icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科4巻3号

1976年03月発行

雑誌目次

不連続線

著者: 太田富雄

ページ範囲:P.209 - P.210

 ふと目を覚ますと,枕元に朝刊が置いてある.長島巨人の最下位決定とは裏腹に,球団創設以来26年目の優勝を経験しようとしている広島カープの話が多い.天皇,皇后両陛下のアメリカ御訪問も,つつがなく終られようとしている.誠に喜こばしいことである.
 二歳になる三男が,何か独り言をいいながら,とことこ階段を昇って来た.

総説

脳脊髄液の循環

著者: 佐藤修

ページ範囲:P.211 - P.217

Ⅰ.緒言
 脳脊髄液(以下髄液と略す)に関する記載は,旧くHippocrates(B.C.460-375)にはじまる.すでに彼は硬膜下,および脳の中に液体の存在することを知っていたとされる.また,あらためて脳室内に液体が貯溜していることを述べたのはGalen(A.D.129-200)であり,彼は脳の表面が液体により潤されていることも認めていたようである.
 時代はさらに下るが,Valsalvaは1692年,犬の脊髄周の膜を切開して約30ccの液体を得,髄液の存在を確かめたと言われている.しかし,髄液について,科学的な正確な記述を初めてなしたのはイタリアのDomenico Cotugno(1764)であり,髄液に当時the liquor Cotugniと言う名称を奉られたことからも,彼の功績の大なることがわかると言うものである,ところが,その後しばらくは,彼のこの業績も報いられるところ必ずしも十分ではなく,19世紀になってMagendie(1824)が剖検で,正常でも髄液の存在することを確かめ,Cotugnoの偉大な業績があらためて大きくとりあげられるに至ったのである.

手術手技

定位脳手術法—手技について

著者: 杉田虔一郎 ,   広田敏行

ページ範囲:P.219 - P.228

 定位脳手術法は1947年Spiegel Wycis32)の発表以来楢林22,47),Leksell16,17),Talairach44),Riechert29),Guiot7)らのパイオニア的努力により全世界に広まり,現在では脳神経外科手術の重要な一分野を占めるに到っている.さらに多くの手術経験を通して視床および基底核周辺についての神経学に多大な貢献をなしてきた.定位脳手術法は当初パーキソン氏病の治療法として大きな脚光をあびて出発したが41),L-DOPA治療の開発以来手術の適応は半減した現在でも,なおL-DOPA抵抗性のパーキソン氏病はこの手術の適応症である42),その他振戦症,不随意運動症,頑痛症36,46,難治性癲癇43),経鼻的脳下垂体破壊40)および脳深部腫瘍34,38)等の治療に幅広く利用されている.

診断セミナー

視野障害—とくに脳神経外科との関連において

著者: 藤野貞

ページ範囲:P.229 - P.234

 視野およびその障害について脳神経外科と比較的に関連が深いと思われるものを箇条的に拾い,2,3実例を挙げ,主として実地面から述べてみることにする.なお,私の愛用する検査法も併記して御参考に供したい.

研究

下垂体およびその近傍腫瘍の内分泌学的検討(第4報)—鞍結節部髄膜腫の術前後の下垂体機能

著者: 森信太郎 ,   魚住徹 ,   渡部優 ,   滝本昇 ,   最上平太郎 ,   橋本琢磨 ,   大西利夫 ,   宮井潔 ,   熊原雄一

ページ範囲:P.235 - P.242

Ⅰ.緒言
 tuberculum sellae meningiomaはpituitary adenoma, craniopharyngioma, pinealoma in the chiasmal regionと並んで視交叉部あるいはトルコ鞍近傍に発生する代表的な腫瘍の1つであるが,その視床下部下垂体系に及ぼす影響に関しては,ほとんど研究されていない1).これは,この腫瘍においては,視神経の症状が前景に現れて,それが発見される時期においては尿崩症その他の視床下部症候群あるいは下垂体ホルモン分泌能低下の症候群等がほとんど患者の愁訴となっていないと言う臨床的事実に基づくものであろう.
 しかしながら患者の愁訴とならないことは必ずしも種々の機能異常の存在を否定する根拠とならないことは当然であり,また実地臨床上,この腫瘍の術前術後の管理,および長期にわたるafter careの観点から,この腫瘍の視床下部下垂体の機能を明確に把握することが必要と考えられる.

本症を何と呼ぶべきか?

著者: 牧豊

ページ範囲:P.243 - P.251

Ⅰ.はじめに
 去る1974年10月,第33回日本神経外科学会において《その後のCerebrovascular moyamoya disease》という特別討議がなされた.これは鈴木二郎会長個人が設けた題名である.
 本症に関しては,1966年に第25回日本神経外科学会で《わが国に特発する頸部脳主幹動脈の閉塞性疾患》と題した特別討議がもたれた.その詳細ならびに当時における本邦の本症に関する研究の全貌は単行本《頭蓋内に異常血管網を示す疾患》69)に収録されている.もっとも,この本には《Willis動脈輪閉塞症》という副題が,ついているが,これは編集者工藤達之個人がつけたものである.

Hydroencephalodysplasiaの経験

著者: 金子貞男 ,   阿部弘 ,   田代邦雄 ,   都留美都雄

ページ範囲:P.253 - P.261

Ⅰ.はじめに
 小児神経疾患の中でその原因が先天性奇形に由来するものは多数あるがhydroencephalodysplasiaもその1つである.Hydroencephalodysplasiaとは1955年Picaza8)によって命名されたものであり大部分がhydrocephalusの一部に含まれている.しかしいわゆる狭義のhydrocephalusに比べて一般に予後が悪く,臨床症状,病理解剖所見等の点において明らかに区別される.
 われわれは昭和39年以降6例のhydroencephalodysplasiaを経験したが,今回は臨床症状,診断上の問題について検討を加えたので報告する.

松果体腫瘍に対する治療と予後—追跡調査による検討

著者: 石井鐐二 ,   土田正 ,   本多拓 ,   植木幸明 ,   小宅洋

ページ範囲:P.263 - P.270

 欧米諸国に比較し,わが国においては松果体腫瘍の発生頻度が著しく高いことはよく知られている1,4,6,16,19,20).したがってその治療法に関しては関心がはなはだ高く,従来も多くの報告がなされてきた7,17,18).そしてその治療方法として松果体腫(Two cell pattern pinealoma)は放射線によく反応するため照射療法がきわめて有効であることはつとにみとめられ2,5,12,13),われわれもそれに一致する報告をしてきた7,8).今回はさらに自験例をふりかえり,治療法を再検討してみた.
 症例は昭和10年より48年までに経験した松果体腫瘍96例(追跡調査が不能であった1例を除き,いわゆる異所性松果体腫Ectopic pinealomaを含む)で,これらについて行なった治療,特に照射および手術療法を中心にその成績を分析した.

症例

妊娠後期に発症した脊髄動静脈奇形

著者: 真鍋武聰 ,   菊池晴彦 ,   古瀬清次 ,   唐沢淳 ,   榊寿右 ,   吉田泰二 ,   大西英之 ,   松田功

ページ範囲:P.271 - P.276

Ⅰ.緒言
 脊髄動静脈奇形(以下spinal cord AVMと略す)の発症形態は,apoplectic type,progressive type,intermittent typeがあり,それぞれ出血,圧迫,steal現象による虚血に起因すると言われている12).なかでも,妊娠期発症のspinal cord AVM3,6,8,9)はその特徴的な臨床像より,少数例の報告ではあるが発症機序に関し注目され議論の対象にされてきた.
 最近我々は,妊娠末期に脊髄横断症状をもって発症したspinal cord AVMを経験し,microsurgicalに全剔する機会を得た.本例の場合,妊娠という特殊状況下にあるため治療面で困難な事も多い.

脳梗塞における脳浮腫に対する外科的対策—自験例と文献的考察

著者: 垣田清人 ,   宮崎崇 ,   門脇弘孝 ,   井沢正博 ,   窪田惺 ,   朝倉哲彦 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.277 - P.283

Ⅰ.緒言
 脳卒中の際の脳循環代謝の変動については,従来多くの研究が報告されているが,脳浮腫について注目されたのは,比較的最近のことである.脳梗塞の急性期における死亡原因としては,脳浮腫・脳腫脹およびそれに続く脳嵌頓が,重要な役割を果たしていると思われるにもかからわず,この問題に対して取り上げた報告はあまり多くない3,9,10,12,13).著者らは最近,著明な脳浮腫を伴った脳梗塞症例2例を相次いで経験したので,その臨床経過の概要を報告する.また,1970年6月より1974年4月までの約4年間に東京女子医科大学附属脳神経センター,脳神経外科において経験した脳梗塞例について,脳浮腫・腫脹の面より検討を加えた.その結果,脳梗塞の急性期における救命対策として,減圧開頭術の必要性を痛感し,ここに文献的考察を加えて報告するしだいである.

Spontaneous Cerebral Ventriculostium

著者: 結城研司 ,   佐藤醇 ,   石山隆三 ,   鈴木敬 ,   中村紀夫

ページ範囲:P.285 - P.292

Ⅰ.はじめに
 Spontaneous cerebral ventriculostium5,16)は,W.H.Sweetが1940年に発表して以来,別名spontaneous(cerebral) ventriculostomy4,9,10,17,19),spontaneous rupture of the cerebral ventricle14,18),cyst or cystic expansion of the suprapineal recess1,8,12),またはdiverticula or diverticulum3,5,6,11)等の表現で,欧米の文献には約40例が報告されている(Table 1).
 ventriculostiumとは,側脳室または第Ⅲ脳室がおもにaqueduct以下の髄液通過障害のために拡大し,解剖学的に弱い部分から脳表に向って拡張し,脳室上衣およびクモ膜をかぶった嚢腫様の形でherniateした状態を指す.

後頭蓋窩に浸潤発育したLiposarcomaの1手術例

著者: 中島健二 ,   伊藤善太郎 ,   深沢仁

ページ範囲:P.293 - P.298

Ⅰ.はじめに
 liposarcomaはsarcomaの中でも比較的発生頻度の少ない腫瘍であり1),しかも硬膜外,硬膜下を問わず,頭蓋内に原発あるいは転移することはきわめてまれである.著者らは,耳介下部の軟部組織に原発し,頭蓋内,硬膜外に浸潤発育した1例を経験したので,その臨床経過,諸検査成績ならびに病理組織所見等を若干の考察を加えて報告する.

小児の脳動脈瘤—症例報告と小児期発生についての考察

著者: 山川勇造 ,   小阪英幸 ,   永冨裕文

ページ範囲:P.299 - P.304

Ⅰ.はじめに
 くも膜下出血の原因としては,脳動脈瘤の破裂および脳動静脈奇形よりの出血がその代表的なものであり,前者は成人に多く,後者は若年者に多いことが通説である12,17-20).脳動脈瘤は嚢状動脈瘤が圧倒的に多く,その発生病理に関して,従来より先天性の中膜欠損が基因となって発生すると考えられてきた.しかしながら小児および青春期に発症するのはまれである.われわれは今回,12歳男の前交通動脈動脈瘤破裂例を経験し,手術にて動脈瘤頸部にアテローム性硬化斑と思われる病変部を認めた.これは発生病理学的に興味ある所見と思われるが,本小児脳動脈瘤について病因論を中心に若干の文献的考察を加えたので報告する.

--------------------

日本脳神経外科学会事務局ニュース

ページ範囲:P.306 - P.307

第34回日本脳神経外科学会総会のまとめ
 第34回日本脳神経外科学会総会は昭和50年10月22日から24日までの3日間1,200名の会員が参加して名古屋市公会堂に於て開催された(会長 名古屋大学景山直樹教授).
 今回は先ず会長が2シンポジウム,6パネルディスカッション,並びに早朝セミナーの主題と夫々の座長を決定し,演者の依頼を行った.一般演題はその後公募されたが応募は355題と例年になく多く,止むを得ず,1題につき夫々4名のプログラム委員に採点をお願いし,機械的に採否の決定を行い結局一般演題は131題が採用された.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?