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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科43巻1号

2015年01月発行

雑誌目次

てんかん診療雑感

著者: 川合謙介

ページ範囲:P.3 - P.4

 てんかん診療に関わっていると,この疾患の特殊性を痛感させられることが多い.対象年齢は新生児から高齢者まで幅広いし,関連診療科も脳神経外科以外に神経内科,神経小児科,精神科と多岐にわたる.脳神経外科としての関わり方だけでも,難治性てんかんの外科治療から良性てんかんの外来診療までさまざまである.医療上の特殊性だけでなく,何より「てんかん」という病名には微妙な負の語感stigmaが伴う.医学用語として「てんかん」を使用している限りはあまり気にならないが,一般社会の中で用いられる場合にはこの言葉にはどうしても偏見がつきまとう.
 偏見の背景には,病気の基本的知識の欠如がある.それまで健康だった中高年者に突然発症することも多いこと,ほとんどの発作は副作用の少ない抗てんかん薬で抑制できること,外科治療で根治する患者がいること,などを説明すると,「成人病と似たようなもので,特別な病気ではないのですね.まったく知りませんでした」と驚く一般の人が多い.社会全体のてんかんに対する知識不足は偏見を助長し,適切な診療へのアクセスや診療レベル向上の妨げとなってしまう.このような傾向を払拭するには,一般社会に向けた啓発活動が欠かせないわけだが,ごく最近までそのような啓発活動はほとんど行われることはなかったように思う.2007年に私はてんかん外科に携わる有志や手術治療を受けた患者本人や家族と,てんかん外科治療のあまりに低い認知度を何とか改善したいとの思いから市民公開講座を開催したが,この時点でも一般向けの講演会は極めて限られたものであった.知識不足が偏見を生み,偏見が知識の普及を妨げるという悪循環に陥っていたと言える.

総説

小児脳神経外科領域における遺伝子診断—Update

著者: 山崎麻美

ページ範囲:P.5 - P.16

Ⅰ.はじめに
 遺伝子医学はその進歩によって,医療全般にわたって広く有効に活用される時代を迎えた.単一遺伝子疾患においては,病態解明から治療法開発研究へ発展している.小児脳神経外科領域で扱う疾患も,その原因遺伝子が同定され,病理診断や放射線学的診断から分子遺伝子学的診断へと進展し,より詳細な疾患分類へ書き換えられつつあるものもある.分子遺伝子学的診断が臨床にもたらす影響の程度から,次のように分けられる.すなわち,①遺伝子診断の意義が臨床的に確立し,疾患の確定診断,保因者診断,出生前診断などに寄与しているもの,あるいは疾患の分類が書き換えられつつあるもの,②疾患の一部に原因遺伝子が同定され,病態解明や疾患分類に新しい知見を呈しているものの,臨床的には遺伝子診断の意義は未確立のもの,③まったく研究段階で臨床的な意義は未確立のもの,である.
 小児脳神経外科領域の疾患で,遺伝子学的研究が進んだ疾患を上記に沿って分類すると,①は頭蓋縫合早期癒合症,X連鎖性劣性遺伝性水頭症,滑脳症など,②は全前脳胞症,孔脳症,③はDandy Walker症候群,脊髄髄膜瘤,もやもや病などである.
 平成22(2010)年度の診療報酬改定では,一部の先天性疾患の遺伝子診断や遺伝カウンセリング料は保険収載され,保険診療として認められるようになったが,小児脳神経外科領域の疾患はまだその中には含まれていない.
 本稿は,2011年1月号の本誌掲載論文(No Shinkei Geka 39:65-77, 2011)をもとに,最新の情報を加筆・修正したものである.

先端巨大症の最新治療

著者: 川俣貴一 ,   天野耕作 ,   岡田芳和

ページ範囲:P.17 - P.28

Ⅰ.はじめに
 先端巨大症はその特有な容貌や四肢末端の変化の問題にとどまらず糖尿病,高血圧,心疾患,さらには呼吸器系や消化器系などの合併症を来し,適切な治療がなされなければ死亡率は健常者の2〜3倍となり約10年短命とされている4,66).逆に適切な治療がなされ,growth hormone(GH)分泌やinsulin-like growth factor-1(IGF-1)値を正常化すれば,死亡率は健常人と同等になるとされている22,26).よって治療は極めて重要である.
 先端巨大症の治療はこれまで外科治療が第1選択とされ,それは基本的に現在も同様だが,薬物療法の進歩とともにやや変化がみられ一部の症例においてはソマトスタチン誘導体を優先することもある46).一方で外科治療の進歩も著しく,最近の10年間をみても大きく変貌を遂げているのが実情である.本稿ではこのような最近の知見も踏まえ先端巨大症の治療の現状を解説する.

研究

Readout segmentation of long variable echo trainsによる頭部拡散強調画像の有用性

著者: 石田剛 ,   大石誠 ,   森井研 ,   長谷川顕士 ,   斉藤明彦 ,   佐藤光弥 ,   滝沢修 ,   村田勝俊 ,   ,   松澤等 ,   藤井幸彦

ページ範囲:P.31 - P.40

Ⅰ.はじめに
 高速磁気共鳴画像撮像法の1つであるエコープラナー(echo planar imaging:EPI)法は,現行の拡散強調画像法(diffusion weighted imaging:DWI)にも応用され,脳梗塞急性期診断などにおいて脳神経外科臨床には必要不可欠な撮像法となっている.しかし,EPI法は磁化率効果に鋭敏で,義歯や副鼻腔などの頭蓋骨内の空気の影響による磁化率アーチファクト,すなわち,画像の歪みなどが頭蓋底部では強く出現する可能性があり,診断に支障を及ぼすことも少なくない.最近では,その磁化率アーチファクトの軽減のために,臨床DWI画像に主に使用されるsingle shot EPI(従来EPI)法では,種々の改良がなされているが,3.0 tesla(3.0T)のような高磁場システムでは,磁化率アーチファクトの影響は1.5Tより強く,画像歪み補正に関しては十分とは言えない.そこで登場したのが,readout segmentation of long variable echo trains(RESOLVE)法である.RESOLVE法はEPI法の1つであるが,従来EPI法とは異なり,データ収集(周波数方向)の分割によりエコー時間を短縮し,これによって生じる信号低下などの問題となる位相誤差を補正するためにナビゲーションエコーを使用し,画像の歪みなどに関係する磁化率アーチファクトの大幅な減少を可能とした7,12,13).本研究では,この新しい高速撮像法であるRESOLVE法の基礎検討を行い,RESOLVE-DWI画像の臨床的有用性について検討した.

片側顔面痙攣に対する微小血管減圧術の立体モデルを用いた術前シミュレーション

著者: 益子敏弘 ,   楊強 ,   金子直樹 ,   紺野武彦 ,   山口崇 ,   渡辺英寿

ページ範囲:P.41 - P.49

Ⅰ.はじめに
 デジタルデータを使い立体モデルを短期間で製作する技術はrapid prototypingと呼ばれ,1980年代に始まり7)コンピュータの性能の向上とともに進歩した.ここ数年3Dプリンターが急速に普及し,ものづくりに新たな変革をもたらそうとしている8).この技術は当初,工業界で試作品の作製などに用いられていたが,1990年代より医学分野にも徐々に応用されるようになっている4,6,13)
 われわれは2012年に2台の3Dプリンターを導入した.1台は3D Systems社(Rock Hill, SC USA)Z Printer® 450(以下,Zプリンターと記載,Fig.1E)で,石膏を材料とするものである.もう1台はBeijing Tiertime Technology社(北京)製UP! Plus 3D Printer®(以下,UP!プリンターと記載,Fig.1F)で,acrylonitrile butadiene styrene(ABS)樹脂を材料とするものである.これらを用いて100例以上の手術症例で,工夫を重ねながら立体モデルによる手術シミュレーションを行った.その経験から,実体モデルを手にとって観察することはコンピュータ・グラフィックス(CG)に比較し格段に有用であると考えるに至った.
 これまで手術症例数の多い脳腫瘍・脳動脈瘤などの症例が中心であったが,症例を重ねる中で同法が微小血管減圧術(microvascular decompression:MVD)に対してきわめて有効であるとの感触を得た.この手術に3次元CG画像によるシミュレーションが有用であるとの先行研究があるが2,10),実体モデルはそれと同様かそれ以上に有用であることが期待される.われわれは,軟質中空の脳動脈瘤モデルを実際にクリッピングすることで非常に有効な術前シミュレーションが可能であることを既に報告したが9),今回はさらに,圧排できる軟らかい小脳モデルを開発した.これと軟性動脈モデルを石膏モデルに組み合わせて,小脳の圧排から責任血管のtranspositionやinterpositionのシミュレーションを行えるモデルを作製し,従来の石膏モデルとの比較を行った.

症例

静脈うっ滞により急速に脳幹症状を呈した頚髄硬膜動静脈瘻の1例

著者: 佐々木達也 ,   眞鍋博明 ,   安原隆雄 ,   三好康之 ,   杉生憲志 ,   伊達勲

ページ範囲:P.51 - P.56

Ⅰ.はじめに
 脊髄硬膜動静脈瘻(spinal dural arteriovenous fistula:S-dAVF)は脊髄動静脈奇形の1型でAnson & Spetzlerの分類でType Iに属する1).好発部位は胸腰髄であり,頚髄のS-dAVFは比較的稀である.静脈うっ滞性の脊髄症で発症することが圧倒的に多いが,通常症状は緩徐進行性である.今回われわれはうっ滞が脳幹まで及び,比較的急速に脳幹症状を呈した頚髄のS-dAVFを経験したので報告する.

手術施行時期に苦慮した妊娠合併小脳血管芽腫の1例

著者: 井上明宏 ,   高野昌平 ,   久門良明 ,   渡邉英昭 ,   大西丘倫 ,   橋本尚 ,   松原圭一

ページ範囲:P.57 - P.62

Ⅰ.はじめに
 妊娠中の脳腫瘍合併率は非妊娠時と変わらず10,000人に1例とされているが,脳腫瘍合併妊娠による母体死亡は全母体死亡の約8%を占め,その周産期管理は極めて重要となる1,7).今回われわれは,手術施行時期に苦慮した妊娠合併小脳血管芽腫の症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

頭頂葉言語野近傍神経膠腫に対し,硬膜下電極マッピングと覚醒下手術の併用が機能温存と積極的摘出の両立に有効であった1例

著者: 竹林研人 ,   齋藤太一 ,   新田雅之 ,   田村学 ,   丸山隆志 ,   村垣善浩 ,   岡田芳和

ページ範囲:P.63 - P.68

Ⅰ.はじめに
 優位半球頭頂葉は高次脳機能の機能野であると同時に縁上回を含めて頭頂葉言語野8)としても知られている.また側頭葉言語野にも接しているため,一般に優位半球頭頂葉の神経膠腫は積極的摘出が困難とされている.覚醒下開頭による機能マッピングはeloquent areaの神経膠腫の摘出術に有用であるが,優位半球頭頂葉の場合は,言語,計算,左右と手指認識など多種類の機能マッピングを行うには時間的制限のため十分な評価は困難である.一方,てんかん外科で用いられる硬膜下電極留置による機能マッピングは,十分な時間を確保できるためこの欠点を補うが,深部白質の機能情報を得ることができないため摘出範囲の決定には不十分である.
 今回,優位半球下部頭頂葉の神経膠腫に対して,慢性硬膜下電極による詳細な脳機能マッピングを行った後に覚醒下開頭による腫瘍摘出術を施行し,機能温存と積極的摘出の両立をした症例を経験したので報告する.

慢性副鼻腔炎に起因した急性頭蓋内硬膜外血腫の1例

著者: 木原一徳 ,   佐藤幹 ,   荷堂謙 ,   福田和正 ,   中村孝雄 ,   山上岩男

ページ範囲:P.69 - P.74

Ⅰ.はじめに
 急性頭蓋内硬膜外血腫(以下,硬膜外血腫と呼ぶ)は一般的に頭部外傷に伴う疾患であるが,非外傷性に発症することもあり,その原因として悪性疾患や凝固異常,血管奇形などが報告されている.われわれは,慢性副鼻腔炎で不定期に治療を受けていたが,激しい頭痛を伴った硬膜外血腫を発症した症例を経験し,その原因は慢性副鼻腔炎であると診断した.これまで報告されている副鼻腔炎に起因する硬膜外血腫10例についても考察し1-5,6,8,10-12),副鼻腔炎による硬膜外血腫の臨床像を明らかにする.

頭蓋内ステントを併用することで血管内治療により治療し得た前大脳動脈窓形成に合併した未破裂脳動脈瘤の1例

著者: 江藤歩 ,   中井完治 ,   相川博 ,   伊香稔 ,   新居浩平 ,   風川清

ページ範囲:P.75 - P.78

Ⅰ.はじめに
 近年,窓形成に合併した脳動脈瘤に対して血管内治療が有用であった報告が散見されるようになってきた3,5,6,7,10,11).今回われわれは,前大脳動脈水平部(A1)の窓形成に合併した未破裂脳動脈瘤に対して,頭蓋内ステントを併用したコイル塞栓術にて治療し得た症例を経験した.渉猟し得た限りでは,頭蓋内ステントを併用した症例は報告がなく,非常に稀な治療例であり,文献的考察を含めて報告する.

書評

—伊藤 壽一●監修 中川 隆之●編—内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術—CT読影と基本手技[3DCT画像データDVD-ROM付]

著者: 佐伯直勝

ページ範囲:P.62 - P.62

●経鼻内視鏡手術を行う脳神経外科医にとり有用な書
 脳神経外科手術領域における内視鏡下経鼻手術は,従来の顕微鏡下経鼻下垂体手術をさらに発展させた洗練された方法として認められつつあり,従来拡大経蝶形骨洞手術として行われていた傍鞍部腫瘍への到達法から,さらに広がりをもった手術法も可能となった.そして内視鏡下経鼻手術は,正中病変では前頭蓋底から頭蓋・頚椎移行部,側方病変では海綿静脈洞,翼口蓋窩,側頭窩下,眼窩内病変に至るまで,頭蓋底疾患を広く扱える手術法として発展しつつある.欧米諸国では,耳鼻咽喉科,頭頚部外科,脳神経外科をバックグラウンドとしたチーム医療が花開きつつあり,日本においてもこの領域に特化した専門医グループの出現がまたれる.
 一方で,髄液漏れ,血管損傷,脳神経麻痺などの内視鏡下経鼻手術に特有な合併症を起こさない工夫や,起こした際の対処法などを習熟しておかなければならず,習熟法の1つとしてキャダバートレーニングが有用であることは論をまたない.本書の編集者・執筆者である中川隆之氏は,京大の耳鼻咽喉科・頭頚部外科医の立場からキャダバートレーニングコースを開催し,内視鏡下経鼻手術の安全な手技の普及に貢献してきた.本書で特徴的なのは,個々のキャダバーの3DCTを術前に評価し,個別に手術手技,解剖をイメージしながら,段階を踏んで手術を行っていく方法で,実際の手術法に即した教科書としてまとめ上げられている点である.また本書は,初心者でも行えるわかりやすいプランニングと,安全かつシンプルな手術テクニックをコンセプトとしているとともに,基本的手技から一歩進んで,頭蓋底手術についても同様のコンセプトで解説している.

連載 脳卒中専門医に必要な基本的知識

(6)脳出血

著者: 髙木康志

ページ範囲:P.79 - P.84

Ⅰ.脳出血の臨床疫学と機序
 「平成25年国民生活基礎調査」の概況によると要介護者の介護が必要になった主な原因は脳血管疾患が21.7%で第1位である.特に要介護4,5の原因としては,その3割以上を占めている.一方,「平成24年人口動態統計」によると,全死因における脳血管疾患の占める割合は9.7%で,悪性新生物,心疾患,肺炎に次いで第4位を占めている.この中で脳出血は死亡数が人口十万人あたり33,605人で脳血管疾患全体の27.6%を占める(ちなみに脳梗塞は59.2%).わが国における非常に重要な疫学研究である,秋田県脳卒中登録では,脳出血が脳卒中のおよそ30%を占めており,この割合は前述した全国における調査結果とほぼ同様である.この全脳卒中における脳出血の割合は,多くの西側先進国と比べて2倍以上である.
 脳血管の解剖学的・機能的な特徴は血液脳関門であり,内皮細胞のtight junctionをはじめとする構造的バリアーおよび選択的透過を行う種々の機能的バリアーからなる.物質透過性が低いため,血液供給が低栄養状態に陥ると,脳のみならず動脈壁も病変が生じやすくなる.外膜側の栄養血管が存在せず,動脈壁の栄養は内膜側からの透過に依存度が高いことも傷害されやすい原因である.また脳動脈の内弾性板は極めて小さな有窓構造で数も少ないため.物質の透過が困難のみならず,うまく平滑筋細胞が内弾性板をくぐり内膜へ遊走するのを困難にしており,内膜肥厚が生じにくい.

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欧文目次

ページ範囲:P.1 - P.1

ご案内 東西合同脳神経外科認知症研究会—(第5回関西脳神経外科認知症研究会・第4回関東脳神経外科認知症研究会の合同開催)

ページ範囲:P.56 - P.56

日  時 2015年4月11日(土)13:50〜17:30予定
会  場 ホテルグランヴィア大阪「名庭」TEL 06-6344-1235

お知らせ

ページ範囲:P.74 - P.74

「読者からの手紙」募集

ページ範囲:P.84 - P.84

投稿ならびに執筆規定

ページ範囲:P.86 - P.86

投稿および著作財産権譲渡承諾書

ページ範囲:P.87 - P.88

略語および度量衡単位について

ページ範囲:P.89 - P.89

次号予告

ページ範囲:P.91 - P.91

編集後記

著者: 高安正和

ページ範囲:P.92 - P.92

 テニスを多少たしなむものとして,このところの錦織圭の活躍には目を見張るものがある.全米オープンでは準優勝,世界ランキングもついに5位まで上昇した.プロテニスというハードなスポーツの世界で日本人の非力な体力では欧米人にはとても太刀打ちできないと考えていたが,彼の快挙は正直驚きである.その陰には日本のテニス振興をめざしたソニーの元副社長で日本テニス協会名誉会長の盛田正明氏の貢献があったことも興味深い.今,テニスコートでは将来の錦織圭を夢見てちびっこプレーヤーが増えている.彼には世界のトップを目指しさらなる飛躍を期待したい.
 さて「扉」では川合謙介先生の‘てんかん診療雑感’は興味深く読ませていただいた.「てんかん」に対する社会の偏見やマスメディアの過剰な自主規制の弊害の歴史を紹介するとともに,最近の新規抗てんかん薬の相次ぐ発売とマスコミの対応の変化などから,てんかんをめぐる状況が好転していることが述べられている.学生時代に読んだPenfieldの著作を契機にてんかん一筋に歩んでこられた先生の思いがよく伝わってくる.山崎麻美先生の総説「小児脳神経外科領域における遺伝子診断:Update」は一般の脳神経外科医にはなじみの薄いこの領域についてわかりやすく解説していただいた.また,川俣貴一先生の総説「先端巨大症の最新治療」では内視鏡手術,pseudocapsuleへの対応などの手術療法の現状や薬物治療,放射線治療の役割についての最新の知見を解説いただいた.研究論文では片側顔面痙攣に対する3Dモデルの有用性,MRIの新しい高速撮影法(RESOLVE法)の紹介など,興味深い.連載の「脳卒中専門医に必要な基本的知識」では今回は脳出血について髙木康志先生が解説されており,近年の大規模研究のデータを含め脳出血の知識を整理するうえで有用である.その他,症例報告の5編もそれぞれ異なる領域の興味深い報告である.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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