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読者からの手紙
乳幼児急性硬膜下血腫(中村Ⅰ型)の証明を!
著者: 藤原一枝1
所属機関: 1東京都立墨東病院脳神経外科
ページ範囲:P.1122 - P.1124
文献購入ページに移動 東京大学脳神経外科に1949年から1963年までに入院した,15歳未満の頭部外傷患者362例を検討した中村紀夫先生(東京慈恵会医科大学脳神経外科名誉教授)は,1965年に「小児の頭部外傷と頭蓋内血腫の特徴」について『脳と神経』誌に報告した7,8).症例を検証する中で,受傷時の外力エネルギーが小さい,程度の軽い衝撃でありながら,bridging veinが破綻し,重篤な急性硬膜下血腫を生じさせている小児特有の病態があること,網膜出血は合併する重要な所見であることなどを指摘している.外傷の程度は,よちよち歩きでの転倒やベッドからの転落などの例が挙げられ,「日常生活にちょいちょい起こるような偶発事故」,「打撲部位は後頭部が多い」とある.この病態は,のちに小児の急性頭蓋内血腫の第Ⅰ型として報告され9),「中村(の)Ⅰ型」として知られるようになった.
軽微な頭部打撲による乳幼児の急性硬膜下血腫は,CTが普及し始めた1980年代以降,発見が早ければ救命率も予後も大きく改善した.私も35年以上フォローしている3例を経験している.
軽微な頭部打撲による乳幼児の急性硬膜下血腫は,CTが普及し始めた1980年代以降,発見が早ければ救命率も予後も大きく改善した.私も35年以上フォローしている3例を経験している.
参考文献
1) Aoki N, Masuzawa H:Infantile acute subdural hematoma. Clinical analysis of 26 cases. J Neurosurg 61:273-280, 1984
2) 青木信彦:乳幼児急性硬膜下血腫は虐待によるのか 軽微な頭部外傷によるのか.小児の脳神経36:326-330, 2011
3) 青木信彦:虐待による頭部外傷と診断された乳幼児型急性硬膜下血腫(中村Ⅰ型)の1例.小児科診療76:1985-1988, 2013
4) Lee HC, Chong S, Lee JY, Cheon JE, Phi JH, Kim SK, Kim IO, Wang KC:Benign extracerebral fluid collection complicated by subdural hematoma and fluid collection:clinical characteristics and management. Childs Nerv Syst. 2017 Sep 9. doi:10.1007/s00381-017-3583-y. [Epub ahead of print]
5) 宮川 正,菊地祐子,宮崎 隆,山田不二子,田中 哲:Abusive Head Traumaは転落による頭部外傷とどこが違うのか.小児の脳神経42:285-292, 2017
6) 中村 肇:AHTとは—正しい理解のために.中村 肇(編著):どう診る?どう対応する?乳幼児の頭部外傷と虐待—救急医療チームがおさえておきたい診断・治療・予防のポイント.メディカ出版,大阪,2010, pp4-11
7) 中村紀夫,小林 茂,平川公義,山田 久,神保 実:小児の頭部外傷と頭蓋内血腫の特徴—第1報 頭部外傷全般.No To Shinkei 17:667-676, 1965
8) 中村紀夫,小林 茂,平川公義,山田 久,神保 実:小児の頭部外傷と頭蓋内血腫の特徴—第Ⅱ報 急性・亜急性頭蓋内血腫.No To Shinkei 17:785-794, 1965
9) 中村紀夫:小児頭部外傷の剖検所見と臨床.脳と発達2:23-30, 1970
10) 西本 博,栗原 淳:家庭内での軽微な外傷による乳児急性硬膜下血腫の再評価.小児の脳神経31:215-223, 2006
11) 西本 博:Abusive Head Traumaにおいて“lucid interval”は認められるのか? —司法的判断のための文献的考察から—.第39回日本脳神経外傷学会(2016年2月26日,仙台)
12) Scheller J:Infantile retinal haemorrhages in the absence of brain and bodily injury. Acta Paediatr 106:1902-1904, 2017
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