文献詳細
文献概要
--------------------
編集後記
著者: 𠮷田一成
所属機関:
ページ範囲:P.458 - P.458
文献購入ページに移動 自分の将来を見通せる年になったせいか,さまざまなニュースに自分の無力感を覚える今日この頃である.世界を見渡せば,北朝鮮の核・ミサイル問題や南沙諸島に人工島を作って領地を広げている中国,情報員の毒殺未遂疑惑で国際社会から非難されているロシアの超長期政権化などが話題となっている.国内では,学園の新設に絡んだ総理夫人の言動に対して行政の忖度があったかどうかで国会が揺れている.国会では,他に審議すべき重要案件が山積しているのではないかと思うのは私だけだろうか.最近では,いくつかの大学病院にも労働基準監督署の監査が入り,是正勧告を受けるなど,増えつつある女性医師も含め,レジデントと呼ばれ長時間労働が当たり前であった若い医師の労働環境の問題も,時々新聞紙面をにぎわせている.超高齢社会となった今,さらに2,30年後には後期高齢者が人口の2割を超えると言われていることなども,われわれ医療関係者にとって身近で深刻な問題である.「不老長寿」は長く人類の夢であった.おそらく今でもそうである.健康寿命は延びたものの「不老」はまだ満足の域に達していないかもしれない.しかし,「長寿」に関しては多くの人たちが現状で十分だと思っているのではないだろうか.今年は桜の開花が早く,本稿を執筆している3月末は既に葉桜となっている.ソメイヨシノの寿命は諸説あるようであるが,60〜130年と,ほぼ現在の人間の寿命と同じくらいらしい.枯れる直前まで花を咲かすことができれば,それでいいのではないだろうかと私は思う.われわれ医療従事者は,疾患を治すため,予防するために日々努力している.今月号も,扉から連載に至るまで,著者らの経験,日々の努力,新しい知見が満載である.最近,脳裏をかすめるものがある.医療経済である.疾患を治すため,治せないまでも生存期間を延長させるために,われわれは日々研鑽を積み,努力している.高度な医療を提供するためには,ときに高額な医療費がかかる.超高齢社会を迎え,医療経済は大きな社会問題となりつつある.われわれ医師の使命は,健康寿命を延ばすことにあるのは間違いなく,これは未来永劫変わることはない.一方で,これからは経済効率のよい医療を提供していくことが,われわれ医師の働き方も含めて,大切なのではないかと思う.
掲載誌情報