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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科42巻5号

2014年05月発行

雑誌目次

医療安全文化

著者: 三木保

ページ範囲:P.407 - P.408

 「東京医大病院 細管誤挿入で脳死状態 50代主婦 胸腔に点滴液たまる」―2003年某日の新聞,社会面トップの見出しは東京医大病院の全職員を震撼させた.この中心静脈ライン(CVライン)の事故で失ったものは重大かつ深刻で,患者のかけがえのない命と大事な家族の平和であり,心より哀悼の意を表したい.一方,医療側においては,患者からの信頼と医療人としての夢と誇りの喪失,病院の経営悪化と計り知れないものであった.当院では,この経験を教訓に,CVライン事故の再発予防,患者からの信頼回復のため医療安全の根本的な取り組みが始まった.そして辿り着いた目標が「医療安全文化」の構築・醸成であった.

 「安全文化(safety culture)」とは,1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故を受けて,国際原子力機関(IAEA)による事故後検討会議の概要報告書(INSAG-1,1986年)において「チェルノブイリ事故の根本原因は,いわゆる人的要因にあり,『安全文化』の欠如にあった」と記述され,初めて明快に示された.事故は緊急炉心冷却装置を作動させるための電力を,発電タービンの慣性回転を利用して供給できるかという実験で発生した.実験は発電所の責任者の許可なく,原子炉特性に不案内な電気技術者が命令し,命令を受けた運転員が,炉が不安定であるのを承知で行った.これに対してIAEAは,事故原因は個人,ハード,体制,国の安全に対する姿勢,態度,風土のすべてに起因すると検証した.この複雑多岐にわたる要因に対して,「原子力発電所の安全の問題には,その重要性にふさわしい注意が最優先で払われなければならない.安全文化とは,そうした組織や個人の特性と姿勢の総体である」とし,「安全文化」が事故の再発予防に不可欠とした.これを医療の現場に置き換えたのが「医療安全文化」である.すなわち「医療安全文化」は「患者への良質で安全な医療の提供にあたり,その重要性にふさわしい注意が最優先で払われなければならない.医療安全文化とは,そうした組織や個人の特性と姿勢の総体である」と定義される.医療安全文化の必要性は言うまでもない.ハリソン内科学(第4版,2013年)の「医療安全」の章にも,「より良い医療を実現するための安全対策」として,米国National Quality Forum(NQF)が策定した「医療の質を改善するための推奨30項目」をとり上げている.その第1項が「医療現場に安全文化を構築する」である.また近年臨床系の学会でもその医療の基本に「医療安全」を再考する必要性が強調されており,2013年5月に開催された第81回American Association of Neurological Surgeons Annual Scientific Meetingのメインテーマは“Changing Our Culture To Advance Patient Safety”であった.さらに,寺本明日本脳神経外科学会前理事長は,折にふれて外科医の心得として「手術は必勝よりも不敗を大切に」を強調された.この「手術の不敗の文化」こそ,外科医にとっての真の「医療安全文化」であろう.

総説

スポーツ頭部外傷における脳振盪の意義と対応

著者: 永廣信治

ページ範囲:P.409 - P.418

Ⅰ.はじめに

 スポーツの中でもボクシングや柔道,空手,相撲などの格闘技,アメリカンフットボール,ラグビー,アイスホッケー,サッカーなどのコンタクトスポーツでは,頭部への打撃や転倒による頭部外傷が頻繁に起こる.特に本邦においては,柔道による重症の頭部外傷が中学生や高校生に多く報告され15,32,43),平成24(2012)年度から中学校において武道が必修化されたこともあり,社会的にも事故の増加が懸念されている.

 スポーツ頭部外傷で最もよくみられるのは脳振盪であり,最も重症なものは急性硬膜下血腫である.脳振盪というと,瞬間的に意識を消失し健忘を示すものの自然に回復して元に戻るので,軽症頭部外傷として扱われ,以前はスポーツ現場においても軽視しがちであった.筆者自身も学生時代に柔道練習中に脳振盪を頻繁に目撃し,また試合で投げた相手が脳振盪を起こしたことも稀ならず経験していた.その際相手が意識を回復すると,「ああ脳振盪でよかった」と安堵するとともに,脳振盪を起こした選手が同日の次の試合に出場することに何の違和感も抱かなかった.しかし,近年の脳振盪に対する考え方からすれば,これは間違った考え方である.

 脳振盪に対する概念や対応の仕方が,特に米国などスポーツが盛んな海外において大きく変わってきた8,12,14,19,28,36,38).米国では,ボクシングやアメリカンフットボールなどにおいて脳振盪や軽度の頭部外傷は頻繁に発生する9,10).脳振盪を繰り返すことにより,致命的な脳腫脹を来す事例3,4,31,39,40)や神経心理テストに異常を来す例があること2,14,41),長期的な観点から慢性外傷性脳症に至る事例があること14,20,24,29)などが,社会的にも医学的にも注目されている.一方,本邦においても,平川らによりスポーツ頭部外傷における脳振盪の取り扱いの重要性や,急性硬膜下血腫発生の危険性などについては以前から指摘がなされてきた13,17,18,22,23).したがって,脳振盪は頻繁にみられ自然に回復するからといって軽視してよいものではなく,重大な脳損傷の前触れとして認識し,対応する必要がある.医療事故を例にとればインシデント報告やヒヤリハットに相当し,脳梗塞を例にとれば一過性脳虚血発作,心筋梗塞を例にとれば狭心症のようなものとみなされるものである.

 国際的には2013年にいくつかのスポーツ脳振盪に関するガイドラインが発表されている8,12,28).特に国際スポーツ脳振盪会議(International Conference on Concussion in Sport)では,国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA),国際ラグビー連盟など主要なスポーツ団体が加盟し,ほぼ3年ごとに国際会議でスポーツ頭部外傷,特に脳振盪に関する話し合いがもたれ,現場でどのように脳振盪を疑い評価するかを中心に検討している.その結果は重要な同意声明として発表されており28,29,42),脳振盪の取り扱いについての世界的標準となりつつある.最新の会議は2012年11月にZurichで行われたもので,その同意声明も論文化されており28),脳神経外科医としては一読してほしいものである.また日本脳神経外傷学会でもスポーツ頭部外傷のガイドライン作成に向けた中間提言を発表しており33),本稿ではこれらの発表や海外のガイドライン,同意声明の内容を踏まえ,本邦におけるスポーツ頭部外傷(特に柔道)の現状と最近の脳振盪に対する考え方や評価,競技復帰への対応,予防などを中心に概説する.

研究

難治性てんかんに対する迷走神経刺激療法の手術合併症:26例の経験から

著者: 下川能史 ,   森岡隆人 ,   佐山徹郎 ,   濱村威 ,   橋口公章 ,   村上信哉

ページ範囲:P.419 - P.428

Ⅰ.はじめに

 迷走神経刺激(vagal nerve stimulation:VNS)療法は,難治性てんかんに対する低侵襲的な緩和治療である.VNS装置埋め込みの手術手技は,頚動脈内膜剝離術の手技に精通している術者であれば,比較的容易なものとされる17,18,40).しかし,迷走神経を取り扱う以上,不適切な手術操作は不整脈や心停止などの重篤な心臓合併症につながる可能性がある4,22,37).また,VNS装置の埋め込みに伴う感染や,装置の断裂・故障などの合併症に注意する必要がある1,2,5,8,13,14,17,23,27,36,37).VNS療法は,欧州では1994年に,米国では1997年に承認され,既に数万人の難治性てんかん患者がこのVNS療法を受けているので17),VNSに伴う手術合併症については多くの報告があるが,これらの合併症の発生率は低いといわれている1,2,5,8,13,14,17,23,27,36,37).一方,本邦における承認は2010年7月で25),3年を経過した現在,本邦でVNS装置の埋め込みを受けた患者はわずか487例にすぎず,手術合併症に関する報告はほとんどない17,18,40).われわれは2011年3月にVNS療法を導入し25),2年半の間で26例の難治性てんかんに対してVNS装置の埋め込み手術を行った.経験した手術合併症を詳細に報告するとともに,その対策について考察する.

症例

脳室内出血にて発症した松果体部glioblastoma multiformeの1例

著者: 鈴木亮太郎 ,   鈴木謙介 ,   杉浦嘉樹 ,   高野一成 ,   永石雅也 ,   清水信行 ,   滝川知司 ,   田中喜展 ,   兵頭明夫

ページ範囲:P.429 - P.435

Ⅰ.はじめに

 松果体部腫瘍は成人の全脳腫瘍の0.4%の頻度と報告されており3),組織型の内訳としてはgerm cell tumorが50~75%,松果体部実質腫瘍が15~27%とされるが,gliomaに関しての報告は少ない.Glioblastoma multiforme(GBM)は一般的に最も頻度が高い悪性脳腫瘍であるが,松果体部では比較的稀で,過去に18例が報告されているのみであり,予後は極めて悪いとされる1,2,4-9,11-15)

 松果体部腫瘍による初発症状の多くは頭蓋内圧亢進症状,眼球運動障害などと報告されており,現在までに腫瘍内出血で発症したものとして,choriocarcinoma,meningioma,cavernous angioma,pineoblastomaなどが報告されているが,gliomaの報告はない.今回われわれは脳室内出血にて発症した松果体部GBMの1例を経験したので,その診断から治療について報告する.

もやもや病に生じた前脈絡叢動脈末梢の脳動脈瘤に対して選択的コイル塞栓術を行った1例

著者: 岡村朗健 ,   川本行彦 ,   迫田英一郎 ,   村上太郎 ,   原健司 ,   岡崎貴仁 ,   岐浦禎展 ,   栗栖薫

ページ範囲:P.437 - P.444

Ⅰ.はじめに

 もやもや病は動脈瘤を5~15%程度に伴い1,7,10),破裂してしばしば頭蓋内出血の原因となり得る.そのなかでも前脈絡叢動脈末梢の動脈瘤は稀であり,脳室内出血の原因として重要である10).前脈絡叢動脈はもやもや病において重要な側副血行路であり,その末梢の動脈瘤の治療には慎重な治療戦略が求められる.しかし,保存的加療,直達手術,血管内治療などさまざまな治療が報告され,親血管の温存などについて議論の余地がある2-6,8,11-18,20,22,23)

 今回われわれは,前脈絡叢動脈末梢の破裂脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を行った症例を経験した.症例報告を行い,治療戦略について考察する.

右後頭葉髄膜腫摘出後に一過性に出現したCharles Bonnet syndromeの1例

著者: 荒井隆雄 ,   長谷川譲 ,   田中俊英 ,   加藤直樹 ,   渡邊充祥 ,   中村文 ,   村山雄一

ページ範囲:P.445 - P.451

Ⅰ.はじめに

 幻視症の1つにCharles Bonnet syndrome(CBS)がある.末梢性の視機能障害をもつ高齢者に好発する要素性あるいは有形性幻視であり,患者は意識清明で知的障害がないと定義されている.今回われわれは,糖尿病性網膜症による視覚障害のある患者において,右後頭葉髄膜腫摘出術後に一過性に出現したCBSを経験したので,文献的考察とともにその発生機序を検討する.

鼻腔から発生し,頭蓋内浸潤を来したsmall cell neuroendocrine carcinomaの1例

著者: 小野恭裕 ,   久松芳夫 ,   蔵本智士 ,   勝間田篤 ,   河内正光 ,   金井健吾 ,   中村聡子 ,   廣瀬隆則

ページ範囲:P.453 - P.459

Ⅰ.はじめに

 神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)は多くは内分泌臓器,消化器系臓器,呼吸器系臓器,乳腺,泌尿生殖器などから発生する稀な腫瘍である2,12,13,15).今回,neuroendocrine carcinoma(NEC)が鼻腔粘膜より発生し,拡大により前頭蓋底から頭蓋内浸潤を来した稀な症例を経験したため報告する.

Accessory anterior cerebral arteryに発生した前大脳動脈瘤の2症例--文献的考察と診断における留意点

著者: 前田一史 ,   田中俊也 ,   波多江龍亮 ,   前田善久 ,   宮園正之

ページ範囲:P.461 - P.466

Ⅰ.はじめに

 前交通動脈および前大脳動脈(anterior cerebral artery:ACA)は比較的奇形が発生しやすい血管系といわれている.そのなかでもaccessory anterior cerebral artery(AccACA)は前交通動脈から直接分枝し,大脳半球内側面を支配するACAの血管破格であり,通常の2本のACAに加え前交通動脈から大きな3本目の枝があるようにみえることからthird ACA,triple ACA,median ACAなどと呼ばれることもある1,6,12).AccACAに発生した動脈瘤の報告は稀とされ,以前筆者らは1例の報告をしたが8),新たに2例を経験した.自験例を含めこれまでに報告された全11例のAccACAに発生した動脈瘤についての特徴および診断における留意点について述べる.

脊髄空洞症を合併した硬膜内くも膜囊胞の1例

著者: 伊師雪友 ,   青山剛 ,   栗栖宏多 ,   飛驒一利 ,   寳金清博

ページ範囲:P.467 - P.472

Ⅰ.はじめに

 脊髄硬膜内に発生する硬膜内くも膜囊胞は比較的稀な疾患であり,さらに同レベルに脊髄空洞症を伴うことはあまり知られていない.今回われわれは脊髄空洞症を合併する硬膜内くも膜囊胞に対して囊胞壁切除術を施行し,術後に空洞の縮小を認めた1例を経験した.稀な症例であり,その病態と治療方針につき文献的考察を交えて報告する.

連載 教訓的症例に学ぶシリーズ

下垂体腺腫に対する経蝶形骨洞手術の術後,蝶口蓋動脈からの鼻出血を生じ,塞栓術にて治療した仮性動脈瘤の1例

著者: 雄山博文 ,   和田健太郎 ,   服部健一 ,   鬼頭晃 ,   槇英樹 ,   野田智之

ページ範囲:P.473 - P.477

Ⅰ.経験症例

1.症例

 58歳,男性.健診にて鞍上部に伸展する脳下垂体腫瘍を見出された(Fig.1).神経症状,内分泌症状は認めず,ホルモン検査にても下垂体ホルモンの異常高値は認めなかったため,非機能性下垂体腺腫と診断された.

脊椎脊髄手術に必要な基本的知識

(9)小児脊髄手術

著者: 井原哲

ページ範囲:P.483 - P.494

Ⅰ.はじめに

 小児期に認められる脊髄疾患の多くは先天異常を背景にしており,複数の関連した病態を認めることも少なくない.そのため疾患概念とその病態の理解が診断・治療に不可欠となる.

 本稿では,代表的な小児脊髄疾患であるキアリ奇形,二分脊椎(開放性二分脊椎,潜在性二分脊椎),脊髄空洞症の病態,特徴,画像診断における注意点を述べ,手術手技を中心に治療法を示す.

報告記

第15回世界脳神経外科学会―WFNS会長職を代行して―--(2013年9月8~13日)

著者: 河瀬斌

ページ範囲:P.478 - P.479

 異常なほど暑かった8月も終わろうとしている頃,World Federation of Neurosurgical Societies(WFNS)の要人からとんでもないメールが入って来ました.そこには,会長が不祥事を起こしたので,WFNSの会長を辞めさせるべきだ,と書いてありました.その手紙の終わりには元の会長経験者のたくさんの名前が記されており,そして数日後には事実Black会長は世界学会を欠席することになったのです.連盟の創立以来初めての事態に驚く暇もなく,その会長職を代行しなければならないのは,当時第一副会長であったほかならぬ私であることに気がつきました.

 急いで会長の仕事を調べますと,あらゆるビジネスミーティングの座長,連日のソーシャルプログラムの挨拶,賞の授与など1冊のファイルになるほどたくさんありました.最初のミーティングが始まるのは9月6日でしたので,それらを準備できるのは既に3日間しかありませんでした.

International TIA/ACVS Conference--(2013年11月15,16日)

著者: 川俣貴一

ページ範囲:P.480 - P.481

 2013年11月15,16日に,International TIA/ACVS Conferenceが東京女子医科大学神経内科内山真一郎主任教授のもと,Tokyo Station Conferenceにて開催された.この学会は,transient ischemic attack(TIA)や軽症脳梗塞患者を追跡する国際多施設共同登録調査(日本を含む世界20カ国)「TIA registry. org」の一連の学会で,本共同研究の責任者であるDr. Pierre Amarenco(SOS-TIA Clinic, Bichat Stroke Center, Paris, France)が副会長を務めた.本共同研究はウェブ登録に基づく医師主導型の前向き観察研究で,発症後7日以内のTIA,またはmodified Rankin Scale 0または1の軽症虚血性脳卒中を対象とし,アテローム血栓性事象(主要評価項目は,心血管死,非致死的脳卒中,非致死的心筋梗塞の発症)の発症率を短期的・長期的に評価する.追跡期間は5年間で5,000症例を目標とする.今回の国際学会では本共同研究の運営委員をguest speakerとしていた.

 本国際学会には,世界12カ国から約200人が参加し,lecture 2演題,seminar 7演題,symposium 21演題,poster 107演題の発表があった.Symposiumは,TIAや急性脳血管症候群(acute cerebrovascular syndrome:ACVS)の定義・メカニズム,疫学,画像を含む診断,予防などについて発表され,活発な議論が行われた.TIA発症後に多くの症例が48時間以内などの早期に脳梗塞に移行する危険性があり,TIAは救急疾患として対処すべきであるとのことから,ACVSという新たなコンセプトが提唱されている.これは,心疾患でいう急性冠動脈症候群(acute coronary syndrome:ACS)に相当する.TIAは無治療で放置しても短時間で症状が消失するため,患者さん本人やときには一般医にさえ軽視されやすい.しかし,TIA発症早期の脳卒中リスクは従来考えられていたよりも高いことが知られるようになっている.よって早期評価とリスクの層別化,およびそれらに基づく速やかな治療開始が重要である.上記TIA registry. orgもこれらの課題を解決し,TIA診療の実態を明らかにすることが目的で開始され,本国際学会でも活発に議論された.

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欧文目次

ページ範囲:P.405 - P.405

ご案内 第16回日本正常圧水頭症学会

ページ範囲:P.451 - P.451

会  期 2015年2月28日(土)(前日夕刻にセミナーあり)

会  場 岡山コンベンションセンター(JR岡山駅隣接)

お知らせ

ページ範囲:P.472 - P.472

「読者からの手紙」募集

ページ範囲:P.476 - P.476

投稿ならびに執筆規定

ページ範囲:P.496 - P.496

投稿および著作財産権譲渡承諾書

ページ範囲:P.497 - P.498

略語および度量衡単位について

ページ範囲:P.499 - P.499

次号予告

ページ範囲:P.501 - P.501

編集後記

著者: 𠮷田一成

ページ範囲:P.502 - P.502

 外堀通りの歩道を歩いてみた.桜が満開である.完璧な自然の美である.ほんのりと桜色のソメイヨシノの中に,純白の桜があることに初めて気付いた.調べてみるとオオシマザクラといい,この桜と日本原産種の桜との交配で,江戸末期にソメイヨシノが生まれたそうである.

 今月号の「扉」では,三木保教授が,医療安全について詳しく解説している.侵襲的治療処置にリスクはつきものであるが,それが合併症なのか,医療過誤なのか,線引きは難しい.いずれにしても,患者,ご家族にとって不幸である.医療従事者は,安全を第一に心がけるべきである.安全な医療を行うために個人の努力は大切であるが,それだけでは不十分で,組織としての体制やルール作りが必須である.われわれは,診断や治療行為を安全に行わなければならないが,予防という点でも責任を負わなければならない.永廣信治教授の総説では,スポーツ外傷の問題が扱われている.頭部外傷の既往のある選手を競技に復帰させてよいのか,医師の責任で判断しなければならない時代である.義務教育で必修化された柔道では,受け身の技術が未熟な場合に頭部の事故が多発するという.コンタクトスポーツで,どこまで頭部外傷の予防が可能なのか,医師に何が可能なのか,考えさせられる.本号では,迷走神経刺激療法(VNS)に関する臨床研究をはじめ,興味ある症例や,学ぶべき症例が多数掲載されている.VNSは,治療効果,合併症の可能性,医療コストなどを考えると,医師にとってストレスのある治療のように思われるが,この治療によって救われる患者がいることが,支えとなっているのであろう.高度な医療に限らず,リスクはつきものであるが,医療技術・医学の進歩と安全,そのバランスをとることが必要である.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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