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編集後記 フリーアクセス
著者: 新井一
所属機関:
ページ範囲:P.942 - P.942
文献購入ページに移動少し古い話なので現在もそうかは不明だが,米国オレゴン州の低所得者用医療保険「オレゴン・ヘルス・プラン」の管理部局には,“Cost, Access, Quality. Pick any two. ”という言葉が額に入れて飾られているそうである.すなわち,医療をコスト,アクセス,質の3つの要素に分けると,3要素すべてを満足させる医療システムは存在し得ない,と暗に述べているのである.翻ってわが国の医療システムをみると,国民皆保険制度により諸外国より廉価で医療を受けることができ,待ち時間などの問題はあるが特段のアクセス制限もなく,長い平均寿命,低い新生児死亡率,世界トップクラスのがん5年生存率など,かなり高いレベルで3要素をクリアしている.マスメディアは,この事実を十分に国民に伝え,さらにこの高水準を維持してきたわが国の医療システムが制度疲労に陥りつつある理由を正しく伝えているだろうか.病院/医師ランキングも,マスメディアには医療に関する情報を国民に伝える責務があるという金科玉条によるものかもしれないが,そのやり方は,興味本位的で医療全般に関する考察が乏しいとするのは言い過ぎだろうか.もちろん,各種ランキングの元となるアンケート調査に情報を提供しているわれわれ医療サイドにも責任がないわけではない.公開すべき情報を秘匿することは誤りであるが,情報の信憑性の担保も含め,国民に徒に混乱を招かないように一定のルール作りが必要な時期にきているように思う.
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