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脳神経外科における生涯教育
著者: 伊藤昌徳1
所属機関: 1順天堂大学医学部附属浦安病院脳神経外科
ページ範囲:P.3 - P.4
文献購入ページに移動明治時代以降の日本人に生涯教育を勧めた名言の1つとされる「Ancora imparo」は,ミケランジェロの言として伝えられ,「私は今でも勉強している(still learning)」という意味である.日本脳神経外科コングレスのモットーとしてその紋章に書き添えられている.ミケランジェロが死の直前に描いた,砂時計をもった老人(おそらくは自画像)のデッサンの片隅に,「Ancora imparo」という文字が書き添えられていたという.私の認識ではミケランジェロはあくまでも彫刻家,画家であり,医学や教育とどのような関わりがあるのか,ずっと疑問に思っていた.明治六大教育家の1人である中村正直は,英国留学の帰国の際,サムエル・スマイルズ著「Self help(自助論)」を英国人のフリードランドより餞別として送られ,その翻訳を「西国立志編」として出版し,100万部以上を売り上げた.その中に西郷隆盛の遺訓として有名な「敬天愛人」の心と共に,ミケランジェロ(安日洛)の「Ancora imparo」の訳語「予ナホ方ニ学習ニ従事ス」が記載されている.ミケランジェロは多くの弟子をもつ教育者であると同時に,常に新しい情報の収集とその利用に努め,熱心な学習者でもあった.
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