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症例
腰椎腹腔シャント術直後に生じた腹直筋鞘内出血により緊急再開創を要した1例—腹壁解剖理解の重要性
著者: 金一徹1 竹内亮1 有澤正1 石井龍宏2
所属機関: 1福山市民病院脳神経外科 2福山市民病院外科
ページ範囲:P.305 - P.310
文献購入ページに移動正常圧水頭症の概念が普及するにつれて,腰椎腹腔シャント術の手術件数は増加傾向にある7).腰椎腹腔シャント術は侵襲性が低く,現在では正常圧水頭症に対する術式の多くを占めている.本邦では,65歳以上の高齢者における特発性正常圧水頭症の有病率が1.4〜2.9%という報告がある5).急速に人口の高齢化が進む中で,潜在的患者数は相当例あると考えられる.2004年に特発性正常圧水頭症診療ガイドラインが作成された後,診断率の上昇もあり,今後も手術件数の増加が予想される.
本術式では通常は問題となる術中合併症を生じることは少ないが,ときとして出血や腸管損傷などの危険性がある.
脳神経外科医は腹壁解剖に精通していない場合が多く,腹部操作は科内での教育にとどまるのが現状である.今回われわれは,手術当日に腹壁出血で緊急的に再開創処置を要した症例を経験した.腹壁解剖の理解,腹部操作の重要性を再認識した教訓的症例であるため,若干の文献的考察も含めて報告する.
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