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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科41巻5号

2013年05月発行

文献概要

症例

感染性硬膜下血腫に脳梗塞を併発した1例

著者: 藤井教雄1 内藤雄一郎1 高梨成彦1 上野俊昭1 中込忠好1

所属機関: 1帝京大学医学部脳神経外科

ページ範囲:P.407 - P.413

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Ⅰ.はじめに

 硬膜下膿瘍は頭蓋内感染症全体の15~20%を占める疾患である1).近年の画像診断の進歩により早期診断が可能となり,抗生物質の発達に伴ってその予後は改善しているが1),初期治療が遅れると今なお致命的となる疾患である.また,既存の慢性硬膜下血腫に遠隔部から感染が波及して生じる感染性硬膜下血腫(infected subdural hematoma:ISH)は硬膜下膿瘍の亜型であるが,病態は異なり報告も少なく,成人例に限れば本例を含め26例の報告2,4,6-9,11,13,15,17,18,21,22,24)のみであった.今回ISHから脳梗塞を併発した1例を経験したが,渉猟し得る限り他に例はなく,極めて稀と思われたため,文献学的考察を加えて報告する.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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