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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科43巻8号

2015年08月発行

文献概要

研究

青森県における遷延性意識障害患者の実数調査

著者: 嶋村則人1 棟方聡1 奈良岡征都1 小笠原ゆかり1 小山香名江1 大熊洋揮1

所属機関: 1弘前大学大学院医学研究科脳神経外科学講座

ページ範囲:P.705 - P.708

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Ⅰ.はじめに
 日本脳神経外科学会による遷延性意識障害の定義は,①自立移動が不可能である,②自力摂食が不可能である,③屎尿失禁状態にある,④声を出しても意味のある発言がまったく不可能である,⑤目を開け,手を握れという簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが,それ以上の意思の疎通が不可能である,⑥眼球はかろうじて物を追うこともあるが認識できない,以上の6項目を満たすような状態が,種々の治療にかかわらず,ほとんど改善がみられないまま満3カ月以上経過したものとされている8,9)
 遷延性意識障害患者の疫学的検討に関する本邦の報告は極めて少ないが,2010年に藤原らにより宮城県における遷延性意識障害患者の実数調査が行われた2).この調査結果から,日本全体では55,000人以上の遷延性意識障害患者がいると推計された.また,従来は遷延性意識障害の原因として頭部外傷が最も多いと考えられてきたが,脳卒中の割合が増加してきていることも明らかにされた2,6).その後の2011年の東日本大震災では,遷延性意識障害患者や要介護状態の患者の移動およびケアの問題が注目された.
 都道府県単位での遷延性意識障害患者の実数調査は,その本邦での全体像を把握する上で必要不可欠であり,加えて脳卒中多発県である青森県での調査は非常に有益であると考え,青森県における遷延性意識障害患者の実数調査を行ったので報告する.

参考文献

1) Beaumont JG, Kenealy PM:Incidence and prevalence of the vegetative and minimally conscious states. Neuropsychol Rehabil 15:184-189, 2005
2) 藤原 悟:宮城県における遷延性意識障害者実数調査.第20回日本意識障害学会抄録集,2011,p41
3) 萩原 剛,太田裕之,藤井 聡:アンケート調査回収率に関する実験研究:MM参加率の効果的向上方策についての基礎的検討.土木計画学研究・論文集23:117-123, 2006
4) Haig AJ:Medical aspects of the persistent vegetative state(1). The Multi-Society Task Force on PVS. N Engl J Med 330:1499-1508, 1994
5) Haig AJ:Medical aspects of the persistent vegetative state(2). The Multi-Society Task Force on PVS. N Engl J Med 330:1572-1579, 1994
6) Higashi K, Sakata Y, Hatano M, Abiko S, Ihara K, Katayama S, Wakuta Y, Okamura T, Ueda H, Zenke M, Aoki H:Epidemiological studies on patients with a persistent vegetative state. J Neurol Neurosurg Psychiatry 40:876-885, 1977
7) 松田知明:アンケート調査の回収率の向上と無効回答の減少に関する研究(1)—行動分析学の手法を用いて—.羽陽学園短期大学紀要30:523-530, 2010
8) 太田富雄,梶川 博,児玉和典,山下純宏:植物症—その概念と今後の問題点—.神経進歩20:816-825, 1976
9) 鈴木二郎,児玉南海雄:植物状態患者の社会的背景と今後の問題.神経進歩20:957-965, 1976

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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