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連載 教訓的症例に学ぶシリーズ
下垂体腫瘍術後に急性中大脳動脈閉塞症を来した1例から学んだこと
著者: 高田能行1 須磨健1 渋谷肇2 吉野篤緒1 片山容一1
所属機関: 1日本大学医学部脳神経外科学系神経外科学分野 2相模原協同病院脳血管内治療科
ページ範囲:P.1011 - P.1015
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70歳女性.視野障害を主訴に他院より紹介された.意識レベルは清明でGoldmann視野検査で両耳側半盲を認めた.頭部MRIを施行したところトルコ鞍内から鞍上部に進展する腫瘍性病変を認め,下垂体ホルモン値に異常はなく,非機能性下垂体腺腫が疑われた.既往には高血圧症とMRAにおいて無症候性左中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)狭窄を有していた(Fig.1).
下垂体腫瘍に対する手術目的に当院へ入院し,全身麻酔下で内視鏡下経蝶形骨洞腫瘍摘出術を行った.術中の出血量は25ccで,術後特に異常所見は認めなかった.しかし,術翌日の午後12時30分より意識障害,右片麻痺および運動性失語症が出現した.意識レベルはJapan Coma Scale Ⅰ-3で右上下肢Manual Muscle Test(MMT)2/5の状態であった.頭部MRI,MRAを施行したところ,diffusion-weighted image(DWI)で左放線冠に淡いhigh intensity areaと,MRAで左MCAの閉塞を認めた(Fig.2).発症3時間以内であり血栓溶解療法を考慮したがrecombinant tissue-plasminogen activator(rt-PA)静注療法の禁忌項目である「3カ月以内の重篤な頭部脊髄の外傷あるいは手術」に該当するため,血管内治療を行った.
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