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編集後記 フリーアクセス
著者: 宮本享
所属機関:
ページ範囲:P.468 - P.468
文献購入ページに移動さて,本誌には多数の症例報告が掲載されている.私は若者にはできるだけ症例報告を書くよう勧めている.多くの医師にとって初めての学会発表や論文執筆の対象はたいてい症例報告であり,症例報告は論文執筆への入門編ともいえる.編者の教室でデータをとってみたところ,専門医を取得する前に英文で症例報告の執筆した経験をもつ者ともたない者との間には,生涯の論文業績には有意な差があった.一方,海外商業出版社が発行する英文雑誌ではimpact factor(IF)を低下させる因子として症例報告を敬遠する傾向がある.この原因の1つは海外商業出版社の従来型戦略にある.その戦略とは購読者(図書館)支払いモデルであり,できるだけ多数の医学誌の委託出版を行い,様々な情報戦略により雑誌のIFを上げて自社の公開プラットフォームのみで公開し,図書館などにパッケージとして販売するというものである.しかし,オープンアクセスの時代を迎えて,このビジネスモデルはすでに曲がり角に来ている.読者の検索行動はすでにGoogle ScholarやPubMed中心になっており,出版社のもつ公開プラットフォームとは限らない.また,投稿数が増えるほど収益があがる著者支払いモデルが台頭してきている.時代の変化と共に,それぞれの医学雑誌はいかなる読者対象をもち,どのような特長をもつべきかを考えていかねば存在意義が薄れてしまう.母国語による症例報告を多く掲載し,若い脳神経外科医の論文作成能力を育むということも,本誌にとっての重要な役割ではないかと考える次第である.
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