を読んでもきめ細かいところがわかりません.分量も多いし,別にわかっていることを全部書いてくれなくてもいいのですよ.培養の取り方とカテ抜去のタイミング,そこが知りたいのです.

報告記

第2回国際もやもや病ミーティング報告記(2011年7月21~22日)

著者: 菊田健一郎

ページ範囲:P.1204 - P.1205

 2011年7月21~22日に,第2回国際もやもや病ミーティング(2nd International Moyamoya Meeting)がチューリッヒ大学子供病院で開催された.主催はチューリッヒ大学小児脳神経外科のNadia Khan先生と小児外科教授のMartin Meuli先生であった.この研究会は欧州,米国,アジアのもやもや病研究者が集まってディスカッションすることを目的として,Khan先生が企画された少人数のミーティングである.第1回は2009年にStanford大学のGary Steinberg教授のもとで開催されたが,鳥インフルエンザ騒動のため海外渡航制限がかかり,私も含め多くの日本人研究者が参加できなかったものである.

 会はチューリッヒ大学子供病院にある小さな階段教室式のホールで行われた.初日は午後からKhan先生,Meuli教授のopening remarkのあと,honorary guest speakerである米川泰弘先生の講演で開始された.米川先生は京都大学の助教授時代に厚生労働省もやもや病研究班に参加されていたが,日本のもやもや病研究の歴史的背景,さらにチューリッヒに移られてからの研究成果について総括された.次に,Micheal Scott先生(Harvard Medical School)が米国のもやもや病診療についてまとめられた.25年間に小児もやもや症候群に対して行われた611件のEDAS(encephalo-duro-arterio-synangiosis)手術の手技と成績を発表されたが,術中に脳虚血モニタリングとして脳波を積極的に用いられている点は日本と異なっており興味深かった.

第11回国際脳血管攣縮学会報告記(2011年7月21~23日)

著者: 吉川雄一郎

ページ範囲:P.1206 - P.1207

 2011年7月21~23日の3日間にわたり,第11回国際脳血管攣縮学会(Vasospasm 2011:11th International Conference on Neurovascular Events after SAH)が,Mayfield ClinicおよびUniversity of Cincinnati教授のMario Zuccarello会長のもと,アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティで開催されました.

 シンシナティは,オハイオ州とケンタッキー州との境を流れるオハイオ川の北側の河畔に位置する人口約30万人の都市で,MLBシンシナティー・レッズやNFLシンシナティ・ベンガルズの本拠地でもあります.会場となったのは,大恐慌時代に建設されたHilton Cincinnati Netherland Plaza,通称Carew Towerと呼ばれる市のシンボル的高層建築物で,合衆国の国定歴史建造物・登録財にも指定されています.

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欧文目次

ページ範囲:P.1123 - P.1123

お知らせ

ページ範囲:P.1153 - P.1153

お知らせ

ページ範囲:P.1188 - P.1188

「読者からの手紙」募集

ページ範囲:P.1196 - P.1196

ご案内 第3回 国際頚椎学会アジア太平洋部門(3rd Annual Meeting of Cervical Spine Research Society, Asia-Pacific Section: CSRS-AP)

ページ範囲:P.1202 - P.1202

会  期 2012年4月21日(土)・22日(日)

会  場 JR博多シティ(〒812-0012 福岡県福岡市博多区博多駅中央街1-1)

投稿ならびに執筆規定

ページ範囲:P.1210 - P.1210

投稿および著作財産権譲渡承諾書

ページ範囲:P.1211 - P.1212

略語および度量衡単位について

ページ範囲:P.1213 - P.1213

次号予告

ページ範囲:P.1215 - P.1215

編集後記

著者: 吉峰俊樹

ページ範囲:P.1216 - P.1216

 私の生活する神戸や大阪では,10月を迎えると木々の緑に勢いがなくなり,山々に黄や赤みが少し混ざってきます.人々の気分は落ち着いて日本の秋が深まります.11月は冷気のなか,六甲や生駒の山に毎年恒例の色とりどりのパッチワークができ上がります.さて,今は12月.木は枯れ,山は枯れ,空き地では枯れたすすきが穂を揺らし,街に出ると夕暮れどき,みぞれに濡れる路面を車がうしろ姿をみせて時折寂しく走り去ります.が,角を曲がると突然意表を突く賑やかなクリスマス音楽のなか,華やいだ街を人々が重なりながら行き交います.寂しさと華やかさのコントラストはなかなか心に馴染みません.

 ふと病棟の患者さんを思い出します.賑わう街と静まりかえった病室,健康と病気.永遠に健康というわけにはいかないとすると,健康はとりあえず人々に預けられたプレゼントのようなものです.このプレゼントはいつも奪われようとしています.とすると,このプレゼントを守るために戦っているのが医学かなと思います.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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