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研究
常温平常血圧下,脳動脈瘤の直接手術—我々の血流一時遮断延長法を用いて
著者: 吉本高志1 鈴木二郎1
所属機関: 1東北大学脳疾患研究施設脳神経外科
ページ範囲:P.775 - P.783
文献購入ページに移動 破裂脳動脈瘤の根治手術の要点は,動脈瘤の柄部を確実に処理することである.そのためには,術中,流入動脈を一時的に遮断し,動脈瘤にかかる血圧を減少させ,柄部の剥離を容易にし,さらに,予期せざる破裂の場合には,流出動脈をも一時遮断し,完全なdry fieldとして動脈瘤の処理をすることが必要となる.しかし,常温下の全脳血上流遮断の許容時間は,約5分であり1,3,9,10),このため常温下では,血流遮断による脳損傷を恐れ,流脈の遮断を行わずに,動脈瘤を処理することが,今までの手入動術の常識であった.そして,一時遮断を行う際は,その許容時間を延長させる目的で,低体温麻酔法が広く用いられてきた2,15,21,23),低体温麻酔は,冷却,加温に長時間を要し,熟達した麻酔医による細心の管理が必要であり,かつ合併症を伴う危険性もあるが12),脳血流遮断の許容時間を延長させる方法としては,唯一のものであり,我々も十分の注意のもとに愛用してきた23).その後,あるaccidentにヒントを得て,常温平常血圧下における,脳主幹動脈の一時遮断につき検討した結果,遮断前でのmannitolの投与が,遮断許容時間の延長に有効であることが確認されている.本論文では,常温平常血圧下,mannitol前投与により,流入動脈の一時遮断を行い直接手術を施行した,181例の脳動脈瘤症例を基礎資料とし,脳主幹動脈の一時遮断の許容時間について検討し,あわせて,手術成績,追跡調査について,報告する.
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