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研究
緊急クリッピング術に対応した脳動脈瘤立体モデルの作製
著者: 紺野武彦1 益子敏弘1 小熊啓文1 金子直樹1 大谷啓介12 渡辺英寿1
所属機関: 1自治医科大学医学部脳神経外科 2青森県立中央病院脳神経外科
ページ範囲:P.651 - P.660
文献購入ページに移動脳動脈瘤手術では,術前画像で脳動脈瘤と周囲の血管との解剖学的構造を知ることが必須である.古くから行われている脳血管撮影に加え,今日ではコンピュータ技術の発達により3-dimensional computed tomography angiography(3D-CTA), magnetic resonance angiography(MRA), 3-dimensional rotational angiography(3D-RA)などのコンピュータグラフィックス(CG)が容易に得られるようになり,術前画像として欠かせないものとなっている.さらに,CGの発展としてバーチャルリアリティ(VR)技術を利用した術前シミュレーションや手術トレーニング方法も報告されている7,9).
しかし,CGの3次元投射画像から立体的な血管構造を把握するためには,コンピュータ上で回転や移動,サイズ変更などをマウス操作で行う必要があり,複雑な立体構造を直感的に把握できるとは言いがたい.また,偏光メガネやVR端末ゴーグルを利用した立体視手法も存在するが,真の立体感に乏しい.われわれは立体構造を直感的に把握するためには,視覚だけでなく触覚など複数の知覚を動員し,それらが相互に関与することで理解ができる「真の立体」が有用と考えている6).
画像データから迅速に立体モデルを作製する技術はrapid prototyping(RP)と呼ばれ,医療分野においてもさまざまな目的で使用されている4).RPにはいくつかの方法があるが,最近ではABSなどの樹脂を用いた熱溶解積層方式の3Dプリンターの低価格化が進み,パーソナルユースでも注目されている2).
RP技術を脳動脈瘤手術シミュレーションに用いた報告はいくつかみられるが1,3,10,11),作製を外部業者に委託するため数日から数週間の時間を要することと,費用も高額であることから,時間に余裕のある待機手術には対応できても緊急性の高い破裂脳動脈瘤手術には対応困難であった.そこで本研究では,低価格で導入しやすい小型3Dプリンターを使用して自施設内で立体モデルを作製し,さらには作製時間を短縮させる工夫も加えて,より早くモデルを得ることができるシステムを構築した.このシステムで脳動脈瘤立体モデルを作製し,破裂脳動脈瘤緊急手術への臨床応用を試みるとともに有用性を検討した.
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