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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科39巻6号

2011年06月発行

文献概要

症例

脳梁部の腫瘍病変により吃音の再発と新たに症候性吃音を呈した1例

著者: 関泰子1 前島伸一郎1 大沢愛子1 宮崎泰広1 脇谷健司2 西川亮2 棚橋紀夫3

所属機関: 1埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーション科 2埼玉医科大学国際医療センター脳脊髄腫瘍科 3埼玉医科大学国際医療センター神経内科・脳卒中内科

ページ範囲:P.581 - P.587

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Ⅰ.はじめに

 吃音(stuttering)は「音・音節の繰り返しや引き伸ばしによって,または構音の構え,あるいは回避や阻止などのもがき反応によって,発話の流れが妨害されたときに発生するもの」をいう21).吃音は一般に幼児期に発症するため,発達性吃音(developmental stuttering)16)とも呼ばれる.一方,脳損傷後に発症するものは症候性吃音(acquired stuttering)8)と呼ばれているが,発達性吃音との関係は明確ではない.また,脳損傷後の発話障害には,症候性吃音のほかに運動性構音障害,同語反復症,早口症などがある.言語機能の障害である失語症においても非流暢な発話を呈することがある.症候性吃音と他の言語障害との鑑別についても必ずしも明確にはされておらず,鑑別困難とする研究者16)もある.

 今回われわれは,小学校1年時に発吃し20歳頃までに軽快するが,脳腫瘍の発症とともに再び吃症状を呈した症例を経験したので報告する.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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