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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科39巻8号

2011年08月発行

文献概要

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編集後記

著者: 新井一

所属機関:

ページ範囲:P.832 - P.832

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 3月11日の東日本大震災の発生から,4カ月が過ぎようとしています.被災された方々に,改めて心よりお見舞い申し上げます.今回の大震災により,多くの尊い生命が奪われました.自然の脅威にわれわれ人類が,いかに無力か感じざるを得ません.しかし一方で,福島原子力発電所の事故発生から現在までの経過をみると,「扉」で川原信隆先生がご指摘されているように,起こってほしくない事態を「想定を超える」と称して議論することを避け,それに対する準備を怠ったために生じた人災の側面もあるのではないかと思われます.起こってほしくない事態を敢えて直視しないのは,日本人の国民性なのでしょうか.少し大袈裟かもしれませんが,昭和20年以降の戦後の時代を,経済の復興・成長を最優先にして,国家の在り様などの基本的な事柄については敢えて国民的な議論をせずに過ごしてきたこととも関連しているような気がします.ただ,このような状況のなかで,被災地におけるボランティア活動に医療従事者を含む多くの人々が汗を流している姿をみると,被災された方々ばかりでなく私達も元気づけられる思いです.私自身4月に入り,福島県いわき市に行く機会を得ました.海岸近くにある病院は,津波により大きな被害を受けておりましたが,そのなかでも一部の診療が再開されており,それが患者やその家族,さらには地域の住民に大きな安心を与えていることを知りました.十分な設備やスタッフが揃って診療を行うのが当たり前となってしまった現代の医療ですが,医療の原点を見せつけられた思いでありました.

 本号の総説には,中島八十一先生による「頭部外傷後の高次脳機能障害の診断」が掲載されています.最近しばしば社会問題として取り上げられることも多い頭部外傷後の高次脳機能障害ですが,その診断に苦慮することも少なくありません.中島先生による総説が,日常診療の現場において読者諸氏の助けになれば幸いです.また,本号には米川泰弘先生から,後頭下開頭に関する20ページ以上にも及ぶ熱のこもった原稿をお寄せいただきました.本邦ではなかなか行われることのない座位の手術ですが,米川先生のすばらしい手術,特に小脳上面からのアプローチは非常に印象的であります.その他研究1編,症例報告5編などいずれも力作で,読者必読の論文が揃った本号となりました.脳神経外科医は,こういう時だからこそ一生懸命勉強をしなくてはなりません.そして,その本分を果たすことによって,被災地の復興に少しでも役に立てるのではないかと思っています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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