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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科4巻10号

1976年10月発行

文献概要

症例

三叉神経症状を呈したadenoid cystic carcinomaの2症例

著者: 種子田護1 長尾勇1 滝本洋司1 生塩之敬1 金井信博1 池田卓也1 神川喜代男1

所属機関: 1大阪大学脳神経外科

ページ範囲:P.1005 - P.1010

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Ⅰ.緒言
 頭蓋底に骨破壊が認められた場合には,患者を精査し,病歴,症状を十分に把握することが必要である.もしその骨破壊像の辺縁が不規則で,reactive sclerosisに乏しい場合には,鼻咽頭に発生した悪性腫瘍の頭蓋底への進展を念頭に置かねばならない.骨破壊像の辺縁が円滑で,reactive sclerosisが明白な場合は,発育の緩慢な良性腫瘍が考えられる.しかし,骨破壊像がこの両者の中間型を示す場合が多く,原因となる症患の鑑別診断は,必ずしも容易ではない.ここに報告する2症例は,三叉神経の障害を初発症状とし,頭蓋底に骨破壊が認められ,術前には,第1例は三叉神経節腫瘍と診断し,第2例は鼻咽頭の癌の頭蓋底への進展を疑い,術後にadenoid cystic carcinomaと組織学的に判明した症例である.
 Adenoid cystic carcinomaは,耳下腺,顎下腺,舌下腺の主唾液腺ならびに口腔や鼻咽喉腔のminor salivary glandから発生するものが多く,しばしば頭蓋底へ進展する.その報告例は,耳科領域では多数みられるが,脳外科領域ではそれほど多くは報告されていない.しかし,脳転移の報告例11)や,小脳橋角部腫瘍13)や三叉神経鞘腫7)のごとき症状を示した症例など,興味ある症状と経過を示すので,ここに報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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