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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科46巻6号

2018年06月発行

文献概要

脳血管造影と脳血管内治療

著者: 松丸祐司1

所属機関: 1筑波大学医学医療系脳神経外科脳卒中予防・治療学講座

ページ範囲:P.461 - P.462

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 今年の日本脳卒中学会の社員総会で,2019年には脳卒中センターの認定が行われることが報告された.これから1年をかけて一次脳卒中センターや包括的脳卒中センターの要件が検討される.包括的脳卒中センターは,脳卒中ユニットを有し,1年365日あらゆる脳卒中患者を受け入れ,最適な内科治療,外科治療,血管内治療を滞りなく提供する施設である.また診療だけでなく,啓発活動や症例登録なども行い,地域の脳卒中の予防と治療の中核となる.
 脳梗塞の中で最も重篤なものは,塞栓症による急性脳主幹動脈閉塞であるが,血栓回収療法の効果は劇的である.患者が再開通後みるみる回復していくのをみると,緊急の呼び出しに対する葛藤も忘れ,ただちにすべての急性脳主幹動脈閉塞患者にこの治療を提供したいと強く思う.翌日では遅いのだ.脳血管内再開通治療は20年も前から行われていたが,当時は適応が曖昧で時間がかかり再開通率が低く,出血性合併症が多かった.おそらく転帰は自然歴より悪かったであろう.私には内頚動脈終末部の閉塞で搬入され,歩いて退院した人の記憶はない.いまや来院後90分程度でほとんどの症例で再開通が得られるようになった.脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017]では,発症から6時間以内の急性脳主幹動脈閉塞に対し血栓回収療法が推奨されている.さらにいわゆるミスマッチが存在すれば24時間まで効果があることが証明され,米国のガイドラインは改訂された.これほど短期間に治療成績が向上した脳疾患はなく,またこれほどニーズの高い治療もないのではないだろうか.急性脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法は標準治療となり,適応患者に対して自施設でそれを行うか,ただちに治療可能な施設に転送できる体制を構築しなければならない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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