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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科41巻9号

2013年09月発行

文献概要

連載 脊椎脊髄手術に必要な基本的知識

(1)神経学的診断法

著者: 金彪1

所属機関: 1獨協医科大学脳神経外科

ページ範囲:P.807 - P.815

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Ⅰ.はじめに―神経学的検査の重要性と,神経外科医の優位性

 手術治療に本来の使命がある脳神経外科医が,外来あるいは病棟において神経学的診察を行う際には,限られた時間のなかで問題の本態を見極めることが必要である.例えば痛みの原因として,神経根の圧迫,癒着性変化―血流障害,末梢神経―糖尿病やビタミン欠乏による神経炎,脊髄の障害,視床などの中枢の障害を鑑別するのみでなく,筋骨格,関節の問題も検討しなければならない.運動障害についても同様である.運動,知覚症状全体にわたって鑑別診断を考え,中枢から末梢まで神経系全体に原因を検討できることが重要である4,6).このことは,とりもなおさず神経系が専門の外科医の優位性である.いわば神経外科医の本領であるので,この評価に熟達していることをわれわれは大切にしなければならない.神経学的診察により病態を考察し,そのうえで画像検査と電気生理学検査11)と照らし合わせて確認することを丹念に積み上げていくことで,病因に関して嗅覚ともいえる判断力を身に着けることができる.病態とは離れた訴えや所見,情報に惑わされない判断力を身に着けることは,心理的な修飾が大きいこの領域においてことに重要である.診断力はとりもなおさず適応判断に直結することであり,手術後に患者の満足度の高いよい結果を出すためにも重要である.

参考文献

1) Brain L, Walton J:Brain's Disease of the Nervous System, 7th ed. Oxford University Press, London, 1969, pp40-43
2) 千葉正司:肉眼解剖による皮神経の末梢分布とデルマトームとの関係.日皮会誌112:1750-1752, 2002
3) Foerster O:The dermatomes in man. Brain 56:1-39, 1933
4) 福武敏夫:「脳と脊髄」の症候学つれづれ草.脊髄外科26:9-17, 2012
5) Head H, Campbell AW:The pathology of herpes zoster and its bearing on sensory localization. Brain 23:353-362, 1900
6) 井上聖啓:脊髄外科医が知っておくべき脊髄の症候学.脊髄外科25:252-261, 2011
7) 今井 健:頚椎椎間板症と頚椎椎管の前後径について日整会誌44:429-438, 1970
8) 金 彪:頚椎・頚髄のガイドブック 初診から顕微鏡手術まで.メジカルビュー社,東京,2007, pp2-5
9) Ohtsuka K, Terayama K, Yanagihara M, Wada K, Kasuga K, Machida T, Furukawa K:An epidemiological survey on ossification of ligaments in the cervical and thoracic spine in individuals over 50 years of age. Nippon Seikeigeka Gakkai Zasshi 60:1087-1098, 1986
10) 下津浦宏之,井上聖啓:デルマトーム図.脊髄外科26:147-161, 2012
11) 園生雅弘:脊椎脊髄疾患の電気診断による鑑別.脊髄外科25:14-22, 2011
12) Teresi LM, Lufkin RB, Reicher MA, Moffit BJ, Vinuela FV, Wilson GM, Bentson JR, Hanafee WN:Asymptomatic degenerative disk disease and spondylosis of the cervical spine:MR imaging. Radiology 164:83-88, 1987

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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