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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科46巻1号

2018年01月発行

文献概要

人工知能と脳神経外科

著者: 岩立康男1

所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院脳神経外科

ページ範囲:P.3 - P.4

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 私たちは大変な時代に生きているようだ.人工知能(artificial intelligence:AI)によって車の完全自動運転が数年のうちに実現しそうだ,というのである.つい数年前までは,ここまでの進歩は想像もできなかった.このようにAIが急速な進歩を遂げたきっかけは,以前に行われていたような記号処理による論理的思考を目指したアプローチから離れ,人間の脳神経系を模倣した「ニューラルネットワーク」というプログラムが考案され,さらにそれを何層にもつなげて「ディープラーニング」(深層学習)という方法が実現したことが大きかったようである.これによって,機械が人に教わることなく外部世界を認識し,それぞれの特徴をとらえてどんどん賢くなっていく術を習得した.将来的には「昔は人間が車を運転していたらしい,信じられない」という時代が来てしまうであろう.
 このような時代背景の中で,AIがさらに深化し,医学的に応用されるようになった場合に,脳神経外科診療がどのように変化するか考えてみよう.まず,正の側面としては,画像診断にAIが導入されれば標準化された正確で均一な診断が可能になりそうだ.これは手術にも応用され,術前画像をディープラーニングで学んだAIが,術野のモニター画面を常に解析して,目的構造物へより安全かつ正確に誘導してくれるようになる.さらに完全なロボットサージェリーも可能になるであろうか? また,もう1つの可能性はデータマイニングの深化であり,種々の情報を統合した大きなデータベースを作成することによって,これまで長期間にわたる大規模なrandomized controlled trial(RCT)でしか得られなかったエビデンスを,より層別化した形で簡便に得ることが可能になると期待される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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