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脳神経外科をとりまく医療・社会環境
医療における評価指標—Quality Indicator(QI)を用いたがんの診療の質の測定
著者: 神谷諭1 東尚弘1
所属機関: 1国立がん研究センターがん対策情報センターがん臨床情報部
ページ範囲:P.59 - P.65
文献購入ページに移動「診療の質」という言葉は非常に多くの場で使われるが,その意味が明確に定義されることは少ない.米国医学研究所(Institute of Medicine)は,「診療の質とは,個人および集団に対する診療行為が望まれた健康状態をもたらす確率をあげ,かつ,最新の専門知識と合致する度合いをいう」と定義している.つまり「診療の質の評価」とは,的確なタイミングで適切な診療行為が行われる医療であるかを評価することを意味する.診療の質に関する極端な例として医療過誤なども挙げられるが,診療の質には,最新のエビデンスに基づく治療・過不足のない治療や検査など,いろいろな側面がある.また,診断や治療といった診療内容の専門技術的な質だけではなく,患者の満足度に代表される対人関係的な質や,患者の主観を中心に捉えた質も考えられる.
1990年代以降,evidence based medicine(EBM)の考え方は医療現場に浸透し,さまざまな領域でエビデンスに基づいたガイドラインが作成され,推奨する診療行為が提示されてきた.しかし,昨今,最新の臨床知識が現場で生かされていない,普及していない(evidence-practice gap)ということが,診療の質に関する世界的な問題となっている.われわれはこのevidence-practice gapを問題意識の根底として,診療の質指標(Quality Indicator:QI)と呼ばれる指標を開発し,わが国の診療の質の評価を試みてきた.本稿では,代表的な質指標の特徴について概説し,われわれががん診療を対象に行っているQIの測定を用いた診療の質評価の試みについて解説する.
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