icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科44巻4号

2016年04月発行

雑誌目次

脳神経外科医としての人生設計

著者: 山田和雄

ページ範囲:P.267 - P.268

 脳神経外科医として41年間を過ごし,昨年春に定年を迎えた.この間,最初の20年間は手術と研究を中心とする純粋な脳神経外科医として活動し,日々の手術結果に一喜一憂していた.すなわち,正確な解剖学的知識を基に病変を処理し,新しい脳や脊髄の状態を作り上げ,機能の再生を図るのに全力を尽くしていた.当時の記録を見直してみると,クリニカルフェローとして渡米していた2年6カ月は,脳腫瘍の摘出術,癌転移による脊髄圧迫に対する椎弓切除術,椎間板ヘルニア摘出術など,脳神経外科医として基本的な手術をスタッフの指導の下にやっていた.当時はまだ電子化の前であったが,入院歴や現症,退院時サマリー,手術記録などはすべてカーボンコピーが作成され,担当者全員に送られてきた.これは記録を大切にする米国流のやり方で,感心させられた.帰国後のわが国では,記録を大切にする気風は当時それほど強くはなかったが,カンファレンスの時に手術のスケッチや病歴を記載し,自分のファイルとして残しておいたことがその後の活動に役立った.またカメラ好きであったことが幸いして,多くの経験症例のkey filmを残すことができ,これが学会発表や論文作成に役立った.これらの記録を疾患ごとにファイルして自分の机の横に置き,いろいろな角度から症例解析を行い,論文を書くのが大きな楽しみとなった.またこれらの臨床例と関連した基礎実験を行い,自分たちの考えが妥当であることを学会や論文でわかってもらうことも大きな楽しみとなった.
 その後45歳で名古屋に移ってからも,最初の4〜5年間はこの状態は変わらず,手術顕微鏡を見ながら全力で脳や脊髄の病変に対処し,脳神経外科医として至福の時間を過ごしていた.この当時,すなわち1990年代後半は脳動脈瘤の治療にコイル塞栓術が導入され,クリッピングとのすみ分けが議論された時代であり,私どもの教室でも必要なものはコイル塞栓術で治療していたが,クリッピングも数多く経験した.また,頚動脈狭窄症,バイパス手術,悪性脳腫瘍,頭蓋底腫瘍,神経減圧術,脊椎・脊髄疾患なども数多く経験し,若い人々と一緒にバラエティに富んだ手術を行った.特に施設の責任者としては,若い医師を一流の脳神経外科医に育てる義務も負っていたので,いかに若い人々に手術に積極的に参加してもらうか腐心していた.気取った言い方をすれば,医師となって最初の25年間は,いわば匠の世界に生きていて,患者さんの病変に対し脳神経外科医としていかに最善を尽くすことができるかに全力を傾けていた.

総説

ARUBA study後の脳動静脈奇形の治療

著者: 辻篤司 ,   中澤拓也 ,   野崎和彦

ページ範囲:P.269 - P.281

Ⅰ.はじめに
 脳動静脈奇形の治療の主たる目的を,「一生涯における脳出血による機能障害や死亡を回避すること」とした場合,その目的は血管撮影で描出されないことをもって,ほぼ達成されたと考えられる.脳動静脈奇形に対する侵襲的治療手段として,血管内治療,外科的切除,定位放射線治療があり,各々の治療に伴う合併症率,出血リスク軽減効果,その効果が得られるまでの時間,期待される長期予後などを勘案し,単独または複合治療の治療方針が決定されるが,無症候性病変や出血既往のない病変については,治療リスクの観点から侵襲的治療を控える傾向がある.無症候性かつ出血既往のない脳動静脈奇形に対する予防的な治療介入では,いずれの治療方法であっても,術前の適切な治療計画と十分なインフォームドコンセントが必要であり,計画性のない治療介入は出血リスクを上昇させる可能性がある.脳動静脈奇形は特に若年者における脳卒中の重要な原因であり,発見の時点では数十年の生命予後を有する未破裂脳動静脈奇形患者に対する治療方針決定の際には,経過観察における生涯の出血を含めたイベント発生リスクだけでなく,脳動静脈奇形を抱えて生活するという精神的苦痛によるQOL低下,内科的治療および侵襲的治療に伴うリスク,治療介入に伴って得られるベネフィットについて,医師と患者の間で十分に情報を共有することが大切である.
 脳動静脈奇形では,各患者の背景や病変が多様であること,治療法が複数あること,また実際には患者ごとに治療リスクが大きく異なるため,一律に治療方針を決めることが難しい.また侵襲的治療手段としての血管内治療,外科的切除,定位放射線治療,およびその複合治療のいずれにおいても,その有効性を統計学的に証明することは困難であり,常に一定の不確実性のもと,治療チームごとの経験に基づいた方針で日常診療が行われている.最近,未破裂脳動静脈奇形に対する侵襲的治療の意義を明らかにするために,内科的治療のみを行う群と何らかの侵襲的治療(外科的切除,血管内治療,定位放射線治療の単独または組み合わせ)を行う群の間でランダム化比較試験(RCT)であるA Randomized Trial of Unruptured Brain Arteriovenous Malformations(ARUBA)が行われ,その中間解析が発表された15).本稿では,ARUBA studyの概要と中間解析,本試験の解釈について概説し,RCTの結果がもたらす脳動静脈奇形治療への影響とその対応についても言及する.

研究

未破裂脳動脈瘤手術における運動誘発電位モニタリングの有用性と問題点

著者: 石﨑友崇 ,   遠藤乙音 ,   藤井健太郎 ,   松平哲史 ,   岡田健 ,   小林望 ,   北村倫子 ,   柴田真紀子 ,   樋口昌哉 ,   平野法子 ,   古市千奈里 ,   諸戸昭代 ,   見田真紀 ,   志水貴之 ,   山本直人

ページ範囲:P.283 - P.293

Ⅰ.緒  言
 未破裂脳動脈瘤の開頭クリッピング術において,クリッピング後に生じ得る虚血性合併症をいかに予測し,回避できるかはこの手術の課題の1つといえる.これまでにドップラー血流計による血流評価や,indocyanine green(ICG)などを用いた蛍光血管造影による血流評価が試みられてきた11,13).しかし,いずれの評価法も対象血管の血流の有無を評価しているのみで,その血流が実際に灌流する脳組織にとって必要量たり得るかは評価できない.こうした脳血流の機能的側面での評価方法として用いられているのが,運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)による術中モニタリングである.これまでにも開頭クリッピング術においてMEPを用いた報告は多く,いずれもその有用性を指摘するものであった.その一方,MEPで血流を評価していたにもかかわらず,術後に虚血性合併症を引き起こしていた例も少なくない4,8,12).本報告では,当院で行われた未破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術におけるMEPの経験を報告し,その有用性と問題点を考察する.

糖尿病患者にみられたしびれの原因に関する前向き検討

著者: 金景成 ,   井須豊彦 ,   江本直也 ,   國保倫子 ,   森本大二郎 ,   岩本直高 ,   小林士郎 ,   森田明夫

ページ範囲:P.297 - P.303

Ⅰ.はじめに
 糖尿病性神経障害は四肢末端に起こりやすいことから,“手袋,靴下型のしびれ”といわれることも多い.糖尿病性神経障害には国内外で統一された診断基準はないものの,本邦で用いられている「糖尿病性多発性神経障害の外来診断基準」をみると,特に下肢末端に両側性に症状が出やすいことが示されている(Table 1)15).一方,糖尿病患者は,末梢神経障害,循環不全などを合併するため末梢神経が脆弱となり,外的な圧迫を受けやすい部位では容易に絞扼性末梢神経障害を来すことが知られている.絞扼性末梢神経障害はcommon diseaseでありその罹患率は高く,正中神経や尺骨神経などの障害により上肢末端にしびれや痛みが生じ,腓骨神経障害や脛骨神経障害などの障害により下肢末端にしびれや痛みが生じることもあり,糖尿病性神経障害との鑑別に注意を要する10)
 糖尿病性神経障害が発症した場合にはその治療は難しく,対症療法が主となってしまうが,こういった四肢末端のしびれや痛みの中に,上記のような治療可能な絞扼性末梢神経障害などが含まれている可能性も否めない.そこで今回われわれは,糖尿病患者にみられる四肢のしびれに着目し,そのしびれの原因について前向きに検討したため報告する.

書評

—日本MISt研究会●監 星野雅洋,佐藤公治,齋藤貴徳,有薗 剛,石井 賢●編—MISt手技における経皮的椎弓根スクリュー法—基礎と臨床応用

著者: 原政人

ページ範囲:P.295 - P.295

●PPS法の利点・欠点を余すところなく伝える実践書
 低侵襲手術の必要性が叫ばれて久しいが,時に未熟な手術操作にて取り返しのつかない事態を招いている.大きく展開し,良好なオリエンテーションを保ちながら行う手術は,安全性の面で優れ,指導もしやすい.しかし,大きく展開するための弊害として,出血量や組織への侵襲の増大があり,とりわけ高齢化の進んでいるわが国では,これらを克服することが喫緊の課題である.患者に対する低侵襲が,術者にとってのストレスにならないよう,手術手技を確立していくことは,非常に重要である.
 本書の著者らは,脊椎手術において日本をリードしているメンバーであり,これまでにも本術式以外の手術も多く経験している強者ばかりである.低侵襲手術に対する熱意を持っているとともに,陥りやすい危険性を理解し,未然に大事故を防ぐ力を持ち合わせている.また,問題の多い高齢者に対する侵襲のより少ない手術手技やデバイスを開発している挑戦者でもある.彼らだからこそわかるMISt手技における経皮的椎弓根スクリュー法(PPS法)の利点および欠点を余すところなく伝えており,今考えられる弱点に対する改良や,今後の展開を見据えたデバイスのさらなる発展についても言及しており,非常に参考になる.

—平山 幹生●著—見逃し症例から学ぶ神経症状の“診”極めかた

著者: 玉岡晃

ページ範囲:P.329 - P.329

●神経内科の臨床に携わるすべての医師必読の書
 2015年11月末に開催された第33回日本神経治療学会総会(会長:祖父江元・名古屋大学教授)において,「症例から学ぶ」というユニークなセッション(座長:鈴木正彦・東京慈恵会医科大学准教授)に参加した.「神経内科診療のピットフォール:誤診症例から学ぶ」という副題がついており,春日井市総合保健医療センターの平山幹生先生(以下,著者)が演者であった.
 臨床医学のみならず基礎医学にも通じた該博な知識の持ち主でいらっしゃる著者が,どのような症例提示をされるか,興味津々であったが,予想に違わず,その内容は大変示唆に富む教育的なものであった.自ら経験された診断エラーや診断遅延の症例を紹介し,その要因を分析し,対策についても述べられた.講演の最後に紹介されたのが,この『見逃し症例から学ぶ神経症状の“診”極めかた』であり,講演で提示された症例も含めた,教訓に富む症例の集大成らしい,ということで,早速入手し,じっくりと味わうように通読した.

症例

腰椎腹腔シャント術直後に生じた腹直筋鞘内出血により緊急再開創を要した1例—腹壁解剖理解の重要性

著者: 金一徹 ,   竹内亮 ,   有澤正 ,   石井龍宏

ページ範囲:P.305 - P.310

Ⅰ.はじめに
 正常圧水頭症の概念が普及するにつれて,腰椎腹腔シャント術の手術件数は増加傾向にある7).腰椎腹腔シャント術は侵襲性が低く,現在では正常圧水頭症に対する術式の多くを占めている.本邦では,65歳以上の高齢者における特発性正常圧水頭症の有病率が1.4〜2.9%という報告がある5).急速に人口の高齢化が進む中で,潜在的患者数は相当例あると考えられる.2004年に特発性正常圧水頭症診療ガイドラインが作成された後,診断率の上昇もあり,今後も手術件数の増加が予想される.
 本術式では通常は問題となる術中合併症を生じることは少ないが,ときとして出血や腸管損傷などの危険性がある.
 脳神経外科医は腹壁解剖に精通していない場合が多く,腹部操作は科内での教育にとどまるのが現状である.今回われわれは,手術当日に腹壁出血で緊急的に再開創処置を要した症例を経験した.腹壁解剖の理解,腹部操作の重要性を再認識した教訓的症例であるため,若干の文献的考察も含めて報告する.

中大脳動脈狭窄症に伴う異常血管に生じた破裂末梢性脳動脈瘤の1例—もやもや病との類似性について

著者: 宮﨑始 ,   河野兼久 ,   田中英夫 ,   福本真也 ,   市川晴久 ,   尾上信二 ,   麓憲行 ,   尾崎沙耶 ,   前田智治

ページ範囲:P.311 - P.318

Ⅰ.はじめに
 片側の中大脳動脈閉塞性病変の周囲にもやもや様異常血管を認める症例は散見されるが2),その治療については形態学的な類似性からもやもや病の治療に準じて行っているのが現状である.今回われわれは,脳内出血で発症し中大脳動脈狭窄症を伴う異常血管に破裂脳動脈瘤を合併した症例を経験した.亜急性期に左浅側頭動脈(superficial temporal artery:STA)-中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)吻合術および脳動脈瘤処置を行ったので,その病理所見と併せて報告する.

突然の頚部痛と一過性左上下肢麻痺にて発症した頚髄硬膜外血腫の1例

著者: 駒井崇紀 ,   中嶋千也 ,   富永貴志 ,   野垣秀和

ページ範囲:P.319 - P.322

Ⅰ.はじめに
 頚髄硬膜外血腫は,頚部の急激な疼痛により発症することが多く,急速に運動麻痺や感覚障害を伴う比較的稀な疾患として報告されている.治療法の選択や手術時期などについては未だ議論の多いところである.今回われわれは明らかな誘因なく片麻痺を発症し,その後急速に自然寛解した頚髄硬膜外血腫の1例を経験したので報告する.

仮性動脈瘤を付帯する破裂前交通動脈瘤にコイル塞栓術を行った3例

著者: 伊藤英道 ,   佐瀬泰玄 ,   内田将司 ,   和久井大輔 ,   小野寺英孝 ,   森嶋啓之 ,   大塩恒太郎 ,   田中雄一郎

ページ範囲:P.323 - P.328

Ⅰ.はじめに
 通常,仮性脳動脈瘤(以下,仮性瘤)は外傷や感染,解離,カテーテル操作により生じるが,稀に動脈瘤破裂により形成されることもある4,8,9).その特徴的な血管撮影所見は“ghost aneurysm”や“snowman's head”と表現されている4,8).治療法は確立されておらず,血腫を除去して破裂点を視認することが可能なクリッピングが有効と報告されている4,8).一方,コイリングは,急性期仮性瘤の壁は線維化が乏しく脆弱であるために術中出血の危険性が高いと指摘されている9).今回われわれは仮性瘤を付帯する破裂前交通動脈瘤の3例を経験した.異なる時期と手法でコイリングを行い,安全に行うために必要な条件を検討したため,文献的考察を加えて報告する.

臨床留学のすすめ

トロントへの臨床留学の経験から学んだこと—的確なdecision makingができるspine surgeonを目指して

著者: 栃木悟

ページ範囲:P.331 - P.334

1.はじめに
 留学は国内・海外,基礎研究・臨床研修を問わず,たとえどのような形であれ,数多くの未知の経験を積むことができる非常に有意義なものです.私のトロントでの留学生活は,習慣・宗教的背景の異なる世界各国・地域から集まった人々とのコミュニケーションを通じて,脳神経外科医としての研鑽を含め,多くのことを学んだ貴重な人生経験でした(写真1).
 臨床留学の主目的は,手術を含めた臨床技術の習得です.しかし,同時に見聞を広めて己を知ることも重要と考えます.これまでと異なる技術を学ぶことのみならず,伝え聞いていた海外で行われている医療の実情を知り,さらに海外から母国を眺めることにより自身を振り返ることができました.ただ技術を学びたい,研究をしたいというのであれば,国内にも十分に希望を満たしてくれる施設があると思いますが,海外留学は言語,習慣,価値観を異にする地で長期間にわたり生活するという,国内留学では体験できない大きなメリットがあると考えます.実際に海外生活を経験するまで,こうしたことはまったく想像できないものでした.「臨床留学するのは英語が得意でないから…」という理由のみで躊躇されている若手の先生方にとって,少しでも参考になればと思い筆をとりました.

連載 脳腫瘍Update

(6)Embryonal tumors(胎児性腫瘍)

著者: 岡秀宏

ページ範囲:P.335 - P.345

Ⅰ.はじめに
 胎児性腫瘍は幼弱な中枢神経系組織を模倣し,未熟な構造からなる腫瘍の総称で,主に小児に発生する悪性腫瘍群である.この腫瘍群は成人発生の腫瘍に比して発生数が少ない上,多種多様な遺伝子変化を示し,その分類や治療法について未だ統一がなされているとはいいがたい状況にある.2007年に改定されたWHOの脳腫瘍分類では,以前と比べ胎児性腫瘍のグループが簡潔にまとめられ,①髄芽腫,②中枢神経系原始神経外胚葉性腫瘍(CNS PNET),③非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(AT/RT)の3腫瘍に大別された.
 本稿ではこれらの胎児性腫瘍について解説するが,誌面の都合上,画像,病理像を十分掲載できないため,成書を参考にしていただきたい.

--------------------

欧文目次

ページ範囲:P.265 - P.265

「読者からの手紙」募集

ページ範囲:P.281 - P.281

お知らせ

ページ範囲:P.295 - P.295

略語および度量衡単位について

ページ範囲:P.349 - P.349

次号予告

ページ範囲:P.351 - P.351

編集後記

著者: 若林俊彦

ページ範囲:P.352 - P.352

 今年も新年度が始まった.その冒頭の「扉」には,山田和雄先生の「脳神経外科医としての人生設計」が掲載されている.普段はにこやかで温厚と評判の先生からは想像もできないほどの苦悩に満ちた内容である.ご自身の半生を振り返り,脳神経外科医としての神髄を究める一方で,年代とともに求められる役割,表現形は時々刻々と変わっていったこと,そして「脳神経外科医を極めようと努力したが,未だ道半ばの脳神経外科医の言葉」として,今後の人生設計への決意が述べられている.新たな年度の始まりに相応しい「巻頭言」である.若い頃の留学中の上司の言葉が,40年を経た今になって理解できるという.まさに「学習の鬼」である.
 「総説」では,辻篤司先生の「ARUBA study後の脳動静脈奇形の治療」が掲載され,未破裂脳動静脈奇形に対する外科的介入の意義を検証するために実施された本臨床研究の中間報告に基づいて,わかりやすく丁寧に概説されている.適切な適応,計画された治療戦略,優れた治療技術を備えた治療チームであれば,積極的な治療介入も良しとする筆者の意気込みを強く感じる.「研究」は2篇掲載され,石﨑友崇先生の「未破裂脳動脈瘤手術における運動誘発電位モニタリングの有用性と問題点」では,運動誘発電位モニタリングを用いた機能予後に配慮した手術戦略について,豊富な画像や術中写真とともに報告されている.金景成先生の「糖尿病患者にみられたしびれの原因に関する前向き検討」では,日常よく対応する糖尿病症例において絞扼性神経障害を合併しやすいなどの指摘は今後の日常診療に大変役立つ.連載の「脳腫瘍Update」では,シリーズ6回目を迎え,岡秀宏先生の「胎児性腫瘍」が掲載されており,日常診療で鑑別すべき検討項目が画像診断・病理診断も含めてわかりやすく記載されており,極めて重要な情報提供がなされている.また,「症例報告」でも,腰椎腹腔シャント術後の合併症,破裂末梢性脳動脈瘤,頚髄硬膜外血腫,仮性動脈瘤へのIVRなど,新年度を飾るに相応しい極めて情報量の豊富な論文が満載である.また,「臨床留学のすすめ」には,小生も留学経験のあるトロントへの留学内容が掲載されており,20年以上も前になる当時の想い出に浸った.本号も読者の明日からの診療や研究の一助となる力作が満載である.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?