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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科4巻10号

1976年10月発行

文献概要

総説

不随意運動

著者: 松本圭蔵1

所属機関: 1徳島大学脳神経外科

ページ範囲:P.923 - P.931

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 「百聞は一見に如かず,兵は隃に度り難し」と漢書(趙充国伝)にある.その正しい解釈は知らないが,自己流に理解する限り,この語ほど不随意運動の臨床と研究にうまくあてはまるものはない.不随意運動はいろいろさまざまで,その運動を適確に表現し記録することはきわめてむずかしい.つまり,その運動を一見すれば誰でもすぐ認識できるが,文章や言葉で描き出すことは困難である.また,その病態生理機構すなわち中枢神経系のいかなる異常によってこのような不随意運動が発現してくるのかということは,現代の進歩した神経科学をもってしても,にわかにはかりがたいものばかりである.
 神経化学的研究からParkinsonismにおいて,黒質線体系のdopamineの減少がみいだされた.このdopamincの減少した状態を補うL-DOPA療法は臨床治療学上,大きな進歩をもたらした.しかし,それではなぜdopamineの減少によってParkinsonismの振戦,固縮,無動などが起こってくるのかという,いわゆる病態生理機構に関しては,いかなる理論も全く想像の域を出ていないといえよう.すでにご承知のごとく,この不可思議で難治な不随意運動という病的運動の発生機序を病理学的立場から,あるいは生理学的立場から解明せんとして,多くの仮説がたてられ,また多くの研究者たちによって,いわばあらん限りの努力と業績がつみ重ねられてきた.しかし,現在までどれ1つとして完全な結論をえたものはない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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