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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科4巻2号

1976年02月発行

文献概要

診断セミナー

失行症

著者: 岩田誠1

所属機関: 1東京大学脳研究施設神経内科

ページ範囲:P.125 - P.133

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Ⅰ.行為(praxies)とは何か1,2)
 "行為(praxies)"は,反射のごとく生来備わったものではなく,獲得されていくものである.Piagetによれば,単なる反射の段階から,獲得性の"行為"への進化は,外来の事物を,既存の反射的な運動系の中にとりこむこと(同化:assimilation)1,2)によって始まる.例えばsucking reflexは生来性の反射であるが,たまたま自分の母指が口のそばにいった時,それをくわえて吸う,ということが行われるとき,sucking reflexという生来性の運動系に,自分の母指という物体が同化され,1つの行為が成立すると考えるのである.この段階では,未だ行為の意図はなく,偶然性の支配が大きい.しかし,外界の事物が,既存の反応シェーマの中にくみいれられる(同化)ことによって,結果的に反応シェーマの可能性が拡げられてくる.このようにして改良されてきた反応のシェーマを,今度は新しい事物に対してあてはめていくこと(調節:accommodation)1,2)により,行為に1つの目的が生れ,意図的な行為が可能となる.例えば,目にみえるものを手でつかむような行為は,外界の事物に対する意図的な調節として理解されるのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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